SUPER GT第6戦鈴鹿1000kmは、SUBARU BRZ GT300(井口卓人／山内英輝)にとって厳しいレースとなりました。辰己英治総監督が語ったように、ライバルに前を塞がれるケースが多く、そのためにブレーキングで100％の力を発揮できず、ストレートスピードの伸びも今ひとつという悪いサイクルに陥ってしまった点が大きな原因と言えます。辰己総監督は10月に行なわれる次戦のタイについて、「タイのコースは道幅が広くフラットなので、ハードブレーキングをするポイントは少ないです。スピードを維持したまま走るコーナーが連続するので、SUBARU BRZ GT300にとって苦手なコースではないですね」と見通しを語ってくれました。今回のレースでの雪辱を果たすべく、チームは高いモチベーションを持ってシリーズ唯一の海外ラウンドに挑みます。

今回のコラムでは、SUBARU BRZ GT300を目に見えない部分からサポートするデンソーの技術についてご紹介します。デンソーとSUBARUの協力体制は2004年、世界ラリー選手権(WRC)でSUBARUワールドラリーチームのスポンサーについたことからスタートします。WRCでは2005年からSUBARU インプレッサWRC用のスパークプラグを供給、SUPER GTでは2011年からR&D SPORT LEGACY B4用のスパークプラグを供給しており、EJ20エンジンの性能を100％引き出す役割を担っています。

SUBARU BRZ GT300が搭載するEJ20エンジンは、量産車のものをベースとしてチューニングが施されています。こういったレーシングカー用エンジンと、量産車用のエンジンではどのような違いがあるのでしょうか。 「どちらもその車両にベストマッチする熱価（プラグが受ける熱を発散する度合い）、電極形状、サイズのものを設計・製造しています。ただし、レースにおいて一番重要なものは耐久性です。耐久性にかかわる部分は、カテゴリーの特性に応じた加工を施したプラグを提供しています」

「また、電極の形状はカテゴリーによって異なる場合がありますが、それは“着火”・“飛び火”性能と、“耐久性”のバランスで決定されます。接地電極タイプの方が、シリンダの中心に近いところで着火するので、素早く大きな爆発を起こすことが可能です。しかし、電極が長く飛び出せば飛び出すほど、電極に負荷がかかり、折れてしまう危険性も合わせもっています。そこで、電極を短くしたタイプや、電極のない沿面タイプなどが存在するわけです。SUBARU BRZ GT300に使用しているものは接地電極タイプです。EJ20エンジンにベストな着火性とGT300クラスを走り切る耐久性を両立させ、いかにエンジンの性能を引き出すか？ということが重要なポイントですね」

その裏には、WRC時代から長年にわたって蓄積されてきたノウハウと、強い信頼関係があるのです。

量産車のSUBARU BRZでも、同じフィーリングを体感

デンソーイリジウムプラグといえば、気軽に交換することができる人気の高いアフターパーツです。この点について三木は、「量産車のSUBARU BRZ用には、 “イリジウムタフ”という製品をリリースしています。SUBARU BRZ GT300用のプラグと量産車用のプラグでは、耐久性の差こそありますが、着火性はSUBARU BRZの特性に合わせて設計されています。ですから、街乗りでもレーシングマシンと同じようなフィーリングを楽しんでいただけると思いますよ」と笑顔を見せます。

また、デンソーの製品はスパークプラグだけではありません。非常に多岐にわたっています。 「SUBARU BRZ GT300にはスパークプラグのほか、スロットルボディや圧力センサーも搭載されていますが、ベース車両となるSUBARU BRZには、エンジンECU・インジェクタ・メーター・エアバッグECU・スマートキー・エアコンシステム・ラジエター等々が多くの分野で弊社の製品が採用されています」 目に見えない部分からSUBARU BRZ GT300の走りを支えるデンソーのテクノロジー。今シーズン残りのレースでもその活躍にご注目下さい。