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2016.04.04

SUBARU WRX STI NBRチャレンジ2016、予選9分切りに挑戦

2016年仕様の「SUBARU WRX STI NBRチャレンジ」は、SP3Tクラス2連勝を果たすため、STIがこれまでにニュルブルクリンクで学んできた全てを投入し、さらにパートナー企業の知恵と努力に支えられ、性能向上に挑んでいます。既報の通り、開発段階でいくつかのアクシデントに見舞われましたが、当初意図した性能目標をひとつも犠牲にすることなく、マシンは改修され、4月後半にはニュルブルクリンクに向けて旅立つことになっています。2016年モデルの詳細と、現在の改修ステイタスについて、NBR車両の開発を指揮しているSTI車体実験部の坂田元憲に話を聞きました。
今年のクルマの最大の性能目標は何でしょうか。

坂田 先日富士スピードウェイで行ったシェイクダウンで発表した通り、徹底した軽量化と重量物の中心部配置による慣性モーメントの低減、空力デバイスのリファインにランスの最適化を最大の目標としました。これだけを見ると地味な性能向上メニューに見えますが、それは違います。規則によって今年からエンジン吸入エア量が制限されるため、エンジン出力は約20馬力程度下がってしまいますが、それを補ってさらにラップタイムを上げる課題に挑んでいるのです。22日のテストでクラッシュしてマシンは大きなダメージを負ってしまいましたが、パートナー様からの多大なご協力もあり、STIは再びクルマを仕上げる決意をしました。
出力が低下するのにラップタイムを上げるというのは、マジックのように聞こえるのですが。

坂田 いえ、そんな事はありません。細かい技術の積み重ねによって、理論的にはじき出した目標ですから、天候などの特殊な条件や外的要因がない限り、十分実現可能だと考えています。具体的には、2015年モデルの予選タイムが9分08秒037でクラストップだったのに対し、2016年は8分台のベストタイムを狙っています。
その実現のために先ほどの3点を重点的に改善した、ということですね。

坂田 はい、パートナー企業様、サプライヤー様にも私たちの厳しい要望を聞いていただき、驚くような結果を実現していただきました。例えば、ホイールは日本BBS様の努力によって1本あたり300gの軽量化を果たし、タイヤもファルケン(住友ゴム様)に構造からの見直しをお願いし、昨年の課題のひとつであった磨耗改善をクリアしながら1本あたり1kg近く軽量化していただいています。重量物である燃料タンクもカーボン材を多用することで軽量に貢献しています。またブレーキローターのバックプレートをカーボン化することで、左右で合計800g重量を減らしていますし、エンジン房内、室内への導風は取込口を後方化することでダクト長を最小限に抑えられるようホディ外板から取り入れることとしました。これだけで2kgも軽量化できました。フロントセクションに集まる重量物を徹底的に軽量化することで、慣性モーメントは目に見えて低減し、コーナリングスピードを稼ぐことに貢献しています。
空力バランスの改善も長年の課題でした。

坂田 空力コントロールについては、CFD解析技術の進歩が大きく影響しています。今回フロントグリルを覆い、導風ポイントを簡素化しましたが、ラジエータ冷却に必要な空気量を維持したまま、エンジン房内の乱流を減らすことで、全体のドラッグ(空気抵抗)を増やさず、グリップ確保に必要なダウンフォースを増やすという理想的なバランスを見つけることができました。元々富士重工業の解析専門家伝授の技術をSTIなりに咀嚼し、実戦で使える解析技術が身についたことが奏功していると言えるでしょう。リヤの大型ウィングスポイラーの形状やマウント位置も解析の結果導き出されたもので、コーナリング中の有効ダウンフォースの確保がタイムアップに直結します。
その他にも競争力を上げる工夫は盛り込まれてしますか。

坂田 ステアリングギア比を13:1にしたことで、よりクイックなステアリング操作をアシストしますし、駆動系の制御変更によってシフトショックを低減することでドライバーの負担を軽減したり、センターデフの制御ロジックを改良することで、ドライバーによるより細かな挙動コントロールも可能となっています。これらのメニューは、ラップタイムを縮めることにつながっていますが、これまでは速くなることは燃費の悪化をもたらしていました。しかし、先ほどお話ししたように今年はエアリストリクター径が絞られるため、出力が低下し燃費は改善する方向にあります。ラップタイムが速くなって燃費が改善されれば、ピットインの回数を減らすことができます。これにより、最多周回数を達成した昨年の総走行周回数の更新までもが実現可能な目標に入ってきます。
以上のように、NBR車2016年モデルにはSTIの大胆な挑戦が盛り込まれており、その性能目標はほぼ達成が確認されています。不運にも開発段階でアクシデントがあったマシンは、目下急ピッチで再生作業が進められております。SUBARU/STIは自信を持ってSP3Tクラス連覇達成に挑む所存です。SUBARUファンの皆様、是非今年のニュルブルクリンク24時間レースでの「SUBARU WRX STI VBRチャレンジ」の活躍にご期待ください。

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