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名ラリーと呼ばれるための資質とは
Letter from SWRT
12 May 2006
世界のカフェでコーヒーやビールを片手に、モータースポーツファンは、名ラリーとはなんぞや、について長く語り合ってきた。長く名を知らしめてきた歴史であるとか、特徴的な性格のステージ、観客の数などの要素を全て考え合わせた時、現在の世界ラリー選手権(WRC)16戦のうち、どれが真の名ラリーと言えるのだろうか? 豪快な景観と思い出にあふれる長い歴史、熱烈なファンの数など、4月のラリー・アルゼンチンは、間違いなく全ての資質を兼ね備えているようだ。
WRC唯一の南米大陸ラウンドは、いつも盛りだくさんの内容で展開される。毎年例外なく、何千人ものアルゼンチン人が、ラリー観戦のためにコルドバ地方に繰り出してくる。スペクテイターたちはラリーウィークの間、テントを立ててキャンプをしながら過ごすなど、スポーツイベントというより、もはやお祭りのような感覚だ。
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昨年は4万人の観客がカルロス・パスのレーシング施設に押し寄せ、スーパーSSを観戦。地元警察の推計によれば、ラリーコース際には110万の人出が集まったという。それでも2005年のイベントは、雪と雨、風など悪条件に見舞われており、温暖でより観戦日和に恵まれた2004年には、その数字はさらに上回っていた。
「いつも大勢のスペクテイターが集まり、ラリー全体がまるでパーティのようだ」とはSUBARUワールドラリーチーム(SWRT)のスポーティングディレクター、ルイス・モヤの弁。「みんなラリーコースに集まり、特にエル・コンドールのステージには一晩中陣取って、キャンプをしながらバーベキューを楽しむ。人々はとてもフレンドリーで、1人で出かけても、誰かが食事に誘ってくれる。とてもオープンな人たちで、私もアルゼンチンにはたくさんの友人がいるよ」
ラリーの人気は、この地域にメジャーなスポーツの国際イベントが少ないことにもよる。1988年からアルゼンチンは、アメリカ大陸で行われる唯一のWRCイベントとして君臨してきた。2004年にメキシコがシリーズに昇格してからも、北米、中米、南米各大陸を合わせて2戦の開催だけ。コルドバは人口的にはアルゼンチンで2番目に大きな都市だが、首都のプエノスアイレスからは700km、自動車で少なくとも10時間はかかる遠隔の地なのだ。モヤはさらに「1989年に初めてアルゼンチンに参戦した時は、ラリーのスタートはブエノスアイレスだった。クルーは、ブエノスアイレスからコルドバまでコンセントレーションラン(コンボイ)で走行したものだ。距離にして700km以上、一晩中かけてのドライブだった。最後のタイムコントロールにつくと、近年のラリー基準に従い、長めの休憩時間が設けられた。我々はホテルに行き、2時間睡眠をとって、最初のステージを始めたんだ。とてもタフだったよ」
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このラリーは、1979年、チリとの国境に近い北西部、チュクマン地方で初めて開催された。初開催以来、そのラリールートは長く様々な歴史の中で、数々の変遷を経てきた。チュクマンでの初年後、そこから南部に移り、北パタゴニア・バリロシェのスキーリゾートで開催し、1984年にコルドバに落ち着いた。計26回のラリー・アルゼンチンで使用されたステージは57本。ヴィラ・カルロス・パスのサービスパークは、コルドバから35km、湖畔の美しい村に設定された。
そして今年、再びルートに新たな変更が加えられた。サービスパークはコルドバに戻り、1978年のサッカーワールドカップの際に建設されたサッカースタジアムの向かいに置かれた。木曜日と日曜日の終わりには、クルーはここでスーパーSSを2本走行。収容人数4万5000人を超えるこのスタジアムのスーパーSSの大成功を、モヤは頭に思い描いていた。「おそらく、スタジアムは満員になり、外側にも人々が押し寄せることになると思うよ」モヤの予想どおり、スタジアムは押し寄せたスペクテイターで埋め尽くされた。
コルドバには有名な伝統のモータースポーツがあり、1940年代に行われた街から街へレースを渡り歩く競技では、F1タイトルを5回も獲得したジャン・マニュエル・ファンジョがレース技能を積んだという。この街には、ラリーを開催するための大きなアドバンテージがある。息をのむような景観の中でラリーを行うことができる、パンパスやシエラス・チカス丘陵が近いことだ。高速ステージや、目まぐるしく変わるコンディション、渓谷の中を抜けるラリーコースには、高地のルーズグラベルステージにはナローでツイスティなセクション、高速スプリントや、様々な路面変化を盛り込むこともできる。
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モヤは、チャンピオンシップの中でも最高のSSの一つとして、かの難関ステージ、今年はレグ3に設定されたエル・コンドールを挙げる。
「素晴らしいコースだよ。景観は見事で、世界の中でも最も偉大なステージの一つと評価も高い。(モンテカルロの)チュリニ峠のように、ドライバーにもスペクテイターにとっても、古くから続く名ステージだ。私の心に残っているのは、壮大な数のスペクテイターたち。SSの最初から最後まで、それぞれのコーナーに何百人もの人が大きな岩の上に立っている。彼らにとっては、岩盤が自然のグランドスタンドなんだ。ステージでは、7つか8つの古い鉄橋を渡るのだが、これもとても美しい」
テスト・開発のチーフエンジニア、ピエール・ゲノンも、アルゼンチンのステージの組み合わせは、世界の中でも一番であると同時に、チャンピオンシップの中で最もタフであると考える。
「ステージはとても多彩で、各レグがそれぞれ異なる性格を持っている。今年のレグ1は、山を登ったり山沿いに走るので、かなりスローでツイスティ。この初日にはいろいろな危険が潜んでいて、とにかく慎重に徹しなくてはならない。道の路面は砂で覆われているし、ウォータースプラッシュも多く、このステージのリピート走行も、かなりタフだよ」とラリー開催前にコメントしている。
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ウォータースプラッシュ……ラリー・アルゼンチンのステージには、実に17ものウォータースプラッシュが登場する。さらに加えて、川渡りが10回。いくつかは浅いので高速でも走り抜けることができるが、それ以外はそれこそ川を渡る状態なので、慎重なアプローチが必要。レグ1のSS9は、最初の5kmに3カ所も待ち受けている。
「初日には、比較的まっすぐ入っていけるところが25あるが、その他に深い場所もあるので、ここはトラブルになりやすい」とゲノンは解説。「一番の懸念は、ウォータースプラッシュの底にマシンを打ち付けると、マシンのフロントグリルが取れてしまいやすいということ。もし外れてしまえば、エンジンに砂が入り込みやすくなる。事実、アルゼンチンの最も大きな危険の一つは、ラジエター破損の可能性なのだ。我々はフロントスポイラーに改良したメッシュをつけて、ラジエターに砂が入り込むのを減らすように工夫している。また、轍対策として、車高を上げていくこともある」
ウォータースプラッシュ付近には安全に観戦できるポイントがいくつかあるのだが、何千人ものファンが、マシンから飛び散る水しぶきを浴びるほどの距離に陣取る。
間違いなく名ラリーであることのしるし、壮大な景観、チャレンジングなステージ、そして最後の最後までスペクテイターが満喫できる内容、これがラリー・アルゼンチンの魅力なのだ。