SUPER GT

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2021.07.22

「レースカーの健康状態をセンシングする」

現代のレースカーは、電子制御技術の塊です。エンジンへの燃料供給はもちろんのこと、スロットルもトランスミッションのギアセレクトも電子制御でコントロールされています。また、エンジンの稼働状態や車体の挙動を解析するためには、走行中のレースカーが各種センサーを通じて収集・蓄積するデータが必要です。それらのデバイス制御とデータコレクションは、STIでは渋谷直樹というエンジニアが設計および運用を担当しています。
渋谷は、「現在のSUBARU BRZ GT300は、約60個ものセンサーが張り巡らされており、そこから得られる電子信号を個別のコントロールユニットが受信し、各デバイスをコントロールしています」と語ります。「センサーの種類は、エンジン関係だけでもアクセル、スロットルポジション、クランクポジション、カムポジション、吸気・排気温度・圧力、冷却水温度・圧力、潤滑オイル温度・圧力、燃料温度・圧力、異常燃焼を検知するノックセンサー、ターボ回転軸センサー、アンチラグシステム、空燃比を検出するラムダセンサーなどがあります。そのほか車体関係では、クルマの挙動を解析するためのGセンサー、ステアリングアングルセンサー、ダンパーストロークセンサー、タイヤの異常を検知してタイヤバーストなどの事故を未然に防ぐタイヤ内部圧力・温度センサー、ブレーキフルードの液圧センサー、非接触式のブレーキローター温度センサー、車高センサーなどがあります。これらのセンサー情報は、まずクルマ各部の異常を監視する役割と、更にクルマを速く走らせるための各デバイスの最適制御を行う役割、解析を行うためのデータ取りの3つの役割を担っています」と語っています。
BRZ GT300がエンジン暖機している間、ピットでしかめっツラしながら、ハンドヘルドPCの画面をしきりにチェックしている渋谷の姿は、まるで検査担当ドクターのようです。「いくつものセンサーから得られたデータを活用してデバイスをコントロールしていると言いましたが、それをデータロガーユニットでまとめてロギング(記録)しています。それらのセンサーとコントロールユニット、各コントロールユニット同士の通信等が正常に作動していないとレースカーはまともに走れません。これらセンシングの目的は、クルマの状態を”見える化”する仕事と言えば良いでしょうか。どこかに異常がないか、随時データをチェックしています。データを眺めているだけではトラブルの予兆を発見できません。流れるデータの推移をチェックしながら、ちょっとしたノイズをも見逃さない注意と集中力が必要です。しかも各デバイス制御詳細やロケーションなど車体全体のシステムを全て掌握していないとできない仕事なので、設計も運用も私が担当しているのです。もしも何か異常を発見した場合、すぐに対処方法を検討して小澤総監督にレポートします。私のように心配性の性格でなければ、務まらないかもしれません(笑)」。
渋谷は、子供の頃から電気いじりが好きで、小学1年生の時からハンダゴテを駆使していたと言う。「前職は音響メーカーのエンジニアでして、電子回路設計やソフトウェア開発、機構部品設計なども担当していましたが、モータースポーツも好きでした。それが高じてラリー競技のコ・ドライバーをやり、プライベーターとしてWRCラリーに出場した時にSTIと出会いました。2006年に入社して、スポーツパーツの開発やグループN競技用パーツの開発を担当し、2010年からNBR車の電装関係を兼務しました。まずは、量産車の膨大なハーネス(電気配線)の塊から不要な配線を省き、軽量化することから始めました。ロードカーは快適装備用などの配線が多いので、それらを省いていくと重量は1/2程度にまで軽量化できます。また、2011年に始まったBRZ GT300の開発では、最初からこのシステム構築に関わらせて頂きました。それらから学んだことは非常に多く、新型BRZ GT300では、とにかくシンプルに、且つメンテナンス作業性も考慮してシステム開発をしています。また、ドライバーとのインターフェイスであるディスプレイのモデファイやスイッチパネル類の設計も私の担当です。ドライバーが安心してレースが出来る様、必要なデータの視認性やスイッチ操作性の工夫など、ドライバーやメカニックから要望を聞いて即対応しています」。
今後、レースカーのエレクトロニクス開発はさらに重要な任務を帯びることになるでしょう。SUPER GTカーは、まさに先端技術の塊ですが、機械の集合体である以上、どこかに異常やエラーが発生することはあり得ます。それらの頻度を極力減らし、大きなトラブルに発展させないこと。フェイルセーフ(異常を検知したらシステム全体の崩壊につながらないよう、各部の機能を制限すること)も重要です。「そのために冷静に、しかも緻密にシステム全体の稼働状態を俯瞰してチェックし、スピーディ且つ適切に対処することが大事なんです」と渋谷はコメントしています。
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