
4月26日(土)・27日(日)、鈴鹿サーキットにてENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE第2戦「SUZUKA 5時間レース」が開催され、Team SDA EngineeringからST-Qクラスにエントリーした61号車「SUBARU High Performance X Future Concept」(伊藤和広/山内英輝/井口卓人/花沢雅史)は112周を走破し、今季初出場ながら同クラストップでチェッカーフラッグを受けました。

3月の開幕戦もてぎラウンドをスキップしたチームは、カーボン素材で成形したリアドアの投入などで約30kgの軽量化を施したSUBARU Hi-Perf Xを持ち込みました。占有走行枠が組み込まれた木曜日、金曜日のテスト走行からトラブルフリーで周回を重ね、ドライバーとエンジニアは力を合わせてセットアップを進めます。レースウィークの三重県地方は気温20度前後の春らしい穏やかな天候となり、陽気に誘われた観客が見守る中、土曜日の公式予選を迎えました。Aドライバー予選は、昨年同様SUBARU社員ドライバーの伊藤がタイムアタックします。伊藤はライバルの55号車MAZDA SPIRIT RACING 3をドライブする寺川和紘とのマッチアップです。MAZDA3も空力のアップデートに加えシャシーの性能改善も盛り込んでいる様子です。結果は、0.1秒およばずでしたが、伊藤の力強い走りには注目が集まります。その後Bドライバーのマッチアップでは61号車山内が55号車の井尻を引き離し、61号車は初のクラスポールを獲得しました。

決勝レース日も、朝から快晴に恵まれました。日向にいると汗ばむほどです。今回は5時間レースのため、朝10時15分過ぎにはスタート進行が始まり、各車はフルコースを一周してスターティンググリッドにつきます。今回は出走台数52台を2グループに分けてスタートとなるため、61号車はST-Xクラスなど速い車両で形成されるグループ1に属しています。12列目の24番グリッドがスタート位置に指定されました。午前11時にフォーメーションラップがスタートし、11時03分にはグリーンシグナルが点灯し、各車クリーンスタートとなりました。序盤は何事もなく進行しましたが、45分後には早くもシケインでクラッシュする車両があった為、FCY(フルコースイエロー)が発動されます。この時は5分後にはグリーンフラッグが提示されてレースは再スタートしますが、その後も少し間隔を空けて何回か、FCY発動が連続しました。

61号車のスタートドライバー井口は、その間にFCY中の速度超過が記録されてドライブスルーペナルティが課せられます。ポストとポストの間の平均速度で違反を検知する仕組みの為、50km/hを守っていてもタイミングによっては速度超過が報告されることがあるのかもしれません。それでも井口はクラストップを守ってセカンドスティント担当の伊藤にバトンタッチしました。このピットインで55号車に先行を許すことになります。ここまで2台のペースは互角でしたが、55号車の3番手ドライバーが周回している間に、61号車3番手山内は猛然と追い上げて差を縮めていきました。あと少しでオーバーテイクというタイミングで55号車はピットイン。難なくクラストップの位置に浮上しました。しかし、最終ランナーの花沢に交代する際に再び55号車に先を譲ることに。お互いノートラブルで周回をしていたのでこのままチェッカーか、と思われましたが、55号車が最終ラップにコース上でストップしたため、61号車がクラストップでフィニッシュラインをクロスすることになりました。

チーム監督兼チーフエンジニアの伊藤奨は、「結果的にレースはうまくいきましたが、クルマ作りに関しては決してうまくいっていないので、そこが課題です。現状はリアの安定性が勝ちすぎていてアンダーステアが強い状態なので、少しリアを弱くして曲がるように対策しましたが、ドライバーによっては不安定に感じてしまう。リアはそのままフロントを上げたいのですが、なかなか上手くいきません。次の富士24時間には、有効な手立てを考えなければいけません。世の中ゴールデンウィークですが、なんとか5月9日の富士24時間レースに向けた公式テストに解決策を用意したいと思います」、と語りました。

また、チーム代表の本井雅人は、「本当にレースは何が起きるか予測出来ないですね。今回は私たちに幸運が巡ってきたようです。しかし、プロドライバーの井口・山内が本領を発揮し、社員ドライバーの伊藤や花沢が無理なく乗れるクルマ作りをするのは簡単ではないですが、そこに挑んでいかなくてはなりません。次の富士までにはさらに軽量化を進め、目標だった合計50kg減量を達成した上でドライバー全員が納得行くハンドリングを追求しないとならないですね。それでも伊藤は随分速くなりました。花沢も最終スティントでいくつかミスはありましたが、確実に成長しています。成長することが何より大事ですからね。実は井口さんのスティントで、突然スローダウンした前走車にヒットするアクシデントがあったのですが、走行には支障がなかったのでそのままレースを続行しました。しかし、それはコッツン程度ではく、その修理と車両のアップデートなどの作業は、長期連休を挟んだ公式テスト及びレースウィークまでのタイトなスケジュールの中となるため、チーム力が問われます。力を合わせて乗り切っていくつもりです」、と語っています。
5月9日の富士合同テストを経て、次回参戦は5月30日(金)〜6月1日(日)の第3戦富士24時間レースとなります。