RALLY

BACKSTAGE COLUMN

2022.11.09

JN-3クラスチャンピオンの『走るチーフエンジニア』竹内源樹

2022年の全日本ラリー選手権JN-3クラスに参戦し、新型SUBARU BRZでは初めて、自身としては2度目のチャンピオンを獲得した竹内源樹は、ボディ設計部の主査としてSUBARUに勤務するエンジニアです。

同時に“走れるエンジニア”を育成するスバルドライビングアカデミー(SDA)のインストラクターでもあり、今年からスタートしたスーパー耐久シリーズのST-Qクラスに参戦するTeam SDA Engineeringのチーフエンジニアも務めるなど、普段の量産開発だけではなく様々な分野で活躍しています。

竹内は2008年の入社とほぼ時期を同じくしてラリーへの参戦をスタート、2012年にはインプレッサWRX STIで全日本ラリー選手権にデビューし、2014年にはSUBARU BRZ(ZC6)でJN4クラスチャンピオンを獲得するなど頭角を表していきます。そして2021年の最終戦・久万高原ラリーでは新型SUBARU BRZ(ZD8)をいち早く実戦に投入し、翌22年にはシーズン4勝を挙げて、2度目の全日本チャンピオン獲得を決めました。

竹内が参戦するJN-3クラスは、新旧SUBARU BRZとトヨタ86、トヨタGR86が混走しており、ドライバーも強者ぞろい。時には秒差に上位5台が並ぶほどの激戦区です。そのなかで8戦中4勝という戦績は、竹内自身のスピードと、新型SUBARU BRZの強さが遺憾なく発揮された結果と言えるでしょう。

学生時代からアルペンスキーに打ち込んでいたという竹内。ラリーとの出会いは、彼がまだ学生だった2005年に、北海道で開催されたWRCラリージャパンにまで遡ります。
MSMまずは、ラリーを始めたきっかけについて教えてください。

竹内「当時は2代目のレガシィに乗っていて、スキーで雪道を走る機会も多く、クルマの運転って楽しいなと思っていたんです。それまでラリーを実際に観たことがなかったのですが、オフィシャルとして2005年のラリージャパンに携わったことが、自分もラリーで走ってみたいと思ったきっかけですね。本格的に競技を始めたのは社会人になってからです」

MSM以前はインプレッサWRX STIや、VAB型のWRX STIでも参戦されていましたが、SUBARU BRZを選んだ理由はなんでしょうか。

竹内 「SDAの講習はSUBARU BRZで行うことも多く、RWD車はドライビングの引き出しが増えるという印象です。これまでWRX STIでラリーに参加してきましたが、あらためてRWD車でそうしたスキルを磨きたいなと思いました。それに、ラリーは個人の活動として参加しているので、予算的には比較的リーズナブルで、コンペティティブな戦いができるという点も大きいですね」

MSM 個人の活動ということですが、目標はやはりチャンピオンですか。

竹内 「それもありますが、ラリーを始めた当時、目標として掲げたのは“クルマ全体をマネージメントできるエンジニア”、“クルマの感性を図面化できるエンジニア”になることでした。その点については大きく変わっていません。私はプライベーターなので、自分のラリーカーは自分で製作して整備していますが、そうした取り組みも、非常に勉強になっています。
Team SDA Engineeringの若手エンジニアとは、クルマの部品ひとつひとつの役割を理解できるような『クルマ1台を見られるエンジニアを目指そう』という話をしていますし、私もそうなるべく、勉強を続けています」

MSM 自らステアリングを握り、全日本ラリーを転戦することで得られるものとはなんでしょう。

竹内 「ドライビングスキルに加えて、大きくふたつの面があります。ひとつはマネージメント的な面です。シーズンの目標やスケジュールを業務と両立させながら考えたり、コストも管理しながら参戦プランを計画していかなければなりません。時に失敗することもありますが、長期的なスパンで考えながら物事に取り組むという点は勉強になりますね。
もうひとつは技術的な側面です。厳しい環境でクルマを走らせることでこそ、気がつけるものもあります。その知見がそのままダイレクトに開発に活かされるわけではありませんが、若い部下のみんなと、『決められた目標の中でも設計を工夫して、商品力をもっと上げよう』など、そうしたことを考えるヒントになると思っています。
そうした点は、Team SDA Engineeringの活動にも活かせている点だと思います」

MSM SUBARUユーザーやファンにとって、竹内選手のように“自分で走る人”が“クルマを作る人”であることは非常に心強いことだと思います。

竹内 「私自身、まさにそういったエンジニアになりたいなと思っていて、それこそが、私がラリーを続けている理由のひとつでもあります。自分自身でチャレンジを続けながら、モータースポーツで得た知見や要素の入ったクルマをお客様に乗っていただきたいですし、そこに自分が主体的に関わりたいと思っています」

MSM 最後に、SUBARUファンに向けたメッセージをお願いします。

竹内 「全日本ラリー選手権のみならずラリー全般、そしてスーパー耐久も、我々が作っている量産車、つまり皆さんの愛車と同じものをベースにしています。モータースポーツで得た知見をしっかり取り込み、将来色々な形で皆さんのクルマに反映できるように頑張っていきたいと思いますので、今後とも応援をよろしくお願いします」
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