NEWS

NBR
2021.09.30

WRX STI NBR 2022は、集中テストで熟成進める

SUBARU NBRチャレンジ2022

ツインリンクもてぎで行ったSUBARU WRX STI 2022 NBR仕様車の初テストから一週間、スバルテクニカインターナショナル(STI)は場所を富士スピードウェイに移して、集中した育成開発テストを実施しました。
9月27日から3日間連続で実施した走行テストでは、主に車両セッティングのベースとなるホイールとタイヤの基本組み合わせを決めることでした。ホイールは、サイズ表記は同一ながらリム端のリブの高さでリム全体の剛性感の異なるものを用意。外観上はよくみても差がわからないほどです。タイヤも2種類のスリックタイヤを試しています。こちらも表記サイズは一緒なので見分けはつきません。二日目のテストで、さまざまな組み合わせをトライし、基本となるセットの目星はつけることができました。
チームでは、ドライバーのコメントやラップタイム、走行後のタイヤ表面測温などのほかに、最新のセンシング技術と伝送システムを活用したテレメトリー(遠隔データ管理システム)を使い、ベストなセッティングを探っていきます。走行中の四本のタイヤの表面温度とタイヤ内圧をリアルタイムに測定し、無線公衆電話回線を使ってエンジンの稼働データなどと合わせてピットで待つエンジニアに送り、走行中に異常の兆候がないかをモニターしています。また、車載のGPSとコースの地図データを組み合わせ、車両が現在どこを走っているかもモニターすることができます。富士スピードウェイは4.7km弱の距離であり、ラップタイムは1分45秒から50秒ほどですが、全長25kmにも及ぶニュルブルクリンクでは10分程度マシンは戻って来ません。その間には高低差もあり、またグランプリサーキットと森の中を走るノルドシュライフェの複合コースとなるため、車両の異常はなるべく早く発見したい。そのためには、このテレメトリーシステムは有効と考えられます。今回から導入した電動パワーステアリングもニュルを想定しています。ツインリンクもてぎや富士スピードウェイなどの日本のレーシングコースは路面の状態が安定していますが、ニュルでは路面のミューやアンジュレーション(凸凹)が変化し、またカルーセルのような特殊な路面も存在します。そんなニュルで新しい電動パワステは威力を発揮しそうです。ドライバーの井口は、「さまざまなカテゴリーで実績ある電動パワーステアリングシステムなので、信頼感があります。ニュルではさまざまな路面に対応しなければならないので、レスポンスのよい電動パワステは大歓迎です。縁石だけでなく、アンジュレーションでのキックバックも少ないだろうと思います」と語り、山内も「パワステによって安心感が増すと思います。しかもステアリングの重さを手元スイッチで切り替えられるので、腕力があり重くしっかりした反応を好むカルロや軽快さを求めるティムも好みがセレクトできるでしょう」と付け足してくれました。
総監督の辰己英治は、「この時期にテストが組めれば、さまざまなことにトライすることができます。今回がまさにそうで、今日(二日目)は思いがけず、色々な試験ができました。2種類のホイールを試した結果、おおよその方向は決まりました。タイヤの組み合わせももう少し、詰めてベースセットを決めたいと考えています。転回の良さそうな仕様にしていきたいですね。来年のニュルは5月ですが、涼しい年もあればこの時期になぜ、というくらい暑い年もあります。どちらに転んでも対応できるよう試験を重ねておくことが大事です。また、さらなる秘策は用意していないのですが、まだ試してみたい項目は残されているので次回のテスト以降で試験することにします」と語っています。山内は、「ホイールとタイヤの組み合わせは方向性がだいたい見えて来て、それに合わせる車体のセットアップも順調に推移していると思います。クルマのバランスが良いので、僕らも楽しく乗れています。欲を言えば、立ち上がりのアンダーステアをもう少し消しておきたいので、チームと色々アイディアを交換しています」と、好感触の様子です。
沢田拓也チーム監督は、「三日間を通じてテストは順調に終了しました。新しくなった燃料タンクの満タン時、ロータンク時の燃料偏りや燃料途切れなどがないかもチェックしましたし、EPS(電動パワーステアリング)の調整も片付きました。ホイールの選択は決まり、タイヤの組み合わせもあれこれ試してそれぞれの特徴を掴むことができました。車重が重くなり、タイヤのころがり抵抗も増えたので、燃費は心配していましたが、今のところ想定の範囲に収まってくれています。これから寒い時期を迎え、エンジンパワーのロスが減ってくると相対的に燃費は悪くなる傾向なので、それらのデータも今後蓄積して、燃料の使い方を見極めていきたいと思います。ダンパーなどのセッティングも進めていますが、最終日の気温30℃、路温45℃という環境の中でも比較的良い方向に進んでいっていると思います。気温・路温が高い状況での過去データと比較してもタイムはむしろ良いという結果が出ています」と語っています。
Scroll to top