SUBARU
STI

NURBURGRING 24H RACE

REPORT

2015.03.06

SUBARU WRX STI NBRチャレンジ2015が富士でシェイクダウン

3月4日(水)、スバルテクニカインターナショナル株式会社(STI)は、富士スピードウェイにて本年5月のニュルブルクリンク24時間レース(ドイツ)に出場する「SUBARU WRX STI NBRチャレンジ2015」のシェイクダウンテストを行いました。

昨年夏から開発をスタートした同マシンは、すでに栃木県のSUBARUテストコースにて走行実験を繰り返してきましたが、この日は報道陣やパートナー企業などの前で初めてサーキットでの走りを披露しました。同マシンのステアリングを握ったのは、今年5回目のニュルブルクリンク挑戦となる佐々木孝太で、1時間の走行時間を終えた佐々木は、「昨年のクルマと比べると、前後方向のシャシーの剛性感がよりしっかりし、前輪と後輪の連動性が高まったと感じました。また、ノーズの回頭性もさらにクイックとなり、ニュルではAWD車ならではの走りがしやすいだろうと思いました。初めて導入されたパドルシフトはまだ変速ショックが強く調整の必要がありますが、これもタイム短縮には効果があるでしょう。また、空力に関しては、フロントのダウンフォースがよく効いていますね。早くニュルで走らせてみたいです」と目を輝かせました。「今年は日本人ドライバーが僕ひとりとなり、日本のSUBARUファンの期待を背負っているので、緊張しますがやりがいも大きいです。この機会を与えられたことに感謝しています」と続けました。

参戦計画説明の場でSTI社長の平川良夫は、「昨年悔しい思いをしましたので、今年は是非SP3T優勝を取り戻したいです。ですから、昨年のレースから戻った7月にプロジェクトをリスタートさせ、大胆な発想で勝てるマシンを作るように開発陣にはっぱをかけてきました。エンジン房内をご覧になった方は、昨年のクルマとは大きく異なっていることに気がつかれることでしょう。この一事をとってみても、期待が広がるのではないでしょうか」と語り、チーム監督の小澤正弘は、「これまでの我々の武器は信頼性と耐久性でしたが、2015年モデルはパフォーマンス面でもライバル達に見劣りしない性能をもたせるべく取り組んできました。ライバル達は手強く、さらに進化しているはずです。チーム一丸となってぶつかっていくつもりです」と抱負を語りました。

車両の開発を指揮した辰己英治STI総監督は、「2012年にSP3Tクラス優勝してから、“何が何でも勝つんだ”という執念、迫力が欠けてきていました。今年は、昨年の結果を徹底的に分析し、クルマの各部に見直しをかけましています。エンジン補機類のレイアウト変更やパドルシフトの採用もその一環ですが、大きい変化はシャシーの補剛と空力性能の改善です。左ハンドル化も右回りコースであるニュルでのドライバーの視界を確保するだけでなく、ポストで振られるフラッグの視認性やピットイン時の作業の効率化にも貢献しています。私たちは、SUBARUの量産車技術とSTIがコンプリートカー開発で培ったチューニング技術を結集し、総合力でこのレース車を開発してきました。その意味でも今年はどうしても勝利を持ち帰りたいと思います」と話しています。

NBRチャレンジマシンは、このあと細かなチューニングが施され、テストコースでの確認を経て3月中旬にはドイツに向けて輸送されます。4月第二週のクォリファイレースと同月末のVLNレースに出場してニュルでのセッティングを煮詰め、5月第3週の24時間レースウィークを迎える予定となっています。

2015.02.26

STIがSUBARU WRX STI NBR Challenge 2015車の風洞実験を実施

2月21日に、STIは群馬県太田市の富士重工業本工場敷地内にある風洞実験施設にて、本年のニュルブルクリンク24時間レースに出場するSUBARU WRX STI NBR Challenge 2015車のテストを実施しました。

この施設は、ムービングベルト方式と呼ばれる走行状態の車両各部の空力性能データを採取することができる最新鋭の風洞設備を備えております。STIもこの設備をレースカーの開発に活用しており、これまでのNBR出場車やSUPER GT車もここでの空力性能解析試験を受け、最終的な空力デバイスの形状などが決められてきました。

東京オートサロンで初めてお披露目されたNBR2015車は、その後ここで基礎データの採取が行われ、その結果に対するモディファイが盛り込まれています。このテストを経て最終的な仕様が決定され、今後のシェイクダウンテストを経てマシンはドイツに輸送される計画となっています。

昨年の雪辱を果たすべく、本年仕様のNBR Challengeマシンは、曲がりくねったニュルブルクリンクの北コース「ノルドシュライフェ」で必要なダウンフォースを得ながら、コースの後半に待ち受ける長いストレートからグランプリコースの第一コーナーに至る高速セクションでは、なるべく空気抵抗を受けない空力セットアップが必要という、ある意味矛盾する目的を両立させるテーマを掲げています。そのためには、リヤウィングのマウント位置をレギュレーションで許される最後端に移動し、なるべく多くのダウンフォース(CLr値がマイナスになれば下方に押し付ける力=ダウンフォースとなります)を得たい。それにあわせてフロントアンダースポイラーとカナード(フロントフェンダー最先端の空力的付加物)などで発生するフロントのリフト量(CLf)を調整できるようにする。車体の側面を流れる空気の抵抗を低減するように、フロント、リヤのフェンダー形状を工夫する。エンジン房内を通る空気を効果的に排出することで、空気抵抗を低減したい。これはエンジン房内の冷却にも貢献しないとならない、など課題は多岐にわたります。

これらの課題は事前にCFD(流体力学計算)解析ツールを使って様々な条件とデザインされた付加物の形状がインプットされ、実車風洞を受ける前に産業用コンピューターで計算して理想に近い形状を導きだします。このツールは各部分の空力性能だけでなく、クルマ全体の空力バランスも解析してくれます。これらを駆使して設計された空力デバイスに形を与え、それを実車に架装したのちに実施するのがこの風洞テストということになります。しかし、ここで計測される性能データは万能というわけではなく、やはり実走してみないと最終的で微細なセティングは決められません。この日のテストも朝早くから様々なデバイスの装着組み合わせの空力性能を計測していました。空気という見えない要素を相手に理想の形を決めていくのは、非常に難しく繊細な作業です。そして、CFD解析ツールを駆使し、風洞実験でそれを検証して実車に織り込んでいくのはあくまでも「人間」です。扱うエンジニアの経験値の豊富さと「センス」が必要となります。

このような試験による検討の結果、今年のNBR車のボディ形状は、昨年のものから変化しています。これによって、マシンがどれだけ速くなり、そして燃費に貢献するか、今年のレースでの結果が待たれます。

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