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ニュルブルクリンク24時間レースに参戦するSUBARU/STIチームに関する舞台裏をお伝えします。
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2015.04.09

信頼性の高いエンジンに託した新たな挑戦

新設計となった「SUBARU WRX STI NBRチャレンジ2015」は、「再びニュルで勝つ」ためのSTIの挑戦が多数盛り込まれています。STIがWRC挑戦時代から25年以上も育ててきたEJ20型2.0リットル・ボクサーターボエンジンも、例外ではありません。今年のマシンのエンジン周辺設計を担当したSTIパワーユニット技術部の森田順一に、新たな挑戦の詳細を聞きました。
― エンジン房内を見ると、だいぶ変わったな、という印象を受けますね。
森田:その通りです。2014年モデルまでは、これまで培ってきた技術のうち、信頼性確保に重きを置いていました。24時間走りぬくためには、エンジンにトラブルはあってはならぬ、ということです。エアリストリクターで吸入空気が制限される以上、多少のことでは出力特性が大きく変わることはないです。しかし、一方で様々な使われ方で鍛え抜かれたエンジンなので、内部的には余力というか余裕があったのも確かなので、「勝つためにやりきったと言い切れるか」と問われれば、「いやまだ挑戦シロ は残っています」と即答できます。ですから、今年は大胆に今まで貯めていた競争力アップメニューをフルに投入しました。
― 最も大きな変更はどこでしょうか。
森田:前述のように、車両規則によるエアリストリクター制限があるので、出力やトルク特性は大きく変わりません。しかし、圧力損失や気流抵抗を削っていくことでロスが減り、スロットルレスポンスが向上することは明らかです。この2点に絞って様々なチューニングを施しています。ひとことで言えば、吸排気のロスを低減すること、ということになります。具体的には、車体の前方から空気を取り入れるエアクリーナーボックスを起点とし、エアリストリクターを経由してターボチャージャーに導風する経路をストレートに配置しました。これまでのレイアウトでは、フレッシュエアは曲がりくねったパイプの内壁にぶつかりながらタービンへと向かっていましたが、今年のレイアウトでは確実にスムーズな吸気が可能となります。また、エキゾーストパイプもレイアウトを変更して等長の4-2-1スタイルとしました。これも排気をスムーズに流して通気抵抗を減らそうという試みです。なるべく多くの空気を素直に燃焼室に導き、滑らかに排出してやろうということです。最高出力や最大トルクには変更がないので、スペック上は変化がないように見えますが、ドライバーはエンジンレスポンスが良くなったことを実感できるはずですし、いざという時の加速やオーバーテイクに効果があると確信しています。また、インタークーラーを前後方向に斜め配置としたのも、効率追求の結果です。
― 新しい挑戦はエンジニアにとっては楽しいお仕事でしょうね。
森田:私たち設計陣が蓄積してきた知見や経験が活かせるわけですから、本当にやり甲斐があります。しかし、同時にリスクも背負うことになるので、責任も重いと言えます。レイアウト変更といっても実は簡単ではなく、熱源のターボチャージーの置き場所を変えることから、遮熱や放熱の対策をしなければなりません。今年はより効果的な空力性能の実現のため、車体設計や実験部隊とも連携しエンジンフードの形状を変更しました。このことによるエンジン房内へのネガな影響は確認されておりませんが、まだニュルのコースを走らせているわけではないので、4月12日のクォリファイレースの6時間走行が終了するまでは、この緊張感から解かれることはないでしょう。
― パワートレイン全体では、新採用のパドルシフトも効果は大きそうですね。
森田:シーケンシャルギアボックスは昨年から使っていますが、これまではスティックレバー式だったので、右ハンドルに慣れていないヨーロッパのドライバーは何度か戸惑って、シフト動作を誤ったりしていました。今年は左ハンドルに改め、パドルシフト化したことで、それらのエラーは防ぐことができると思います。スティックレバーとパドルでは一回のシフト作業のタイム差はコンマ数秒以内だろうと思いますが、ニュルはコーナーが170以上もあるため、その都度シフトアップとダウンを繰り返し、さらに一昼夜で130周以上も周回するのでシフトでロスする時間は相当の差ということになります。また、昨年マッチしていなかった中速域のギヤも適正化したので、それも含めると私たちが関与した領域だけでもかなりのスピードアップが望めます。責任の重さと緊張感は例年以上に高いのですが、パフォーマンスアップに対する期待度も大きいです。しかも、ブロックやクランクシャフト、ヘッド周りなどエンジンの中核となる部分は、多くのSUBARUオーナーの皆様の愛車とほぼ共通です。これまでニュル24時間にあまり関心のなかった方も含め、オーナーの皆さんには今年のニュル24時間へ注目していただき、挑戦するスピリッツを共有していただけたら幸いです。また、これらの挑戦は、今後のSTI特別仕様車のヒントにもなります。そちらも楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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