NURBURGRING 24H RACE

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2018.07.13

チーム運営を任された若手STIエンジニアの奮闘

SUBARU WRX STIが2年ぶりのSP3Tクラス優勝を遂げ、歓喜に沸いたニュルブルクリンク24時間レースから約2ヶ月が経過しました。STIでは、コンプリートカー開発など多忙な日常をやりくりしながらも、ようやく平静を取り戻しています。そんな7月中旬、群馬県太田市のSUBARUテストコース内にあるSTI工房を訪ね、今年のNBRチームを取り仕切った二人の若手エンジニア、そしてチーム総監督の辰己英治に話を聞きました。
気温34度。工房の外は、この日も酷暑に見舞われました。エアコンの効いた工房では、STI車両実験部の若手エンジニア宮沢竜太(27)と伊東太壱(25)、そして辰己総監督が待ち構えていてくれました。

MSM 宮沢さんと伊東さんは今年初めて24時間レースのチーム運営を任されましたね。最初に任命された時はどのようなお気持ちでしたか。
宮沢 「昨年までチームを仕切った坂田(元憲)先輩が事情で退職することになり、私にその大役が回って来たのですが、大変重たい責任を背負うことになるので不安もありました。しかし、やりがいは間違いなく大きいので、奮い立ちました。これまでSUBARUが作って来た歴史を振り返り、何があっても負けてはいけないという意気込みでしたね。でもいろんな方に何でも相談させてもらいました。だからこそやり遂げられたんだと思います」
伊東 「私は宮沢さんとふたりでこの仕事を任されたと思っており、宮沢さんに頭と目をやっていただき、私は手足をやろうと心に決めていました。レース中ディーラーメカの皆さんを預かりましたが、私よりもキャリアが長い方も多く、優秀な方々なので、優勝するという気持ちでは負けないようにしました」

辰己  「立場が人を作る、という言葉がありますが、この二人の場合はまさにそれです。責任を持たされて、大きく成長したと思います。もちろんチームを仕切るのはふたりとも初体験なので、ふたりで一人前ができれば良いと思っていましたが、いやいや十分責任を果たしてくれたと思います。伊東は、年は若いですが国家資格の整備士一級をもっています。なので、ディーラーメカさん達からも一目置かれていました。プロのメカニックの間では、それだけ威厳がある資格なんですよ」
MSM 今年のNBR 24時間レースの国内事前テストは非常にスムーズに流れ、相当準備が進んでいるという印象でしたが、ニュル現地で行われたQFレースやテストでは色々と問題が発生しましたね。

宮沢 「事前に様々な予測は立てていましたが、ニュルでしか発生しないことが起きるものだということを実感しました。マフラーの音量の件など、心配すらしていなかったので、そこに甘さがあったと大きく反省しています。たとえマフラーが実績のあったものだとしても、エンジンの仕様が変わっているので、何か起きるかもしれないと考えるべきでした。結果的にそれが24時間レースまで響き、ドライバーたちにコースの特定の場所でスロットルを戻してもらったり、回転を抑えて走ってもらったりしたので、フラストレーションを与えてしまいました」

辰己 「確かにフラストレーションはあったでしょうね。ドライバー達には申し訳ないことをしました。音量が大きすぎると失格にするとオフィシャルから警告されていましたので。ドライバー達に思い切り走ってもらえる体制やクルマを作るのが我々の仕事ですから、エンジンの最終仕様の決定時期を含めて、今後は慎重に進めるべきですね」
MSM パワーステアリングの問題もレースではクリティカルなトラブルとなりました。

宮沢 「昨年起きた火災のこともあり、各種配管レイアウトには対策をほどこして行ったのですが、結果的にはパワステオイルの配管をこれまでの耐油性のホースから量産品ではないアルミパイプに替えたことと、走行時に配管がどれだけ動くかを予測できていなかったことから、(締め付ける)クリップの緩みが発生してロスしてしまいました。これも事前に予測できておらず甘かったと思います。量産品はこれらを想定した上で製品化しているため、万が一のためを考えて装着した強化品よりも信頼性が高いということを痛感しました」

辰己 「実は量産品は相当様々な使用条件を想定して設計しているので、実は信頼性は高いです。これまでもニュルでパワステフルードが漏れることは、一度もありませんでしたから。心配しすぎてやったことが、逆の結果を招いてしまいました。このトラブルで1時間近くをロスしたのは、大きな反省点です。一方、改めてSUBARU量産車の信頼性の高さが、ここで実証されたとも言えます。私たちが、NBRを量産技術で戦うという意義を改めて確認できたので、これも今後につながると思います」
MSM レース終盤のエンジントラブルも肝を冷やしました。

辰己 「あれは、助手席のトウボードに配置したECUに水滴がしたたり、それが霧のためのレース中断で接続部に入り込み、エラーを起こしたものでした。走り続けていれば、その周辺の熱で蒸発してしまう程度の水分だったはずなので、これも偶然の仕業だと言えます。キャビン内へのフレッシュエア取り入れ方法を含め、今後注意して対策しておくべき点ですね。ニュルでは、雨は毎回降るものですし、霧で中断も予測できることです。それにしても(コース上で)止まった位置(GPコース内)が良かったです。あと数百メートル進んだところで止まっていたら、ピットボックスまで戻って来られなかったはずです。私たちは世界中のSUBARUファンの期待を背負っていますから、簡単に根を上げるわけにはいかないんです。なので、トラブルもありましたが、神様にはまだ見離されずに済んだのでしょう」
MSM SUBARUディーラーメカの皆さんも頑張ってくれました。

伊東 「今年もディーラーメカニックの皆さんは、優秀でした。感心したのは、日頃お客様のクルマを扱っているので、仕事が非常に丁寧なことでした。最初は彼らも重い重圧感からか、だいぶ緊張されていましたが、日を追うごとに動きもよくなり、正確で迅速な仕事ぶりを発揮してくれました。彼らの働きに私たちはかなり助けられたと思います」

MSM チ―ムワークも良かったですね。
伊東 「今回のメンバーは、全員が意見を出し合いながら一丸となって取り組んでいたため、良かったのかもしれません。その中で最年少のメカの方から、”私以外全員年上なので気を使ってしまう・・・”、と相談を受けました。でも全員が同じ責任を負うチームでそんなことは関係ないですから、ビシビシと思ったことを発言してください、とお話ししました。彼も私とほぼ同年代なんですが(笑)。繰り返しになりますが、彼らは本当に素晴らしい人たちだったと思います。やっぱりそれぞれの地域のSUBARU販売店の看板を背負ってきていますし、お客様も注目しています。多くのSUBARUファンも彼らの一挙手一投足を見守っていますから」
三人のお話を聞きながら、やはりSUBARUにとってNBRを戦う意義は大きいと感じました。そして、宮沢さん、伊東さんをはじめとする若いSTIエンジニア達が次々とアイディアを出し、今後さらに強いNBRマシンを作り、またそれが量産車やに還元されて行くはずだと、確信しました。そしてその後ろから、数多くのSUBARUファンの期待が後押ししているのだ、と感じました。今後のNBRチャレンジが、ますます楽しみです。 (文責 : SUBARU MSM編集部)

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