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Cyprus feature
キプロスで暑さを克服する

Letter from SWRT
7 October 2006


キプロス。太陽と温暖な海を求める旅行者から絶えず愛される島国だ。地中海の東端に位置し、カイロから500km、ダマスカスから300kmしか離れていないというロケーションでは、日差しあふれるビーチと1年中20度を下らない気温に事欠くことがない。この島で過ごす休日は、心からの喜びを約束してくれる。しかし、ここを仕事で訪れるとなると、話はやや違ってくる。


「キプロス・ラリーでのWRCのサービスエリア周辺の気温は35度、車内となれば40度に達することもあります」と説明するのは、SUBARUワールドラリーチーム(SWRT)のパフォーマンストレーナー、ジョン・ミルズ。「こうしたコンディションの中で仕事をする場合、準備が不足していたり、起こり得る危険を知らずにいると、様々な問題が起こることもあります」

WRCドライバーにとって一番危険であることの一つが、脱水症状。体内の水分量が、基準値である55-65%を下回ってしまうのだ。水分のほとんどは発汗して、体本来の機能として体を冷却する。汗の量は運動量によって決まるが、通常ドライバーが競技走行をしている間は、1時間に1.5リットルもの汗をかく。

ミルズによれば、水分をわずか2%下回るだけで、体力的なパフォーマンスが10-20%も落ちるというから、深刻だ。「我々は、朝ドライバーがサービスを出発する前に、水を少なくとも1リットル飲ませます。車内には、シートの背後に3リットルのリザーバータンクが取り付けられており、サービスに戻るまではそこから水分を補給します。まだ、ドライバーとコ・ドライバーには、ステージのフィニッシュで主催者から渡される水を飲むように強く指示します」とミルズ。「ドライバーたちは、1日に9リットルもの水分を摂ることも珍しくありません。これは、一般の人に推奨される量の3倍です」

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ドライバーは水だけでなく、電解質が加えられたアイソトニック飲料も飲む。耳慣れない高校の技術の講義のように聞こえるが、この言葉に隠された科学は確かな根拠に基づいている。「アイソトニックは体内に非常に吸収しやすい上に、バランスを崩しません」とミルズは説明する。「アイソトニック飲料には、微量の炭水化物とナトリウムが含まれているので、水よりも効果的なのです。炭水化物が含まれていることで多少はエネルギーも得られるのですが、重要なのは、ナトリウムです。ナトリウムの多くは血漿に取り込まれ、汗を通して失うナトリウムの代わりになります。電解質は、塩分や糖分など体力が必要とする純粋なミネラルです」

脱水症状は、サービスパークをベースとするチームスタッフにとっても注意しなくてはならない点であり、誰もが常に水分補給を気にかけていなければならない。その他チームには、日よけのためのつばの広いキャップ帽や、発汗に備えて通気性のいいエアテックスの衣類、日焼け止めが入ったテクニシャンの”サバイバルキット”が用意されている他、気温が急上昇した時には、サービスパークに携帯シャワーエリアも登場する。幸い、SWRTのサービスエリアは、厚い天蓋で覆われた頑丈なテントで構成されているため、日差しは今のところ最低限に抑えられている。

高機能の衣類と水分補給は助けにはなるものの、個々の体力次第で総合的なパフォーマンスは大きく変わってくる。「ドライバーとコ・ドライバーたちは、極端な気温に向けて特にハードなトレーニングを受けています」とミルズ。「体力を備えたドライバーは、発汗が少なく体からの水分放出も最低限に抑えられるため、暑さの中の対応力もより高い。そのため彼らはラリー中、疲労や眠気に悩まされることなく、より機敏な対応ができます」ドライバー達がこうした能力を備えるために、ミルズはキプロス・ラリーの前には暑い国でトレーニングキャンプを行い、ランニングやサイクリング、テニス、スイミングなど、心拍数をキープする有酸素運動を酷使しての強化トレーニングを行う。

暑さの中でのトレーニングは重要だが、ペター・ソルベルグのコ・ドライバー、フィル・ミルズは、自宅ではさらにハイレベルな形でのトレーニングも行っている。
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「サウナの中でトレーニングをするんだ」とミルズ。「暑さの中で戦わなくてはならないのだから、一番いい練習は、自分の体をその気温に慣れさせることだ。家では、サウナの中でサイクリングマシンに乗り、30分こぎ続ける」ジョン・ミルズはこのミルズのやり方はとてもいい方法だと支持する。 「万全に整えておくことは、不可欠です。体力が効果的にアップしていくことは、生理的にもアドバンテージとなりますが、暑さに対応できるという自信が心理的にも役立ちます」

コックピットの中では気温は40度にも達するため、ドライバーは集中力を維持するために、体力面、心理面、あらゆるアドバンテージを握ることが必要となる。フィル・ミルズは、キプロスではコックピットは暖炉のようにもなると語る。「外気温は特に高いが、車内はもっと悪環境となる。さらに居心地が悪くなると、コックピット内の空気流入も少ない。キプロス・ラリーは、アベレージ速度が65km/hと選手権の中でも最も低いため、クーリングシステムやコックピット内への空気流入はないも同然。これは、集中力やパフォーマンスに大いに影響してくるよ」

これを解決するために、チームは技術的な方法でドライバーの環境を改善する。コックピットには追加のファンとダクトをつけて、気温を相当なレベルまで下げ、エンジンやトランスミッション、ラジエターは、最大限冷却できるセッティングで動かす。クーリングを追加しても、選手権一タフなキプロスのステージは、相変わらず厳しい。

「ステージには大きな石や岩が散らばり、サンディなグラベルでは特に2回目の走行ともなれば深い轍が掘れていく」とフィル・ミルズは語る。「さらに、曲がり角やコーナーも多く、他のグラベル・ラリーに比べてペースノートの量は2倍になる。あまりに情報量が多いため、僕はしゃべりっぱなしだ。本当にハードだよ。このラリー前の火曜日と水曜日の夜は、僕にとって1年の中で最も長い夜だね」

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このロッキーなステージでは(ミルズは、ほぼすべてのコーナーにはイン側に石があると付け加える)、マシンのアンダーにダメージを負う可能性も高いため、特別に強化パーツを装着する。追加保護のために、重めで厚めのサンプガードを装着するのだ。キプロス用のサンプガードは、フィンランドのようなスムースグラベルラリー用に比べ、2倍は厚くできている。できるだけ地面からのクリアランスを得るために、マシンの乗車位置もシーズンで最も高く、スムースイベントに比べて50mmは高く設定される。

これら究極に厳しい環境であっても、フィル・ミルズはこのイベントを毎年楽しみにしている。「ステージは、低速で30分も走り続けることもあるので、ラリーマラソンと言ってもいい。気温は高く、マシンの中はダストだらけ、ステージはタフだし、事前にハードなトレーニングで備えておかなければならない。しかし、私はキプロスが大好きだ。挑戦があったら、受けるしかない」


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