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RALLY
2020.12.18

新井大輝、27歳の新王者

インタビュー:2020年全日本ラリー選手権JN1クラスチャンピオン

全4戦という変則的なスケジュールで開催された2020年の全日本ラリー選手権で、強豪ドライバーひしめくなか初のチャンピオンを獲得した新井大輝選手にインタビューを行いました。場所はアライ・モータースポーツ。チャンピオン獲得を振り返って、応援してくださったファンの方に向けたメッセージも伺いました。
──チャンピオン獲得おめでとうございます。今の気持ちを聞かせてください。
新井選手:
もちろんうれしいです。それに、ホッとしましたね。2019年シーズンは最終戦が台風の影響で開催されずチャンピオンを獲ることができなかったので、2020年はどうしてもタイトルを獲らなければいけないなという気持ちがありましたから。

──そういう思いで臨んだ2020年は、4戦というイレギュラーなシーズンでした。全体を振り返っていかがでしょうか。
新井選手:
ラリーのスケジュールがなかなか決まらず、テストなどの予定も立てづらかったですし、気持ちを維持するのが大変でしたね。3月の新城ラリーと8月のラリー丹後、ふたつのターマックラリーでけっこう苦戦してしまったので、最終的にグラベルラリーが9月のラリー北海道1戦のみと決まった時は、正直なところ不安もありました。ただ、そのラリー北海道で勝つことができ、シリーズランキング1位になったのは気持ちの面でも大きかったですね。

──ランキングトップで臨んだ最終戦はいかがでしたか。
新井選手:
ずいぶんテストをして、ターマックラリーでのセットアップも確かに良くはなりました。でも、ラリーは本番とテストでまったく使う領域が異なるんです。もちろんテストでいいに越したことはないんですけど、それがラリーのフィールドでどういう影響を及ぼすのかという点は、実際に走ってみるまで分からない部分もあるんです。だから初日を走り終わっても、自分のなかでモヤモヤしている部分もありました。

──初日を終えて、トップの奴田原文雄選手と4.2秒差でした。
新井選手:
タイム差とタイヤの摩耗具合を見て、ちょっと奴田原選手に分がありそうだと思いました。初日の夜、コ・ドライバーの小坂(典嵩)選手とサウナで相談しながら「明日の1ループ目に絶対勝負をかけるから、今日中に何がなんでも全部ペースノートを合わせて、1発目から全開で行くぞ」って。今まで以上に念入りにペースノートの確認をしましたし、ギリギリまで時間を使って準備しました。久保凜太郎選手からは電話がかかってきて「大丈夫だよ。4秒差だったらいけるよ」って。簡単に言うけどさ、みたいな(笑)。だから2日目は“仮にペースノートにミスがあったとしたら終わるな”っていうくらい全開でしたね。

──最終日に3連続でベストタイムを刻んで、奴田原選手を逆転しました。
新井選手:
2日目最初のSSで負けてしまったのですが、そこでまたセットアップを変更して、それがベストタイムにつながりました。結果的に奴田原選手がスピンしてしまったのですが、それは想定外でしたね。もちろん彼がミスをしないという前提でプランを組み立てていましたが、5秒離されたら、奴田原選手にペースをコントロールされてしまうと思っていました。

──最終戦を首位で終えた時はいかがでしたか。
新井選手:
フィニッシュした時は、かなりもう落ち着いていましたが、競り合いの充実感はすごかったですね。
──2020年シーズン、自身で一番成長したと思う点はどこでしょうか。
新井選手:
自粛期間中にはエンジンECUなどの勉強をしていたので、クルマになにか問題があった時でも『この領域はどこの領域で対処できる』など、問題を切り分けて冷静にこうしよう、ああしようと対策を考えられるようになった気がします。

──そうして戦ってくるなかで、SUBARU WRX STIの強みを感じた部分を聞かせてください。
新井選手:
やっぱりバランスだと思います。しっかりセットアップが決まった時のバランスがいいですね。あとはボディ剛性。特に、前のGRB型からVAB型になった時のボディ剛性の違いはものすごかったんです。それだけでもう安心して踏んでいけるというか。剛性感があると、スピードがどんどん速くなっても安心感があるので、ドライバーにとってはゆっくりに感じたりするんです。だからいちばんベストなのは“ドライバーがゆっくりだと感じているのに速いクルマ”。今はそういった意味でかなりいい状況にあると思っています。

──コ・ドライバーを務める小坂選手とのコンビネーションはいかがでしたか。
新井選手:
長く組んでいるところもあるので、彼の強みを言葉で説明するのはなかなか難しい部分もありますが(笑)、ペースノートのリーディングがしっかりできる点でしょうか。状況に合わせて読むタイミングを合わせてもらったりもしますから。最終戦のナイトステージだけは、どうしても経験値がモノを言う部分なのでちょっとうまくいきませんでしたが、シリーズリーダーということもあって、勝たなきゃいけない立場でしっかり集中してくれていました。

──チームにはSUBARUディーラーのスタッフがメカニックとして加わりますが、なにか印象に残っていることはありますか?
新井選手:
ほとんどの方にとっては、競技での整備って初めての経験だと思うんです。次の作業で何が必要なのか、事前に打ち合わせして細かいところまで詰めますし、普段のディーラーでやっている整備とは別の視点や精度で色々なことを要求されると思うので、すごく大変だと思うんですよ。でもラリーが終わってみると、みんな生き生きした顔で帰っていく。知らない世界を知ったり、自分のメカニックとしてのスキルが、整備作業の延長線上にある競技レベルでどう活かせるのかを知るいい機会なんだと思います。会社に戻って、「こうだったんだよ、ああだったんだよ」って伝えていただくことは、僕らとしてもものすごくモチベーションが上がりますし、いいことだなと思うんですよね。
──最後にSUBARUファンの方々にメッセージをいただけますでしょうか。
新井選手:
本来であればラリーも現地に来て応援していただく機会があったと思うのですが、2020年シーズンはコロナ禍でかなり変則的なかたちとなってしまいました。最後までSNSや色々なメディアで結果を追って、一緒に一喜一憂していただいたファンの皆さんの応援にはとても助けられました。今後も応援よろしくお願いします!


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