12月13日(木)・14日(金)の二日間、富士スピードウェイで2019年のニュルブルクリンク24時間レースに向けたSUBARU WRX STIの開発テストが行われ、今回のテーマである空力面、ホイールおよび制御系に関して大きく改善していることが確認されました。
テストは10度以下に冷えた富士スピードウェイで行われ、路面はおおむねドライながら、初日には雨も降ったことで、むしろ様々な試験が試されました。夏にスタートした2019年向けの車両開発テストを通じて、課題であった冷却対策と排気音対策はすでに11月までに解決しており、今回はボンネット上のエアスクープ、フロントフェンダーのスリット、ドラッグ(空気抵抗)の低減を狙ったリヤウィング形状などを試しました。
ニュルでの走行騒音計測方法を調べた結果を折り込み、サプライヤーのフジツボ技研と共同で作り上げたマフラーはしっかりと消音しながら背圧への影響はほとんどなく、エンジンパフォーマンスを損なわないことがすでに確認済みとなっていました。また、エンジン房内への導風や一部中央部分の下面パネルを廃止したことによる熱害対策も、ここまでですでに解決済みとなっています。
二日間のテストは、30分のセッションが計7本計画されていましたが、そのうち1回だけセットアップチェンジのためにスキップしたものの、合計3時間の走行マイルを積み重ねることができました。辰己英治総監督は、「前回までは今年の24時間レースを走りきったエンジンをそのまま耐久テストしてきましたが、今回は同仕様の新品エンジンに載せ替えたので、パフォーマンス面を含めてフレッシュになっていました。なので、ドライバーのフィーリングもとても良かったです。空力面もまだ少し課題は残るものの、ドラッグを減らしてスピードを求めるという当初の狙いが良い方向に来ていることがわかりました。富士のストレートにおける最高速も、夏からのテストでは最も速いスピードが計測されています。年内のテストはこれで終了ですが、トランスミッションの2019年用新ギヤ比が完成したのち、2月には再び開発テストを再スタートしたいと考えています」と語っています。
また、今回はBBSホイールのご協力のもと、これまでのマグネシウム14本スポークホイールから、新たに10本スポークのアルミホイールに変更し、テストしました。固いものから柔らかいものへの置換は一見ステップバックのように感じますが、「ホイールの剛性を下げることでタイヤの接地性をあげることが目的なので、それに関しては良い結果が出ていると思います。タイヤとのマッチングが大事なので、まだタイヤにもホイールにも改善の余地はあると思いますが、手応えは十分感じました」とドライバーの井口は語りました。
一方、今回、最新の仕様にアップデートしたECU(エンジン制御コンピューター)をテストしました。「データ処理速度が速くなり、シフトフィーリングもスムーズになっているはずです。ドライバーも別のクルマに乗っているみたい、と言っています」と辰己総監督も話しています。「今回のテストは、これが最もポジティブな結果をもたらしたものだと思います」。ドライバーの山内英輝も、「ECUの変更が最も印象的でしたね。クラッチミートも驚くぐらいスムーズで、長時間のスティントを考えると大きい変化だと感じました。早くニュルで試してみたいですね」と、新しいECUについて語っています。また、「チームがセンターデフの調整も進めてくれていて、タイトコーナーのプッシュアンダーが減り、FRのような動きができるようになりました。いろんな部分で改良が見られたので、実り多きテストだったと思います」と続けました。
改善の手応えを得て、STIによるNBRレースカーの年内の開発テストプログラムはこれにて終了。来年2月には、また最新の進捗状況をお伝えできる予定です。本年もご声援ありがとうございました。