2025.07.06 - 全日本ラリー選手権第5戦 2025 ARKラリー・カムイ Leg2
波乱続きのラリーで新井敏弘が5位フィニッシュ

この日は、このラリーで初めて使用されるSS8/SS10『SUNFLOWER(16.01km)』と、観戦エリアが設けられる『NEW SUN-RISE(3.65km)』を2回ずつ走行する計4SS・39.32kmという構成。空には一日中、雲が広がりましたが雨が降ることはありませんでした。しかし、路面には走行が重なるごとに泥や草が掻き出され、特に新ステージのSUNFLOWERは、序盤と終盤に高速セクション、中盤の所々に舗装路面が現れるというSS。リズム変化の激しいなか、舗装路面に泥や草が乗ることで非常に滑りやすくなるなど、難しいコンディションとなりました。
前日は表彰台圏内に12.0秒差の5番手で折り返した新井。トリッキーな路面が入り組むロングステージでは、狭い区間で車体の大きさに苦戦する場面もありましたがSS6番手タイムでまとめ、最終ステージではSS4番手タイムをマーク。特に路面がスムーズでハイスピードなセクションではかなり速さが向上しており、トラブルやリタイアが相次いだサバイバルラリーを、5位で走り抜きました。

チームをサポートするSUBARU CTO室主査 モータースポーツプロジェクトの嶋村は「反省点もありましたが、当初のセットアップから変えることなく無事に走り切って、全体的な底上げが確認できたと考えています。今回の課題として、大きく負けてしまった部分もいくつか見えてきので、パッケージングの見直しも含めて、チャレンジしていきたいと思っています」と、次戦以降への意欲を語りました。
エンジニアとして参加したスバル車両環境開発部の塚原大輔(2.4リッターターボエンジンの機能系開発を担当)は「エンジンの性能は、昨年から上がっているので、新井選手の得意なグラベルラリーでの活躍を期待していました」と、コメント。また、スバル技術本部ADAS開発部の辻太一(電気自動車の走行制御開発を担当)は「昨年から足まわりを変更したSUBARU WRX VBHでは、なかなか良いところを見せることができず、試行錯誤を続けてきました。今回のラリー・カムイでは、新井選手からも足まわりがだいぶまとまってきたというフィードバックをいただいています。表彰台はまだ遠い位置にありますが、JN-1クラスの集団には入ってきた印象です。パワートレーンに関しても、もっとエンジンレスポンスを上げたいという意見を受けているので、ラリー北海道に向けて何かできることがないか、引き続き模索していきたいと思っています」と語っています。

・山下凌
・東京スバル株式会社 大田店メカニック15年目
井口卓人選手がプローバから86/BRZレースに参戦する際、ディーラーメカニックとして参加した経験を持つ山下。オートポリスで開催された今年の初戦にもディーラーメカニックとして参加しました。ラリーへの参加は、2〜3年前に打診を受けたものの、成長過程であると感じていたことで辞退したといいます。
「今回は、スバルTS1級を取得しましたし、ニュルブルクリンクの社内選考会を2回受けた中で経験の必要性を実感したことで、チャレンジする機会として応募しました」と山下。
「ピットがあるレースとは違い、地面が斜めになっている状態でクルマの整備をするのは初めてでした。今回は右フロントを担当しましたが、45分という限られた時間のなかで、過酷な状況下でどこにダメージがあるのか、的確に確認しなくてはなりません。アンダーガードのボルトの頭が、地面で擦れて変形してしまって、ハンマーで叩かないと工具が入らない状態になってしまっていたり、ロワアームやタイロッドの調整のロックナットが緩んだり、グラベルラリーの過酷さにも驚きましたが、自分の担当エリアでミスがあってはいけないと的確な作業に努めました」
「ラリーの整備作業ではそれぞれが異なる動きをしているので、コミュニケーションの重要性を再認識しました。支店には、自分より若いスタッフはモータースポーツの現場を経験した者があまりいないので、自分の経験値として蓄えられることを伝えて、若い世代にもどんどんモータースポーツを経験してほしいと思います」
全日本ラリーは、次戦もグラベルラリーが続きます。第6戦は9月5日〜7日、北海道帯広市を拠点に開催される「RALLY HOKKAIDO」です。日本で初めて開催された世界ラリー選手権(WRC)の舞台となった十勝の高速でスムーズなグラベルステージを走行する、シーズンの大きな山場となる一戦です。様々な見せ場や難所が待ち受けるグラベルラリーでのSUBARU WRX VBHの熱い戦いに、応援をよろしくお願いいたします。