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NURBURGRING 24H RACE

TOPIC COLUMN

ニュルブルクリンク24時間レースに参戦するSUBARU/STIチームに関する舞台裏をお伝えします。
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2015.04.10

将来のため蓄積技術を解析し、再構築しました

「クラス優勝奪還」の旗印のもと、過去7年間のニュルブルクリンク24時間レース挑戦を通じてSTIが蓄積した技術の粋を集め、組み上げたのが「SUBARU WRX STI NBRチャレンジ2015」です。STI NBRチャレンジの真髄とも言えるこのマシンのシャシー技術について、STI車体実験グループの坂田元憲に聞きました。
― 今年のNBR車開発の取り組みは、今までに増して力が入っていますね。
坂田:そうですね。これまでは、経験に基づきその都度新設計された新たなメニューを評価しニュルで活用できるかどうか判断してきました。それがあったので、現地に着いてからおおよそコース上でクルマがどう動くは予想できましたるし、ドライバーから不満要素を聞けば、それの解消をどうするかもおおよそ目星がつくようになってきました。しかし今回は、そこからさらに一歩前進し、狙いを定めて段階的に設計し、ひとつひとつの技術の効能を可視化しようという試みを行いました。そのために富士重工業の専門部門のお力を借り、例えばSTIの核心技術のひとつである車体剛性についても、細部にわたって解析実験をおこなっています。そのひとつに四輪加振試験という剛性解析の方法があり、これを活用することで路面からの入力に対するボディ各ポイントへの伝達率を測ることができます。サスペンションのセッティングの値を調整したり、デバイスを追加することでそれがどう変化するかもわかります。これらの作業により実験の時間も情報も増えるので、処理するのは大変ですが、効果がはっきりするのでやり甲斐もあります。
今年のモデルの開発には、データ解析と性能の可視化に重点をおいたと説明しましたが、その理由としては、現地でのセッティングを行う際に活用できるベースデータの蓄積が挙げられます。もうひとつの理由として、開発経緯をきちんとデータとして記録し、今後の車両開発に活かす必要がありました。これまでNBRプロジェクトは、辰己総監督が長年の経験により車両を熟成してきており、その成果を定量化し活用できるようにしたわけです。辰己監督のノウハウ資産を可視化すると、改めて長年の経験がSUBARUの走りを支えていることが実感できます。
― それらはフレキシブルドロースティフナーなどのSTIオリジナルパーツについても効能が測れるということですね。
坂田:はっきりと効果が確認できます。クロスメンバーにひっぱりテンションをかけておけば、ステアリング操作をしようと思った瞬間に転舵が始まるというフレキシブルドロースティフナーの効能が、数値として理解できます。また、昨年のNBR車にも採用していましたが、フレキシブルドロータワーバーはステアリングの利きに効果があり、それをデータ上確認することができるので、今年のマシンはバーのマウント方法を変更して形状も変わりましたが、同様の効能を発揮することがわかっています。
― そのほか、昨年から改良・改善された点はどんなところでしょうか。
坂田:昨年はサスペンションの量産ジオメトリーを変えることなく車体姿勢を下げるという作業に時間と工夫を凝らしました。これはある程度狙った通りの効果を発揮しましたが、一方でアンダーステアが強くなったとドライバーから聞いていました。それは、車高を下げたためステアリングアームが適正位置で動作できないためとわかっていたのですが、クラッチハウジングとの位置関係もあり昨年は解決できていませんでした。しかし、今年のモデルは、そのハウジングを小型化してまでステリングアームの適正作動を実現しています。また、ブレーキ冷却については、国内テストではノルドシュライフェのブレーキングが再現できないため、2014年モデルは容量不足が指摘されていました。それを解決するため、本年モデルはフロントブレーキを大型化し、パッドやローターの耐摩耗性を向上させています。マスターシリンダーも変更したため、ペダルの剛性感も増し、直感的な利きも十分となっています。さらにブレーキローターのバックプレートに直接導風する方法をとっているので、ブレーキ温度管理も実施しやすくなりました。これらによって、昨年までレース中に一度はローターを交換しなくてはならなかったのですが、今年は無交換でいけるのではないかと思います。これらによってピット作業を短縮することができるし、リスクも回避することができるはずです。
― パートナー企業のご協力も欠かせませんね。
坂田:車体の中で唯一路面との接点であるタイヤは、パフォーマンスを大きく左右する要素です。パートナーとして様々なご協力をいただいているダンロップ様にも相当無理を申し上げました。これまでの使用状況や摩耗度などのデータを総動員していくつかのパターンを作り、私たちが目指すクルマにマッチするタイヤをリクエストしました。その結果、タイヤの構造やコンパウンドの変更で、非常に良いタイヤを作っていただきました。これまでより接地面積が広がり、走行テストでチェックしましたが、パフォーマンス面でも摩耗均一性の上でもより良い傾向が出ています。ダンロップ様とは長いパートナー関係を築いているので、蓄積したデータが活きたと思います。そのほか今年のクルマには、空力やパワーユニットにも大胆な改善が織り込まれています。これらの改善や新しい試みが、5月の24時間レースで開花することと信じています。

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