2019.06.07 - ニュルブルクリンク24時間レース・事前レポート
「ヒントが数多く得られた予選レース」



辰己 「予選レース翌日に車両をバラバラに分解し、エンジン、トランスミッションアッセンブリー、リヤデフ、サスペンションリンクなどをレース用のフレッシュなものに載せ替えています。オーバーホールの過程で、大きな問題点は見つかっていません。また、昨年何度も超過が指摘されてドライバーたちのストレスとなった排気音量についても、サプライヤーさんのご協力で音量が3〜4db下がったものを装着したので、レース中の音量チェックでも全く問題ありませんでした。しかもエンジンパフォーマンスには影響ない範囲です。ただ、路面にタッチする接地が例年よりも多く、一部のボルトなどが擦過のため磨耗しているのを発見しました。今回は夏のレースのため、ラジエター容量を大きくしており、その重量増で路面タッチが増えている可能性があります。24時間レースは予選レースの4倍の距離を走らなければいけないので、そんなことに足元をすくわれないよう対策を用意しました。サスペンションのバネレートも少しだけハード方向にもっていくつもりです」

辰己 「心配はもちろん、色々とあります。今回も山内と井口は、現在のセッティングで24時間を十分戦えると評価していますが、カルロとティムは少し異なる意見があるようです。予選レースではシャシーセッティングと合わせて、コンパウンドの異なるタイヤをいくつか組み合わせてテストしており、その組み合わせによる違和感なのかもしれません。また、山内と井口は国内テストでこのクルマを十分走り尽くしているので、慣れていると言えるでしょう。カルロとティムも周回を重ねるうちにセッティングの意図を理解し、慣れていってくれると思います。とは言え、なるべくドライバー全員が満足いくセッティングにしてあげたいので、これについてもあれこれ仕様を考え、改善に向けた追加部品を用意しました」

辰己 「冷静に振り返ってみると、今年のマシンは計画通りに進化していることが確認できています。トップスピードも伸びましたし、レースラップでは去年のクルマより1周あたり“5”秒位速くなっています。レース中に井口が9分1秒を出していますし、カルロも終盤の磨耗が進んだタイヤでも9分1秒台を記録しています。本番の予選で条件さえ良ければ、念願の8分台突入が叶うかもしれません。また、燃費が昨年に比べて3~4%良いのも良い傾向です。ECUのソフトウェアを入れ替え、様々な制御ができるようになったことが第一ですが、コーナリングスピードが上がり、ブレーキによる減速の度合いが下がったことも影響していると思います。減速が少なければコーナー出口での全開加速も少なくて済みます。これによってブレーキも保護されるでしょうし、作戦面での選択肢も増えます。鮫肌による空気抵抗低減も影響しているかもしれません。一見良いことだらけのように見えますが、それらの間に何か見逃している問題点がないか、慎重にチェックをしています。それによってボルトの磨耗も発見できましたし、セッティング微修正のアイディアを色々考えることができました。今年の予選レースは、いろいろなヒントが得られたという意味で大変有意義だったと言えるでしょう」。
