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SWRT、富士重工そしてSTIとの緊密なコラボレーションによって開発された最新型WRカー「インプレッサWRC2003」は、2002年モデルから大きな進歩を遂げている。それは、単にベースとなるボディシェルが変更されたことによる進化にとどまらず、エンジン、シャシー剛性、エアロダイナミクスなど、戦闘力アップを図るための様々なファクターに見直しを入れている。これによって、ラリーポテンシャルは2ステップ以上向上している。以下、インプレッサWRC2003の進化を解説する。
まず、車体側の進化については、やはりボディシェルの変更による空力性能の向上が挙げられる。ベース車両のフロント前端で受ける抵抗を減少し、ボンネットフード上面を流れる気流をリフト抑制方向に活用するため、フロント部分をスラントさせた。また、これによって、冷却系への導風やエンジンベイからのエアの吸い出しについてもさらに効率的にエアを活用できるようになった。そして、このラリーカーの外観上最大の特徴であるリヤウィングは、大型ダブルウィングの間の空間に垂直の(バーチカル)整流プレートを入れ、直進時の操縦安定性向上などを狙ったものである。ウィング後端のガーニーもよりダウンフォースを得るよう高さを調整。4枚のバーチカルプレートとの相乗効果によって、中低速域においても、テールスライド中の横方向のエアを効果的に捉え、空力特性の安定化を図った。フロントのバンパー形状や、フロントサイドのエアスプリッターは、主に高速ラリーでのリヤのダウンフォースに合わせてデザインしている。フロント下端のチンスポイラーは、昨年のラバー製からフレキシブルなソフトカーボン製に変更。エアを受けている間の形状変化を抑えながら、破損や脱落を防止するよう工夫した。
エアロダイナミクス性能を突き詰めるため、ドアミラーも形状変更した。これまではなるべく小さいものという考えであったが、今回は逆にボディとミラー本体を別離させ、この間にボディサイドに沿って流れるエアを通過させることとした。
近年のWRCは、高速化が一層進んでおり、エアロダイナミクス性能の進化が常に求められている。サーキットレースと同様に、コースにあわせた空力セッティングが重要な要素となっている。
サスペンション性能、操舵性などの運動性能を常に一定に保つために、シャシー側に求められるものとして、高い「曲げ・ねじれ」剛性の追求が挙げられる。そして常に、ロールセンターを下げる努力をするため、車体の高い位置にある重量物の軽量化が課題となっている。昨年は、シーズン途中からWRカーの象徴にもなっていたルーフベンチレーションも廃止し、低重心化に向けている。エンジニアは、このテーマに常に向き合っていなければならない。今年のWRカーでは、ロールケージの形状と組み合わせ、鋼管材などを変更。ロールオーバー時の室内安全性を上げながら、シャシー剛性を上げ、さらに軽量化にも貢献している。また、車体各部に装着している補剛材も、形状や位置などを変更し、剛性向上を負担している。
今回の進化において、大きなポイントはやはりエンジン性能である。昨年からエキゾーストマニホールドの形状を4イン1の等長タイプにしていたが、ドライバーからの中低速のトルク向上や、ピックアップ性能の改良がリクエストされており、今年はマニホールドの長さを最適化し4イン1システムのレベルアップを図った。と同時に、ターボチャージャー本体も新設計のものに変更した。インペラーの形状変更や摺動抵抗を低減し、アンチラグシステムのプログラムも修正。昨年後半から実施していた開発テストでは、ドライバーからも好評を得ることができた。エアリストリクターで最大出力が制限されている以上、タイムを稼げるのは、コーナーからの立ち上がり時のトルクピックアップの早さや、加速性能を上げていくことが非常に重要である。
以上が主な改良点であるが、チームもドライバーも、この新しい「インプレッサWRC2003」の潜在性能に満足し、自信を持っている。他のチームもマシンに様々な改良を施していることは間違いないが、この進化が最適であることはすぐに証明されると私たちは確信している。
また、昨年秋からスタートしている富士重工とSTI、そして実戦部隊であるSWRTとの新しいエンジニアリング組織は、この新型WRカーに今後様々な改良メニューを盛り込んでいくことになる。富士重工からは、素材の専門家、応力解析などの研究グループやサスペンション、パワーユニット、駆動系、空力などの実験グループの主力メンバーがこの新プロジェクトに参画しており、部門を超越して「速くて強いWRカー」を創る体制を敷いている。また、チームもスペアパーツのライフ(耐用距離)や品質管理に新システムを導入。タイヤメーカーのピレリも私たちに独占的に技術を提供すると約束している。

SUBARU陣営一丸となって、今年のWRCに臨む構えである。
文:スバルテクニカインターナショナル(株)
車体技術部  部長    菅 谷 重 雄
菅谷重雄
菅谷重雄
スバルテクニカ
インターナショナル(株)
車体技術部 部長
  1955年千葉生まれ
1979年富士重工業(株)入社

1979年〜1987年
SUBARUのグループA(量産)でのサファリラリーチャレンジがスタートし、車体、サスペンションの開発員として携わる。 基本は評価実験が主で、性能評価、強度耐久評価を行うテストドライバーとして開発を行う。 この間、1983,1984のサファリラリー、1984のモンテカルロリーのエンジニアとしてイベントに参戦。

1988年〜1992年
米国駐在(ロサンゼルス)。技術駐在として、各種米国試験のサポート、スバル・オブ・アメリカのエンジニアとの連携、技術調査を行うと共に、1989年のSUBARU レガシィのFIA世界速度記録挑戦プログラムの一員として、米国サイドの調整・テスト・企画を行う。

1993年〜1996年
帰国後、再びSRTJのサファリチャレンジのマネージャーとして活動を行う。 この間、C.マクレー(VIVIO)のサファリラリー、R.バーンズ(イプレッサ)のGr.N、三好選手のサファリラリー等を担当。

2000年〜
実験部門から、商品企画部門に異動し、モータースポーツの技術支援とモータースポーツと量産の連携を推進する業務につく。

2001年
7月にSTI車体技術部長を兼務で受け持ち、STiバージョン車体開発とWRC技術支援を推進し、現在に至る

>> インプレッサWRC2003
    主要諸元

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