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2023.04.24 - ニュルブルクリンク24時間レース・事前レポート
NBR予選レース2は総合25位、SP4Tクラス優勝

RACE REPORT

ニュルブルクリンク24時間レースに向けた予選レースウィークの最終日、4月23日(日)は夜明けから曇りがちながら時折日差しが覗く天候となりました。午前8時15分時点の気温は11℃、路面温度は10℃でした。コースはまだらにウェットパッチが残る半ドライ状態で、1時間30分の公式予選2がスタートしました。SUBARU/STIチームのトップランナーは、山内英輝です。このセッションのプランは、山内2ラップ、井口卓人1ラップの順に計測ラップを走ったのちティム・シュリックに繋ぐ形で、路面がドライになれば終盤スリックタイヤでのアタックも視野に入れています。それぞれ、路面を確かめながら周回。最初に走った山内は、「僕が走っている時は、まだオールドコースはウェット路面が多く、昨日の方がまだ良かったという感じでした。北コースは木が覆っていることが多いからだと思います」と語っていますが、総監督の辰己英治によると、「それでも山内は、全体の15〜16番手のペースで走れていました」とのこと。
アンカーのシュリックは、1周をレインタイヤで走り、次の周にピットインしてスリックに履き替えてコースに戻りました。その頃にはコースはほとんどドライとなっており、シュリックはスリックのベリーソフトタイヤを要求します。サスペンションのセットチェンジを経て、残り時間15分で再びコースインするとアタックラップを開始しました。しかし、運悪くラップタイムが近いTCR車両がSUBARU WRX NBR CHALLENGEマシンの直前に入り、中々先行させてくれません。そのため、ラップタイム更新は叶わず、公式予選2を終えることとなりました。決勝レース2は、午後1時スタートですが、予報によると3時過ぎにまたしても降る可能性があるようです。#114号車SUBARUは、総合24番手からのスタートとなります。
空には雲が静かに流れる怪しい天候ではありましたが、前日同様ルマン式スタート形式で各車がグリッドについた12時半過ぎは、路面は全面ドライコンディションでした。#114号車SUBARU WRX NBR CHALLENGEは、井口がスタートを担当します。グループ1に続き、午後1時過ぎにはグループ2にもグリーンフラッグが提示され、レースはスタートしました。実力伯仲のトップグループは、コース幅が狭くなる第1コーナーに一斉に突入したため、#114号車は他車のボディにタッチしたようです。軽い接触だったため、自車のダメージはほとんどありません。すぐ後ろにはTCR車両がぴたりと付き、前方にはコーナーで追いつくカップカーに挟まれており、中々オーバーテイクのチャンスは訪れませんが、良いペースで周回を重ねています。
午後2時11分に井口はピットインし、山内に交代。その直後には雨粒が落ちてきます。しかし、それは長続きせず、路面を濡らすほどではありませんでした。その頃、エンジンの水圧が上がる兆候がみられたため、チームは山内に少し早めにシフトアップするよう指示。その後は兆候が落ち着いたようです。回転を落としての走行となりましたが、山内はその状態ながら8分55秒579のベストタイムを記録しています。レースが2時間を経過したのち、シュリックに最後のステアリングを託します。彼も回転を落とした状態で8分58秒台のベストラップを刻みました。一旦午後4時15分頃ピットインし、シュリックのまま再スタートすると、再び雨が降り出し、次第に強くなっていきます。シュリックは再度ピットに入り、カットスリック(スリックタイヤに排水溝を手切りしたタイヤ)で再スタート。彼は、滑りやすい路面に苦慮しながらも、なんとかコース上にとどまり、午後5時過ぎに無事チェッカーフラッグを受けました。周回数は25周でした。
辰己総監督は、「全くの新車を持ち込みましたが、なんとか”運転が上手くなるクルマ”に近づいてきたと思います。課題は、ウェット状態のタイヤ空気圧管理などがありますが、3名のドライバーが全員8分台で走ることができたし、クルマそのもののメカニカルトラブルはありませんでした。エンジンの水圧に関しては、他にエンジンに影響のある兆候がないようなので、冷却経路の再チェックとともに、水圧センサーを疑ってみることも必要だと思います。来月の24時間レースに向けて、なんとか良い状態で予選レースを終えることができたと思います。
日本で結果を心待ちにしているSUBARUファンの皆さんには、ぜひ24時間レースもご期待いただきたいと思います」と語っています。また、チーム監督の沢田拓也は、「新しいメンバーがチームに参加し、クルマ自体も完成してからの日数が浅いので、予選レースに加えてNLSレースにテスト出場する計画を立てましたが、それはやはり正解でしたね。先週のトラブルが今週起きていたら、対策できたとしても24時間までに検証する時間がありませんでしたから。まだ完全というわけではないので、見落としがないようにクルマは徹底チェックすることになります。それでも来月のレースには参加していただくディーラーメカニックのみなさんには、お任せできるレベルに仕上がってきていると確信しています」とまとめました。
2023.04.23 - ニュルブルクリンク24時間レース・事前レポート
第1レースは総合29位クラストップ完走

