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SUBARUインプレッサWRC2004・ギアボックスの世界
Letter from SWRT
30 April 2004
通常のWRCイベントでドライバーが行うギアチェンジの回数は平均3,500回。いかに正確に早くギアを選んで入れるかは、ステージ・タイムを上げるためには欠かせない要素だ。英国・SUBARUワールドラリーチームの本部にいるエンジニアは、常に速く効果的なマシンの製作を目指して励んでいる。特に多く努力を費やす部分は、WRカー内部のトランスミッション・システムの設計や操作性の改善だ。

スタンダードのギアボックスやディファレンシャルを持つロードカーのインプレッサとは異なり、SUBARUインプレッサWRC2004は 6速セミオートマティックのトランスミッション・システムを採用、電子空力制御のアクティブディファレンシャルがフロント、センター、リアに搭載されている。ギアボックスは、フライバイワイヤーの技術が使われているので、ソルベルグやヒルボネンは、ステアリングの裏にあるパドルを使ってシフトチェンジを行う。パドルをひけばシフトアップ、押せばシフトダウンだ。このトランスミッション・システムによって、WRCドライバーは、ロードカーの10倍の速さ、4/100分秒でシフトチェンジを行うことができる。

ロードカーのものと比べ10-15kg軽量の85kgというSUBARUインプレッサWRC2004のギアボックスは、頑強で軽量。そしてWRCイベントの過酷な環境でも対応できる耐久性を備えている。

SWRTの5人の専任メカニックは1年に平均で10個のギアボックスを組み上げ、メンテナンスのために16のスペア在庫を確保している。これらは チームの2台のWRカーの間でローテーションして使われ、各イベント(通常500km走行後)にリビルトされる。トランスミッションのスーパーバイザー、ポール・ロバートによると、「SUBARUインプレッサWRC2004のギアボックスの組み立てには高度な技術力が必要とされ、メカニックが一つを組み立て終わるには約80時間かかるという。各ギアボックスには、350ものコンポーネンツが組み合わされているが、トランスミッション・システム全体で見れば、さらに多くの部品が存在する。パーツや工賃を計算すると、それぞれのユニットは、約7万5000ポンド(約1465万円)というところだ」

イベントでは、チームは1台につき2つのギアボックスを持参し、各ユニットのスペアパーツは約1万ポンド(約200万円)。ラリー中は、ギアボックスに問題が起きても調べる時間がないため、トラブルの初期症状が見られると、技術者はすぐにスペアユニットに交換する。WRCのレギュレーションでは、イベント中のギアボックスの交換回数に制限はないが、 ユニットは車検でシーリングを行うため、スペアユニットを修理してコンポーネントとして使用することは制限される。多くの電気系・油圧式コンポーネンツを使用する理由は、外部からの交換が行いやすいためだ。

ギアボックスの交換は、平均4人の高いスキルを持った技術者が作業を行うため、所要時間はわずか15分。ロバートが、この作業について解説する。「まずアンダーガードを取り外し、ドライブシャフトを外す。エンジンとギアボックスをつなぐ5つのボルトを外したら、油圧カップリングを外す。次にエキゾーストと電気系のコネクターを外す。そしてスタビライザーを外したら、いよいよマウントボルトの番だ。ギアボックスを下ろしたら、すぐにスペアと交換し、それまでの工程を逆に繰り返していくんだ」

イベントが終わるとギアボックスは完全に解体され、テストを行い、その後40時間に渡るリビルトが始まる。ロバートは「 マシンに戻す前に、ギアボックスは2時間のベンチテストを行い、最後の1時間には耐久性をチェックする。それぞれのコンポーネントは再検査が行われ、マイクロスコープでオイルを点検し、シフトコントロール・システムの損傷原因となるような、大きな金属粒子が存在しないかをチェックするんだ」と説明する。


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