NURBURGRING 24H RACE

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2018.08.30

2019年NBRプロジェクトはすでに進行中

5月第2週に行われた2018年のニュルブルクリンク24時間レースから早くも3ヶ月半が経過。NBR出場マシンのWRX STIは、すでに群馬県太田市にあるSUBARU群馬工場内のSTI工房に戻ってきています。このレースカーを眺めながら、辰己英治STIチーム総監督に話を聞きました。また、車両エンジニアの宮沢竜太も同席しています。
NBRマシンがここに戻って数週間経つと聞いています。改めて今年のレース後気付いた点などはありますか。

辰己 「色々とトラブルのあった今年のレースを振り返り、すでに改善点の洗い出しを始めています。例えば、フロントのアンダーカバー。エンジンが止まってしまったレース終盤に、メカニックが寄って集ってエンジンルームを覗き込み、数人がかりで必死にアンダーカバーを外しましたが、それをもっと簡素化できないのかと考えました」

宮沢 「そうなんです、フロントアンダーカバーはなんと13箇所で留めるようになっていて、しかも車載ジャッキでリフトアップしたのち、さらにリジッドラックをかけるために2段階で車高を上げないと、一番奥のボルトは外れません。このアンダーカバーはレース中以外にもかなりの頻度で外す必要があるので、留め方を簡素化したらサービス性は上がります。ジャッキアップしただけで手が入れられて、ボルトが外せればそれだけで数分作業を縮めることができます」

辰己 「よく考えてみると、ボルト4箇所で充分なんです。それを設計部門に話し、対応してもらうことになっています」
それってもう来年のための準備ですよね。もう来年のNBRプロジェクトはスタートした、と考えていいんですね。

辰己 「最終的には経営判断となりますが、私たちとしては、進められる準備は進めています。8月末には風洞実験を実施する予定ですし、国内サーキットでの走行テストも計画しています。NBRプロジェクトは、STIがSUBARU車でコンプリートカーを継続開発するためには外せない両輪のプロジェクトですし、STI技術者たちの経験やスキルを上げるため、クルマを深く理解し安全に速く走らせるアイディアを生み出すために必要なことなのです」
それを聞いてSUBARUファンは安心すると思います。次のSTIコンプリートカーを心待ちにしている方達にとっても歓迎されると思います。

辰己 「NBRは10年出場し続けていても、毎回新たな発見があります。そういう意味ではアイディア創出の宝庫なんですよ。今年も色々ありましたから。一例として、今年のクルマはトレッドを広げたことで、タイヤへの攻撃性を高めてしまったこと。センターデフのセッティングを調整したり、ブレーキバッドの材質をソフトなものにするなどで症状は収めましたが、富士でのテストでは起きなかった、NBRのグランプリコースで走っている間は発生しなかったのに、なぜノルドシュライフェでそれが起きたのか、をずっと考え続けきました。それは路面のμの差なんですが、それがなぜ事前に予見できなかったのかを考えると、国内テストでも示されていたはずの小さな予兆を見逃していた可能性があるんです。それを解決して本来のサスペンションの動きを取り戻し、念願の予選9分切りを実現するためには、ある部分の設計を見直す必要があることがわかりました。そのためには、直接関係ないように思われるかもしれませんが、ホイールの剛性をBBSさんに依頼して変えてもらったりもしています。そんなことを宮沢のような若いSTIエンジニアらの目の前で、答えを見つけていくこと。ここが重要だと思います」

宮沢 「ものすごく勉強になります。辰己さんは、寝ても覚めてもNBR車のことを考えているんです」
そのほかの準備はどんなものがあるのでしょうか。

辰己 「来年のNBR24時間は、6月末に開催されることになっています。つまり暑い時期のレースになるはずです。なので、エンジン房内の冷却、コクピット内への効率的な導風などを考える必要があります。そのためにまず、現在フロアのほとんどを覆っているフラットパネルを部分的に外し、プロペラシャフトに直接風を当てようと考えています。フロアトンネルの中を熱源であるマフラーが寄り添うように通っていますし、その真上の室内にはやはり冷却しておきたい燃料タンクがあります。しかし、フラットスペースが減ることで、ベンチュリー効果が減りダウンフォースが不足する可能性もあるので、フロントフェンダー上にもエア抜きダクトを設けて、走行中のタイヤハウスの内圧を下げてフロントリフトを減らそうとか、リアウィングの断面形状を変更し、効率的にリヤのダウンフォースを得る改善も施します。ボンネットの上から積極的にエアを抜く工夫も入れますし、タービンを直接冷やす導風パイプも新設します。その辺の冷却と空力性能のバランスを、早めに調整しておきたいと考えています」
だいぶ準備は進んでいるようですね。

辰己 「現在私たちでリストアップした改善点は、まだお話しできないものも含めて車体だけで18点ほどあります。それを設計担当に提案してあり、彼らもコンプリートカーや商品開発の時間を縫って作業を進めてくれています。そのほかにも、今回マフラーの音量オーバーでドライバーたちにフラストレーションを与えてしまいましたので、サプライヤーのフジツボさんに相談し、より効果的な消音対策を考えています。唯一路面と接するタイヤも大変重要な要素なので、住友ゴムさんにも来年のコンディションを予想して、対応温度レンジを調整したタイヤの供給を求めています。やるからにはドライバーもメカニックやエンジニアも含めて、みんなが力を出し切れる状態にしてあげたいですよね」

2019年のニュルブルクリンク24時間レースは、6月22日午後にスタートすることがアナウンスされています。

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