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2016.10.27

新井敏弘インタビュー

GRC初参戦「新しいチャレンジがしたくてウズウズします」

グローバルラリークロス(GRC)・ロサンゼルス戦にスポット参戦し、日本に戻ったばかりのラリードライバー新井敏弘にGRCのことなど話を聞きました。40代最後の年となった2016年、いまだチャレンジ意欲旺盛な新井の現在の心境や将来への展望などをご覧ください。

新井さん、GRC初挑戦はいかかでしたか?

クルマの見た目は慣れ親しんで入るWRX STIですが、中身が全く別物でした。まずはエンジンパワーがものすごいんです。チームでは約600馬力と説明していますが、ターマックからグラベルに突っ込んでいくこの競技では、体感的にはそれ以上に感じます。そんなパワーなので、扱うのはとても繊細なコントロールと体力が必要です。まずは、スタートで気負ってホイールスピンしたら大きくロスしてしまいます。なので、トラクションを最大限発揮できるエンジン回転を体で覚えて、ロスなくクラッチミートする必要があります。これは反復練習が必要だと感じました。それから舗装部分を全開走行している時も、パワーをどかっとかけてしまうと、すぐにブレークしてしまうのでジワッとスロットルを開けないといけません。ブレーキングからグラベルセクションに飛び込む場所も繊細なスロットルワークが必要です。得意なグラベルではパワーコントロールはさほど難しくないのですが、今回の特設コースはグラベルセクションが短く、大きく挽回するのはちょっと難しかったですね。そんなクルマをねじ伏せるのはやっぱり体力勝負だと思いました。何本か走っているうちに、体のあちこちが痛くなってきたんですよ。普段使っている筋肉と別の筋肉を使わないといけないようです。レースウィークにジムに行って筋トレをしなおしたくらいです。ジャンプも着地のショックが大きいので、これに耐えるものも強靭な体力が必要なんだと思います

体力には自信のある新井さんでもそうですか

ロサンゼルスの特設会場が特にそうだったのかもしれませんが、通常のラリーでは1.7Gもの力が体にかかることはあまりないですからね。でも逆に燃えますね。ねじ伏せる体力と、繊細なコントロールが同時に必要なんて面白いじゃないですか。クルマの挙動が激しく、派手なアフターバーンやジャンプの後のフルバンプなんて、実にアメリカ的だなと思いました。しかも6台が一斉スタートして、絡み合うわけですからね。観客席のお客さんも相当盛り上がっていましたね。特に今回のロサンゼルス戦は、ロングビーチというところにある港の一部を区切って特設会場を作り出しており、大都市LAからのファンや近隣住民だけでなく、遠くサンディエゴなどからのギャラリーも多かったようです。ヒスパニックや東洋系の方が多く、日本人は親近感があるのだと思います。SUBARUファンも相当数が集まっていましたね。チームテントと観客の距離も近く、気軽に声をかけてくれるのもアメリカ的です。みんな陽気に楽しんでいるので、こちらもエンジョイしてやろうという気持ちになります。

現状のSUBARUの競争力はどんなものなのでしょうか。課題は見えましたか。

今回結果を出せていないので、あまり大きなことは言えませんが、クリス(アトキンソン)やデイビッド(ヒギンズ)などレギュラードライバーの腕は確かだし、クルマも他のマシンと比べても劣っているとは思えません。チームとも話してきましたが、コースレイアウトにマッチしたシャシーのセッティングを素早く見つけることと、スタート時のロスを最小限に抑えるアイディアがあれば十分戦えるポテンシャルを持っていると感じました。かつてWRCを一緒に戦ったスタッフが加入したりしてSUBARUラリーチームUSAの体制も充実してきているので、これらの課題はじきに解消されるでしょう。今後は活躍が期待できると思います。私もチャンスがあればまたチャレンジしてみたいと思っています。

GRCの楽しみ方を簡単に説明していただけますか。

一言で言うと、全体が見渡せるコンパクトな特設会場で行われるド派手なダートレースですね。金曜日のプラクティスから、予選レース、敗者復活戦、決勝レースと走る機会が用意されており、それぞれ一度に6台が同時スタートして速さを競います。一回のレース距離も短く、すぐに結果がわかるので誰が速かったかがすぐに伝わります。ファンとしては、贔屓のチームの動向が瞬時にわかるので、盛り上がりやすいという特性があると思います。また、スポッターが戦略をドライバーに指示したり、ジョーカーラップを使って挽回するチャンスを探るなど、逆転のチャンスも隠されています。さっき話したように、もちろんクルマのアクションが派手だし、観客とチームとの距離も近いので感情移入しやすいですよね。まだ計画はないようですが、日本の首都圏でこのイベントが行われたりしたら、結構人気を集めるのではないかと思います。現状のGRCでも気軽に観戦できるので、西海岸で行われるイベントに行ってみると言うのも手でしょう。クリスもデイビッドも日本のSUBARUファンの熱心さは十分理解しているので、歓迎してくれると思いますよ。また、このGRCシリーズは全米にテレビ中継されているのも人気の秘訣でしょう。ネットでなら日本にいても見られるので、ぜひ一度見てみてください。

新井さん自身の今後の活動計画が決まっていたら教えてください。

来年のことはまだこれから決まっていくことですが、全日本ラリーはこれまで通り続けると思います。息子の大輝が出場する時は、まだ負けてられないですしね。私を育ててくれた全日本ラリーに対する恩返しもあるので、体が動く限り続けるつもりです。でもね、そろそろ新しいチャレンジがしたいですよね。新しい目標を設定して、若い頃のようにがむしゃらに自分を追い込んで戦ってみたいです。

日本を代表するラリードライバーの新井敏弘は、今でも意欲満々です。引き続き、今後の新井さんの活躍に期待しましよう。
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