2021.07.04 - 全日本ラリー選手権 第7戦 2021 ARKラリー・カムイ Leg2
今季初のグラベルラリーでSUBARU勢が奮闘
2021年の全日本ラリー選手権第7戦ARKラリー・カムイは、7月4日(日)の競技最終日を終え、SUBARU WRX STIの新井敏弘/田中直哉が2位、鎌田卓麻/松本優一が3位を獲得しました。勝利こそ逃したものの、今後のグラベルラリー2戦に向けたポジティブな要素を持ち帰ることもできた1戦といえます。

ラリー最終日はSS7〜SS12、初日とは異なる新たな3つのステージを2度走行する計6SSという構成。SS走行距離は初日よりも長い62.18kmに設定されました。特にSS9/12の『SCHUNK』は大会最長の15.23kmを誇り、路面もマッド、浮き砂利、簡易舗装と目まぐるしく変化するため、スタート前から各選手が勝負どころになると読んでいたステージです。今大会ではこのSS12が、まさに決戦の舞台となりました。
この日は、前日トップの鎌田が先頭走者を務めます。しかし鎌田は、路面の浮き砂利に足を取られて思うようなスピードを発揮することができず、SS7で首位の座を勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス)に明け渡してしまうことに。続くSS8、SS9では新井がベストタイムを連発して、0.3秒という僅差ながらトップに立つことに成功。さらにサービスを挟んだSS10では、新井と勝田がまったく同じタイムをマークするなど、互いに一歩も譲らない真剣勝負が展開されました。
しかし残るSS11、SS12を勝田が連続で制し、新井はわずか0.7秒およばずに2位でのフィニッシュとなりました。鎌田は首位から32.9秒の遅れで3位。SUBARU勢にとっては悔しい結果となってしまいましたが、グラベルラリーにおけるSUBARU WRX STIのポテンシャルを再確認することができたと言えるでしょう。

2位表彰台を獲得した新井は、「今回は勝田選手が速かったですね。最終日はトラブルもありませんでしたし、100%を超えて走って負けてしまったので仕方がありません。私たちのクルマも熟成は進んでいますが、まだ伸びしろは残されていると思います。SUBARUやSTIと相談して、さらに進化を目指していきたいと思います。今後はなんとか挽回して、2連勝できるように頑張りますので、応援よろしくお願いします」とコメント。3月の新城ラリー以来の完走・入賞に笑顔を見せました。
2戦連続で3位に入った鎌田は、「先頭走者でしたので路面の掃除役になることは覚悟していたのですが、思いのほか、タイムロスが大きかったです。最後は駆動系にトラブルが出たり、スピンもあって遅れてしまいましたが、それでも2戦連続で3位に入ることができました。クルマにスピードがあることは分かりましたし、次の秋田に向けて、今回の状況を踏まえて準備を進めたいと思います」と最終日を振り返り、次戦に向けて車両の煮詰めを行うと語っています。

・担当車両:WinmaX DLシムス WRX STI
・秋本健一郎
・東京スバル株式会社南大沢店 メカニック
今年の4月でメカニック歴7年目に入るという秋本。ラリーを終えて、「純粋に楽しかったです」と笑顔を見せた。子どもの頃、レースを観に行ったことがきっかけでクルマやモータースポーツが好きになったとのこと。
「昔から色々なカテゴリーのモータースポーツが好きでしたし、憧れもありました。特にSUBARUはディーラーメカニックとして様々なモータースポーツに挑戦できることを知り、入社時の面接では『ニュルブルクリンクに行きたいです』と言いました(笑)。今回は、先輩のメカニックや同じ会社の方から勧められたこともあって、応募しました」
ラリーへの参加は初めて。実際の作業では、車両左側の前後足まわりを担当した。クルマについては、部品の脱着や整備箇所へのアクセスなど、迅速に作業を行うための工夫が凝らされている点が印象的だったとのこと。また、ラリーならではの厳しい時間制限については次のように語っている。
「お客様を待たせている、という意味においては普段の整備と同じことだと思います。ラリーでは時間が厳しいので、スピードを重視しながらも確実、正確な作業を心がけました。金曜日からの3日間、緊張感をもって取り組むことができたと思います。チームのメカニックの方は、下準備をすごく念入りに行っていた点が印象的でした。“どの箇所を整備するために、どのような準備が必要なのか”を、あらかじめ理解し準備する。それが短時間で作業を終えられる基本なのかなと。また、ラリー初日にデフを下ろす整備がありましたが、チームの方がものの20分ほどで作業を終えていた手際は、やはりすごいと思いました」
今後、店舗に戻った際に、今回の経験をどのように周囲に伝えるかを聞いたところ、次のような答えが返ってきた。
「ラリーカーもお客様の愛車も、やることは同じだと思いました。下準備と正確性を高めることは、いずれにおいても重要なこと。それをしっかり普段の業務にフィードバックしていけたらと思います。また、普段はひとりが1台を受け持ち作業を行うかたちですので、ラリーのようにチームとして取り組む一体感は本当に楽しく感じられました。いずれは自分でも競技をやって、整備してみたいという気持ちにもなりました」
次戦は8月20日〜22日に開催されるグラベルラリー「横手ラリー2021」。秋田県横手市を拠点として争われる今季2戦目のグラベルラリーです。8SS、SS距離80.06kmが予定されており、2021年大会はすでに無観客での開催が決まっています。今回の結果を足がかりに好成績を目指すSUBARU勢の奮闘に応援をよろしくお願いいたします。