RACE REPORT

4月22日(土)は、朝から青空に恵まれ、気温は17℃まで上がりました。コースサイドの日向でレースカーを待っていると、汗ばむほどです。この日は、朝10時からグランプリコースでフリープラクティスが行われました。4年ぶりにニュルブルクリンクを走る井口、山内が先に走り、先週のNLSを走っているシュリックにバトンタッチしました。クルマにとってもドライバーにとってもまさにウォームアップとなったプラクティスですが、SUBARU/STIチームは90分の走行枠をフルに走らずに走行を終了しています。このプラクティスフィニッシュの一時間後に予定されている予選1回目で初めてフルコースを走るので、そちらの準備を優先しています。ちなみに、先週のNLSレースとは異なり、このQFレース週はフルコース25.378kmで競われることになっています。
予選1回目は、完全ドライコンディションで行われました。しかし、セッションタイムは60分しかなく、3名のドライバーはそれぞれ最低1周は計測されなければ決勝レースに進めません。トップランナーのシュリックが1周、続く山内も1周、最後に井口は2周計測する、という計画で予選はスタートしました。まずはグランプリ(GP)コースを1周してホームストレートに戻るとそこから計測開始で、フルコースを1周回った後コントロールラインを通過した時点でタイムが確定します。その後GPコースをまわったのちピットインしてドライバー交代するまでが、計測1セットとなります。シュリックは、「ところどころトラフィックが妨げとなったけど、9分02秒のタイムには満足しています。フレッシュタイヤでたった1周しかしてないですから。昨年のクルマでも感じたけど、タイヤ幅が広くなったことがステア特性にもプラスに作用していると思います。トラフィックが空いていれば、8分55秒くらいまでタイムを削れるんじゃないかな」と語っていました。先週のような冷却水が溢れるようなトラブルは兆候すらありませんでした。続く山内は、グランプリコース内でダブルイエロー区間があり、フルアタックが叶いません。ラストの井口は、2周目に8分58秒を記録。チームの念願のひとつであった予選9分切りは、あっさりと達成しています。辰己総監督は、「最もスピードが乗る地点で、昨年のクルマより10km/hほど車速が速いので、フルブレーキング時の路面タッチが少し気になります。なので、ディフューザーの取り付け位置を少し上方に変更し、車高も少し上げてサスペンションは硬めにしてみます」と話していました。ここまではとても順調です。
予選が終了した午後1時半から長いインターバルを経て、レース1は午後7時30分にスタートしました。夕方から雲が上空を覆うようになり、午後6時過ぎには雨が降り出しました。時に激しく1時間ほど降ったのち、一旦小康状態となっています。その間に第1レースに出場する61台は、ルマン式スタートの位置についています。気温は11℃、路温も13℃と低めの中、114号車WRX NBR CHALLENGEは、シュリックのドライブでフォーメーションラップに向かいました。コース上はまだほとんどの場所がウェットのままです。そして、午後7時30分にSP9クラスのグループ1がスタート、数分後にグループ2がスタートしました。114号車はクラス2の7番手スタートです。各車は大きな水飛沫を上げながら、クリーンスタートを決めました。隊列がオールドコースに差し掛かると、時折シュリックの声が無線から聞こえてきます。「リアタイヤグリップがなく、ひどいオーバーステア状態です。危なくてレースにならない」とのコメントを何度か訴えています。チームは、2周終了時にピットインさせ、タイヤの内圧を下げ、ショックアブソーバーの減衰力を弱める作業を行いました。合わせてリアウィングを1ノッチ立てて、リアタイヤへの荷重を上げる対策を施しています。それでもシュリックは、再走後もリアタイヤの横滑りに悩んだ様子です。次の周には予定通り山内で交代。雨が止んでしばらく経つため、コース上のレコードラインは乾き始めているようです。山内も計画通り3周でピットインし、アンカーの井口に繋ぎます。山内も、「リアタイヤに熱が入らない、とてもコントロールが難しいです」と語っています。井口は、さらに内圧を下げたレインタイヤのまま4周を走り抜き、SUBARU WRX NBR CHALLENGEにとって最初のレースフィニッシュを迎えました。
辰己総監督は、「心配していたエンジン関係は、何も問題がなく、水温も水圧も全く異常なしでした。タイム的には、61台中20番手前後で走ることができていましたので、それが現時点ではこのクルマの実力だと考えられます。SP4Tクラストップはもちろん、上位クラスのSP8Tをも凌ぐパフォーマンスが発揮できています。唯一の課題は、ウェットでのタイヤ内圧管理でしょう。富士で最適だった内圧では、このコースでは発熱しないので、さらに内圧を下げる必要があるようです。それがはっきりしたのが今日の収穫でしょうか」と語っています。
明日最終日は、午前8時15分から90分間の予選2があり、4時間の決勝レースは午後1時スタートとなります。
2023.04.22 - ニュルブルクリンク24時間レース・事前レポート
2023 NBR QFレース始まる

