NURBURGRING 24H RACE

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2022.07.14

2022年NBR24時間レースを振り返る

24時間レース半ばでリタイヤという結果から早くも1ヶ月半が経過した7月中旬、STI三鷹オフィスにてSUBARU/STI総監督の辰己英治とチーム監督の沢田拓也のふたりに、2022年ニュルブルクリンク24時間レースの振り返りを聞きました。
冒頭、辰己総監督は、「あのクラッシュについては、左フロントのハブとサスペンションアームを繋ぐボールジョイントが疲労破断したことによるホイールのバーストが直接原因です。現在は当該部品を製造メーカーに送って解析してもらっている最中ですが、結果的に同部品の強度が不足していたことに起因するアクシデントに間違いはありません。クルマの全体を預かる私の責任です。期待されていたSUBARUファンの皆さん、サポートしていただいたパートナーの皆様にはお詫び申し上げます」と話し始めました。「あの部分は、サスペンションの上下動、進行方向や制動時の前後方向、ギャップ乗り越えやジャンプ着地時の瞬間的入力、タイヤの踏ん張りに対する横方向の力などが集中する部分であり、サイズアップした強化品を装着していましたが、その許容範囲を超えたために起きたことと考えられます。発生状況から疲労破壊が主因であり、ドライビングミスでも、整備ミスでもなく、明らかに車両側の問題だったことが判明しています」と続けました。「ボールジョイントは結構フリクションが大きく、新品のままだと動きが渋いのでドライバーが不満を訴える部分でもあります。そのため、ある程度距離を走り当たりのついた部品を組み込むことが習慣になっていました。そんなこともあり、QFレース終了後に新品に変えておこうとしなかったのも油断だったかもしれません」。
クラッシュした場所は、長い下り坂を最高速レベルで下ったのちの左コーナーで発生しました。辰己は、「データを見ると、245km/hでクラッシュしています。しかし、孝太は左フロントの破損ショックの直前にスロットルを戻しており、本能的に異常を感じたのかもしれません。その後フロントをヒットし、ガードレールにも当たっていますが、幸いなことに路面は上り坂に変わっており、コントロールを失った車両のエネルギーを大きく減衰したと考えられます。最高速レベルでクラッシュしたものの、ドライバーの孝太に怪我なかったのは不幸中の幸いでした。8年ぶりのチーム復帰だったので、孝太のこのレースにかける思いは並々ならぬものがあったと思います。そんな彼に怖い思いをさせてしまったことは大変申し訳なく思っています」と話すと、沢田監督は、「デメカ(SUBARUディーラーメカ)の皆さんもやっとの思いでNBRチームに参加することができ、先輩達と同様にクラス優勝の喜びを味わいたかったに違いありません。彼らも残念だったと思います。しかし車両のダメージも大きく、その時点でバーストに至るメカニズムも明確ではなかった事から、これ以上の走行は危険と判断しリタイヤを決断しました」と語っています。
さらに辰己総監督は、「しかし、収穫もあったのは事実です。80kgも車重が増えていながら、スピードを維持できたことがまず挙げられます。これは、タイヤ幅拡大の条件としてレギュレーションで最低車重増が定められていますが、それを積極的にフレーム補剛に使えるチャンスだと捉えました。80kgの重量配分としては、フロントに36kg、リアに44kgであり、バランスの良い補剛ができたと思っています。ラップタイムを見る限りこれは正しい判断であり、今後のクルマ作りに活きてくると言えるでしょう。
一方、車重増とタイヤのサイズアップによるタイヤ内圧管理やスプリング定数セレクトの難しさという課題もありました。アンジュレーションやジャンプなどのある北コース(ノルドシュライフェ)でしか再現できない課題であり、ここからも新たな学びが得られました。次世代につながる良い機会だったと思います。SUBARU/STIでは、今後もNBR活動を通じて技術開発や人材育成に尽力していくつもりです」と続けました。沢田監督も、「今回は、本来の業務であるチーム運営だけでなく、感染症対策や不安定なロジスティック手配などの追加要素もあり大変でしたが、何よりも3年ぶりの参戦が実現できたことが最もよかったことだと思います。レギュレーションやピットインタイムルールの変更などで戸惑いもあり、当初は乗り遅れ感を覚えましたが、ここでも継続参戦の重要性を実感しました。それらも含め、またしても得難い経験ができたと思います」と締めくくりました。
今年のNBR24時間で起きた苦い経験は、必ずや今後のSUBARU/STIのモータースポーツ活動に活かされることでしょう。
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