2021.05.23 - 全日本ラリー選手権 第5戦 RALLY丹後2021 leg2
ラリー復帰戦の鎌田卓麻が5位でフィニッシュ
2021年の全日本ラリー選手権第5戦RALLY丹後2021は、5月23日(日)の競技最終日を終え、SUBARU WRX STIの鎌田卓麻/松本優一がケガからの復帰戦で総合5位フィニッシュを達成しました。前日、サスペンションを傷めてしまった新井敏弘/田中直哉は再出走を果たし、次戦以降に向けた車両の改善案を探りました。

ラリー最終日はSS7〜SS12の計6SS、SS走行距離55.92kmという構成です。前日の天気予報では好天が予想されていましたが、この日のオープニングとなったSS7では濃霧が出るなど、変わりやすいコンディションになる部分もあり、ラリーの難しさを感じさせる1日となりました。
この日の午後のセクション、総合5番手の鎌田は、SS10で3番手タイム、SS11とSS12では4番手タイムをマークするなど力走を披露。前を行くライバルを逆転するにはおよばなかったものの、この日のスタート時点で47.8秒あった差を確実に削ることに成功しました。再出走を果たした新井は、路面とタイヤのマッチングに苦労する部分もあり、タイムを思うように伸ばすことは叶わず。それでもセッティングを再確認し、次戦以降に向けて着実にデータを積み重ねています。
この結果、鎌田はラリー復帰戦で5位入賞を達成。不完全燃焼の部分はあれど車両には大きなトラブルもなく、今季ここまで最長のラリーを戦い抜きました。また、SUBARU BRZが参戦するJN3クラスでは、竹内源樹/木村悟士と鈴木尚/山岸典将の2台が優勝争いを展開。竹内が12SS中6SSでクラスベストタイムをマークして、今シーズン初勝利を飾りました。

5位入賞を果たした鎌田は、「ご心配をおかけしましたが、アクシデントから2カ月で復帰することができました。初日はコンディションも悪かったですし、クルマのポテンシャルもドライバーも探り探りの展開でした。ですので、この結果も仕方のない部分かと思っています。最終日はドライ路面で思い切って走り、クルマの良い部分と課題となる部分を洗い出すことができたと思います。ライバルはどんどん速くなっているので、なんとかSUBARUもそれに追いつけるように頑張りたいですね。今回はグラベルラリーで使っているクルマをターマック用に仕様変更したのですが、やはり動きが少し異なります。それも思い切って攻められなかった理由のひとつですね。次戦のモントレーは新たに製作したラリーカーができてくるので、新城ラリーの時と変わらないスピードで走れるはずです。2日間ラリーを走ってみて、身体はむしろどんどん良くなってきた感じがしますので、引き続き頑張ります」と、今後に向けた前向きなコメントを残しています。
新井は「昨年のこのラリーと同じように、路面とタイヤが合わなかったですね。それでもクルマのセッティングは2020年シーズンよりも良くなっているので、あとはタイヤが路面に合ってくればもっとスピードを上げられると思います。ただR5車両が速いですから、もう少し色々なことを考えて改良に取り組まないといけませんね。次戦は地元のモントレーですので、好結果を残すことができるように頑張りたいと思います」と、次戦への意気込みを語りました。

・担当車両:itzz DL SYMS WRX STI
・岸本悠史
・兵庫スバル自動車株式会社 姫路店 メカニック
今回、兵庫スバル自動車株式会社から参加した岸本は、itzz DL SYMS WRX STIのリヤセクションを主に担当。同じ会社の先輩がニュルブルクリンク24時間レースへのメカニック参加を目指していたことからプロジェクトに興味を持ち、自らも応募したとのこと。
「以前はTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZワンメイクレースにもメカニックとして参加しました。去年からラリーにも応募していて、今回チャンスをいただいたというかたちです。ラリー前の金曜日に車検に向けた整備をしたのですが、これまでは自分がクルマの下に潜るという作業をしたことがなかったので、ボルトやナットの締め付けなど力の掛け方をつかむのに少し時間がかかってしまいました。実際に下に潜ってみると各所に補強が入っていたり、外観は市販車と変わらない見ためながら中身は全然違うなという印象でした」と、最初の印象を振り返っている。
作業を担当したのはリヤまわりの増し締めと点検。そのほか、フロントサスペンションの交換作業の際にはサポートに入ったりしたという。
「驚いたのは、サービス作業の時間以外と、いざ作業に入る瞬間の空気の変わり方というか、スイッチの入り方です。全員が集中しているのが伝わってきて、圧倒されました。クルマはノートラブルだったので、大きな修理などをすることはありませんでしたが、何もなく安全であることが一番だと思います」
厳しい時間制限のなか、素早く確実な作業が求められるラリーメカニックという仕事に触れて、大いに刺激を受けたようだ。
「とにかく学ぶことが多い3日間でした。店舗に戻って、今後どういうふうに仕事を進めていこうかと考えてワクワクしています。まだ自分のなかで整理しきれていないこともたくさんあるのですが、作業時の集中力をもっともっと高めて、ミスのない確実な作業につなげていければと思っています。私たちが普段整備しているお客様のクルマの使われ方と、こういうモータースポーツの世界の使われ方は違うと思いますが、『安全にどこかへ行って安全に帰ってくること』は両者に共通する大前提だと思いますので、そういう部分を大切に普段の仕事をしていければと思います」
今後については、「会社の後輩たちにも、ぜひ参加してほしいですね。私自身もこれまでと意識が大きく変わったと思いますし、やりたいことを自分からどんどん言っていかないと変わらないと思うので、しっかりとアピールしていきたいと思います。ニュルブルクリンク24時間レースへの挑戦の意欲も高まりました。倍率が高くて厳しいですが、諦めずに何度でも挑戦していきたいと思っています」と、力強く語ってくれた。
次戦は6月11日〜13日に開催されるターマックラリー「MONTRE 2021」です。今年から群馬県高崎市を拠点として開催する予定で、20km前後の長いSSを使用する点が特徴です。地元ラリーとも言えるSUBARU勢の奮闘にご声援をよろしくお願いいたします。