RACE REPORT

4月21日(金)午後、この日の朝まで人影がまばらだったニュルブルクリンクサーキットのパドックには、秩序良く大型トレーラーが搬入され、レース前日らしい風景となってきました。5月の24時間レースに向けた予選レースには、総勢61台のレースカーが出場します。
サーキットに近いアーデナウの街中にあるガレージで整備を受けたSUBARU WRX NBR CHALLENGE 2023は、この日トレーラーに乗せられ、サーキットのピットボックスNo.13に移動しました。テスト参加した先週のNLSレースで水漏れが発生し、レースがフィニッシュできなかったことについて、SUBARU/STIチームの辰己英治総監督は、「水漏れの原因が正確に判明しているわけではないですが、エンジンを下ろしてチェックすると本体には何も異常はありませんでした。走行中のデータをみても性能低下はみられず、肝心な冷却水の温度変化にも異常はないんです。とすると、冷却経路の樹脂製パイプが変形して一時的に流れにくくなり、冷却水が溢れたのかもしれません。配管を再チェックし、走行中に変形する可能性のある箇所に補強をいれるなどして対策を施しています」と語っています。冷却水が溢れるのは、オーバーヒートして湧いてしまうか、エンジン内部のウォータージャケットの一部にクラックが入ってそこから漏れる、ということが考えられますが、水温は異常上昇するか、溢れた水にエンジンオイルが混じる症状が見られるはずです。今回はいずれでもないので、エンジン本体が原因ではないと言えるでしょう。
ピットガレージで外してあったノーズやアンダーカバーなどを装着し、車検に進みます。出場台数が少ないので、待機時間も少なく、計量や各部の作動チェックもスムーズに進行し、WRX NBR CHALLENGEは特に修正指示を受けることもなく無事に通過しています。これでクルマ側の出場登録は完了です。ニュルのピットボックスは、24時間レースの場合4〜6台でシェアすることになりますが、今回はなんとSUBARU/STIが1台で占有することになりました。いちいちピット裏のトレーラーからタイヤを運ぶことなく、全てピット内に積んでおくことができます。レース中のピットインや給油で他チームと交錯することもなさそうです。そうこうするうちにドライバーが集まってきました。SUPER GT岡山ラウンドののち、当地に飛んできた井口卓人、山内英輝に加え、地元ドイツのティム・シュリックが顔を揃えました。4年ぶりの再会です。24時間ではカルロ・ヴァン・ダムを加えるラインアップとなります。
チェックインに向かうドライバー3名の写真を撮りましたが、山内の笑顔はいつになく弾けています。なぜならば、エントリーしているドライバーの中から抜き打ちで行われる「Eラーニング」試験の指定が、今回は山内に回ってきました。Eラーニングとは、ニュルブルクリンク特有のドライバー試験で、英語で書かれたレースルールに関する質問に選択式回答で答えなければならず、突然回ってきた指名に驚いた山内は数時間の間に必死に問題集に取り組みました。その甲斐あってか、複数のドライバーが同時に受ける試験では山内が最速で合格となったようです。「これに落ちたらレースに出場できないと聞き、本当に緊張しました。井口選手が協力してくれて問題理解をしっかりやってはいましたが、緊張でまだ手が震えていますよ」と山内。その後3名は、装備品やライセンスなどのチェックを受けるチェックインを済ませ、明日22日の走行スタートを迎えるばかりとなりました。
22日は、午前10時からフリー走行が始まり、その後12時30分から1時間の予選があります。長いインターバルを経て2時間の第1レースは、午後7時半にスタートとなります。夕暮れのレースとなり、後半はナイトコンディションになるでしょう。
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