

ニュルブルクリンク24時間レースに向けた予選(QF)レース二日目。相変わらず雲が多く気温は低いものの、あたりは乾燥しています。しかし、この日5月24日(土)は夕方から降雨の予報となっています。場合によっては、ドライコンディションはこの日午前の予選のみ、ということも考えられるため、SUBARU/STIチームは早めにドライでNBRマシンを走らせ、日本からの持ち込み仕様をチェックしておく必要があります。

今回のQFレースには、108台が参加しています。そのうち、88号車SUBARU WRX NBR CHALLENGE 2025が属するSP-4Tクラスは2台となっており、ライバルは8号車フォルクスワーゲンビートルです。午前10時からの公式予選が始まると、まずはグランプリ(GP)コースを5周し、新品ブレーキに焼きを入れます。その後、久保凜太郎がGPコースを1周してピットインし、ティム・シュリックに交代しました。ニュルでは、GPコースを1周してコントロールラインを通過したら計測開始となります。また、計測後は再びGPコースを回ってからピットインすることが認められています。1周全長25kmのコースのための時短の措置です。ドライバーの最初のインプレッションは、「クルマはとても良いです。ただ日本でテストした時の印象と少し変わっている気がします。少し強めにアンダーステアを感じますね」(久保)、「タイトコーナーのターンイン時にはアンダーを感じるけど、出口は問題ないと思います」(シュリック)、とのこと。

その後シュリックがフルコースを2周、久保が3周してセッションを終了しました。7周のベストタイムは、シュリックがフレッシュタイヤでマークした8分50秒689でした。これは、昨年の24時間レース公式予選で記録したタイムを上回るものです。この記録は総合で32位、クラス首位であり、上位クラスのSP-8T合計7台の間に割って入る形となっています。SP-8Tクラスには、BMW M4 GT4 EVOやGRスープラGT4 EVOが属しています。また、ユーズドタイヤで3ラップを走った久保も8分53秒台を出していました。シュリックは、「今日の予選の目的は、24時間を走るためのセットアップがメインでした。全体のバランスは悪くないです。僕は3周走り、後半はニュータイヤでアタックしましたが、カルッセルで遅いクルマが前方に居たのですが、オーバーテイクの瞬間に僕の方に寄って来て、あわやというシーンがありました。ワーッと大声で叫んでしまいましたよ。今日のレースはあいにくの雨ですが、24時間レースを考えれば雨対策はしっかりしておきたいところです。何よりもSUBARU AWDとのダンスを楽しみたいと思います」、とジョークを交えて話してくれました。午後3時過ぎには、予報よりも早く雨が降り出しました。
沢田監督は、「正直、(予選のベストラップタイムは)もう少しいけるかな、と思っていましたが条件がパーフェクトではなかったようです。クルマは概ね問題ないのですが、二人ともアンダーステアをコメントしていますね。走り込んで慣れていくとあまり気にならなくなるかも知れません。オイルクーラーに水漏れがあったので、新品に交換して今日のレースに臨みます。国内テストで数1,000km走った個体なので、ライフの限界だったのかも知れません。第1レースは凜太郎スタートで行きます。天気予報では、徐々に雨量が少なくなっていくらしいです」。

午後5時10分に第1グループからフォーメーションラップをスタートしていきます。88号車SUBARU WRX NBR CHALLENGEは、第3グループのポールポジションからレースをスタートします。この場所は、もはや定位置となった感があります。そして午後5時10分、水飛沫をあげて第1グループがスタートしていきました。それから約5分後に第3グループもスタート。「タイヤが発熱しないので、グリップがないです。ペースを落としたいけど、そうすると第3グループに飲み込まれてしまうので頑張っています」、と久保は無線に向かって話しています。スタートしてから間も無く、トップグループにいるはずの33号車ファルケンポルシェがクラッシュ。ピット前で修理している様子がモニターに映っています。第3グループ先頭の63番手からスタートした88号車WRXはAWDの強みを活かし、4周目で早くも45位にまで順位を上げています。その後、1時間半が経過し午後7時過ぎに
7周を終了して久保はピットイン。この時の順位は総合24位となっています。しかし、久保はピットロードに入らずそのままGPコースを回ってピットに戻ることに。

これによってタイムをロスするものの、総合37位でシュリックに交代しました。「タイヤが発熱せず、ずっとグリップしませんでした。少し雨量が減って温度が上がったかと思えば、コード60(時速60km/h規制のイエロー区間)でまた冷えるのでずっとクルマのコントロールと戦っていました。これまでで一番怖いレースでした」、と久保は語っています。交代したシュリックも、姿勢のコントロールに苦慮しているようで、1周目に再びピットに戻っています。「リアスタビをはずして欲しい」、とのことです。その作業中にエンジン担当はラジエターやインタークーラーにガムテープを貼ってオーバークール対策を行います。コースに戻ったシュリックは、「リアの束縛を緩めたので、コーナーは走りやすくなった。ストレートではちょっとストレンジな感じだけど問題ない」、と返答しています。
午後8時半を過ぎたあたりから雨量は減り始めました。コース状況もやや好転している様子です。最後のスティントを久保に託したシュリックは、「とにかくタイヤがグリップせず、難しい状況です」、と言っています。久保は内圧を上げたタイヤで出ていきました。ところが、「路面の水の量が減ったことで、タイヤが張り過ぎていて跳ねるような感覚があります」、と言ってピットインし少し内圧を下げることを決断。残り約30分を走り切ることになります。また、レースが終盤に向かうに連れ、トランスミッション4速ギアの「鳴き」が大きくなってきたと久保は伝えて来ましたが、3速や5速は問題ないので、4速を労りながらの走行となりました。

あたりにようやく夕闇が迫る9時半を迎え、ホームストレート上でチェッカーフラッグが振り下ろされ、レースはフィニッシュとなりました。総合優勝は16号車ポルシェ911 GT3R(992)です。88号車は20周を走破し総合28位完走を果たしました。沢田監督は、「雨の中、セッティングやタイヤのウォームアップには苦しみましたが、他車も同じように苦しかったはずです。他に最適解はあったかも知れませんが順調に走れたし、後半は色々と試して明日や24時間レースに向けての確認が出来たのでよかったです。ギアの異音が大きくなっていったようで、チェックして調整しておきます。明日のレースも頑張ります」、とコメントしました。
明日最終日は午前8時15分から90分間の予選があり、トップクォリファイを経て2回目の決勝レースは午後1時にスタートする予定です。