英国・バンブリーにあるSWRTの拠点では、SUBARUインプレッサWRC2004の2リットルエンジンが手作業での組み立てを終えると、マシンに載せる前に、エンジン・ダイナモメーター(通称・ダイナモ)でのテストを行う。細部にわたって清潔に保たれたテクニカル・センターの裏には、2台のSUBARUエンジン・ダイナモメーター室があり、ほぼ休みなく稼働している。詳細について、SWRTのエンジン・エンジニアの一人、ニック・デニッシュに話を聞いた。
「エンジン・ダイナモメーター」とは、つまりはどういったものなのですか?
本質的には、エンジンのパフォーマンスをチェックするテスト装置のことを言います。よく、「制動装置」というでしょう。エンジン・パフォーマンスの測定は、どんなスピードにおいてもエンジンが安定するために必要な荷重を計算する方法で行います。エンジンはボルトでクレードルにしっかりと固定して、ダイナモとつなぎ、逆方向から同じ抵抗を与えてエンジンパワーのバランスを取るのです。
SUBARUインプレッサWRCのエンジンは、いつダイナモに載せるのですか?
エンジンが組み上がり次第、すぐにテストを行います。通常は、SUBARUインプレッサWRC2004が完成する1週間前にはテストを完了し、マシンをコースに持ち出して最終テストを行います。イベントが一つ終わると、エンジンを解体しまた組み立てるか、もしくはテスト・エンジンとして使うことになります。
なぜエンジンをダイナモに載せるのですか? テストでは何が行われているのですか?
基本的には、エンジンが目標値のパフォーマンスを得られているかの確認を行っています。それぞれのエンジンは、いろいろなスピードや荷重で1時間10分のテストを行い、コンポーネントに組み入れます。
それから10秒毎に250馬力まで上げるパワーカーブ・テストを、3000から7500回転の各スピードで行います。
このパワーカーブ・テストは、エンジンパワーの算定と同時に、エンジンのヘルス・チェックの役目も果たします。ブースト圧と温度、ターボ・スピード、エキゾースト圧と温度、水温・油温、油圧、燃料圧、燃調比率、イグニッションや燃料のセッティングなどすべての面においてのモニタリングを行います。テストの間、コンピューターにはグラフでのインフォメーションが映し出され、テストの後にプリントアウトします。これを元に、不具合がないかをチェックします。レブ・リミッターのセットやエンジン・マップ構成も行います。
なぜエンジン単体でのテストを行うのですか?
マシンに発生させるパフォーマンスを図りやすいからです。ダイナモのように気温や湿度、油温などのコンディションを保つことは、外ではなかなかできません。ダイナモを使えば、エンジンを一定のスピードで長時間、想定したコンディションで回すことができるのです。
すると、ダイナモ内のコンディションを変えることができるのですか?
もちろん。大きな空調装置を使って、お好み次第の気温・湿度をセットできますし、灼熱のギリシャや極寒のスウェーデンまで、ラリーが行われる現地の気候に合わせた環境に調整することもできます。しかし通常は、一定した気温でエンジンを回して、違いを比較しています。
テスト中、エンジニアがガラス壁の外側から眺めているのはなぜですか? どうしてエンジンのそばにいないのですか?
安全上の理由です。このガラスは、防弾素材の三層構造になっています。エンジニアがターボを回す時は、16万回転まで上げる時もありますから、エンジンの一部が緩むなど何かが起こった時にでも、全員の安全を100%確保しておくためです。
エンジンをダイナモに載せたまま、エンジンの作業を行うことはできるのですか?
エンジンを止めている時や、アイドリング時ならできます。今話したように、エンジンが動いている時には、ダイナモの中には入ることはできず、必ずガラスの外側にいなくてはなりません。
ダイナモの作業が終わった後は、エンジンはどうなるのですか?
ダイナモから下ろされたエンジンは、ダイナモ後の検査(PDI)へ持っていき、オイル・フィルターを変えて、タイミングベルトやコンプレッションをチェックします。その次に、スパークプラグの穴から特殊なマイクロスコープを入れてシリンダーの内部を見て、すべてがOKかをチェックします。そしてワイヤリングハーネスを装着してすべてがつながっているかをチェックし、組み込みの準備が完了します。
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