NURBURGRING 24H RACE

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2018.10.20

「より快適なNBRカー作りを目指しています」・ パワーユニット開発担当エンジニアインタビュー

2019年ニュルブルクリンク24時間レースに備えた開発テストが既にスタートしているのは、既報の通りです。今回はNBRレースカーの心臓部であるエンジン周りおよびトランスミッションの開発を担当したふたりのSTIエンジニアに、今年の24時間レースを振り返り、今後の課題などのお話を聞きました。沢田拓也(STIパワーユニット技術部モータースポーツグループ主事)はエンジン周りの開発が担当で、上保政洋(STIパワーユニット技術部パワーユニット設計課主任)はトランスミッション関係の設計が守備範囲です。
MSM 沢田さん、今年のレース終盤のエンジンストップは肝を冷やしましたね。
沢田 本当に慌てました。既にご存知だと思いますが、キャピン内に配置しているECUを冷やすためフレッシュエア取入ダクトを引っ張ってきています。ドライビング中の室内温度が高くなるので、フレッシュエアのダクトを途中から分岐させてドライバーに向けていたのですが、その分岐点から雨滴がポタポタと室内に入り、ECUを濡らしたのが原因でした。ECUは高温になると不安定になるので、できる限り冷やしたいのです。しかも毎年のことなので、レースウィークに雨が降ることは想定していました。しかし、分岐点から雨滴がECUを濡らすとは想像していませんでした。もちろん既に対策済みですし、今後はECUケースを防水タイプに変更することを検討しています。(レースカーが)止まった場所がよかったのはラッキーでしたが、帰国後パブリッグビューイングを見ていた人たちにヒヤヒヤさせないで、とお叱りを受けてしまいました。
MSM 開発段階でのトラブルなどはあったのでしょうか。
沢田 エンジン関係では、実は開発段階では色々と細かい問題はあったのですが、その都度エンジニアの間で知恵をもちより、結果的には全て解決しています。しかし、エンジン以外も含めてデータロガーがロギングするデータは300近くものチャンネルがあるので、国内テストで見逃していたトラブル予兆データがあったのではないかと思います。10年以上ニュルに出場していると、経験値も増えてきているのですが、ロギングデータを細かくチェックすることもまだやりきれていないですね。そもそもトラブルを発生させない開発を行うためにはどうしたら良いか、それを考える必要もあると思います。
MSM 上保さんの領域ではレース中のトラブルはありましたか。
上保 私の担当しているトランスミッションでは、2018年向けのギアレシオのギアボックスが、QFレースで壊れてしまい、リタイヤの原因となってしまいました。現象的にはドグ歯が破損してしまったのですが、シフトショックを低減するためドグ歯の数をこれまでとは変えていました。変えたことが間違っていたわけではなく、開発途中のセットアップの問題だったことが、あとから見えてきました。ドライバーのシフトショック負担を抑え、レースで速く走るためのギアレシオが使えなくなってしまったのが大きな反省点です。クラッチのイナーシャを小さくする計画で進めていたのですが、、送り出し1か月前のテストでエンジンにダメージが入ることが分かりイナーシャを元に戻しました。パドルシフトにしたことで、ドライバー全員がクラッチを切らずに使えればスムーズになるはずなのですが、まだドライバーに駆動系を壊してしまうのではないかという不安が残っているため、ドライバーによってはクラッチを切る我慢の走りを強いてしまったところがあります。次のステップとして、それを解決する対策を考えています。
沢田 エンジンで言えば、ターボのピックアップがよくなり、エンジン性能の向上に寄与しました。一方で、それによってかどうかは判明していませんが、騒音規制に引っかかってしまい、ドライバーにはシフトアップ回転数を落とすとか、計測地点ではスロットルを戻すとかの負担をかけてしまいました。排気音量がこれまでより大きく変わったとは思わないのですが、レギュレーションブックをよく読むと現地での音量測定方法が細かく書かれていて、それに則して距離係数を補正すると、確かに規制値に近い音量数値レベルになることがわかりました。なので、STI群馬とサプライヤーのフジツボさんで、現在対策品を検討しています。何種類かの消音装置を試し、さらに現地で計測してみて性能に影響の少ないものを最終的に装着する方向になると思います。
上保 2017年のQFレースでエキゾーストマニフォールドが割れ、決勝レースは途中リタイヤだったため、24時間フルに走った実績になっていませんでした。そういう見方をすれば信頼性の確認はまだ見切れていなかったと言えます。その後国内のベンチテストでも距離を重ねてチェックしていますし、今年の24時間で使ったエキマニは、すでに始まっている開発テストでも継続使用し、ライフの見極めをしようとしています。
沢田 今後に向けては、メンバーが入れ替わることになるのですが、モータースポーツ現場が人を育てるのは間違い無いので、例えば設計担当エンジニアがクルマを触り、時にはメカニック的作業もせざるを得ないニュルは経験の宝庫ですから。とっても良いプロジェクトだと思います。いろんな経験ができます。新しい人がチームに入れば、心配事も増えますが、育てていくしかないですから。
上保 今年2年目の宮沢が今年はクルマの製作からチーム運営までを仕切りましたが、実は私も2年目なんですよ。2016年はギアボックスの準備しかしていなかったのですが、2017年から現場に行かせてもらっています。やっぱり現場でしかわからないことがたくさんありました。例えば、パドルシフシトのアクチュエータに関してですが、今年のレース中に潤滑不良を起こし、シフトできなくなるトラブルが起きました。原因を突き詰めていくと、その個体は新品でしたが、他のスペアとは異なり船で輸送したものでした。多分船の中で長時間運んだので、船中の湿度や温度変化によって、グリスが変質していたようです。新品なので安心して装着したものがトラブルを起こしたので、今後は新品であっても潤滑グリスなどはレース前にチェックする必要があると思います。
MSM NBRプロジェクトに関するおふたりの今後の抱負をお聞かせください。
沢田 私はどちらかというと、エンジン業務は別の若い担当者に任せ、チームを俯瞰から眺めて全体をコントロールすることに注意を払いたいと思います。例えば、トラブルがあるとみんなでクルマに群がり、問題箇所の特定を急ぐのですが、ディーラーメカの皆さんなどは少しヒヤヒヤする場面もありました。普段彼らは十分に冷えたクルマで作業に当たっていますが、ニュルでは走行直後の高温の状態で作業します。そんな動き全体をコントロールし、チームワーク良く、安全に効率的にチームを動かしていく必要があります。
上保 私も本職のトランスミッションの開発と並行し、新人が加わるので多少エンジンも含めて観られるようにしたいと思います。それから、快適に操作できるパドルシフトの熟成を進めることが私の課題です。

今後は、現在進めている車両個々の機能や形状の開発が一段落したのち、それらを2019年レース仕様にする車体改修作業に入ります。その後、再び走行テストが始まる予定となっています。

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