2022.05.10 - ニュルブルクリンク24時間レース・事前レポート
SUBARU NBR CHALLENGE 2022、予選レースを振り返る
5月6日から8日までの3日間、ドイツ・ニュルブルクリンク(NBR)で行われた24時間レースのための予選レースは、予定通り公式スケジュールを消化。3年ぶりにNBRに挑むSUBARU/STIチームは、この3日間を通して、2時間の予選を2回、45分間のウォームアップを1回、3時間のショートレースを2回の合計10時間45分間にわたってレースカーを走らせています。大きなトラブルはなかったものの、やはり3年ぶりということで、チームメンバーたちもドライバーも「取り残された」感を少し味わっています。また、レギュレーションも微妙に変化しており、新たに習熟が求められる事柄もありました。そんな予選レースを通じて得たこと、課題として残したことを辰己英治総監督に語ってもらいました。
「まず、クルマに関してですが、日本でじっくり仕上げてきたつもりでしたが、やはり環境が異なるので、思い通りではなかった点もありました。富士スピードウェイを中心にセットアップしているので、グランブリコースでは十分に速さを発揮することができました。これまでのベストタイムよりも速いタイムで周回できます。しかし、話を聞いているとノルドライフェではちょっとドライバーからの信頼感が薄かったのかな、と感じました。やはり80kg重量が重いのは、横だけでなく縦Gもかかる北コースでは予想以上に挙動に影響が出ていますね。また、登り区間では加速が鈍いと感じるのはもっともなことです。また、タイヤ幅と径が大きくなったことで、タイヤの内圧管理が難しくなったことを痛感しています。気温も路温も冷える夜間では、内圧がなかなか上がらないので、動きが鈍感になります。やはり3年ぶりということで、我々クルマを作る側も、ドライバーも環境順応が必要です。これから調整できることは限られていますが、主にサスペンションのセッテイングでなんとかこれらの課題を潰すように知恵を絞ります。
新しい技術的メニューでは、電動パワーステアリングはこれだけ切り返しの多いニュルでは明らかにプラス要素です。しかし、今回のQFレース中には、ユニットの温度が高かったので気がかりです。しかし、冷却用ダクトの向きなどで解決できると思っています。衝突予防システムについて、真夜中の作動チェックまではやりきれていませんが、ドライバーは安心感をもてると思います。さらに、一度オフィシャルから走行中の排気音が規制をわずかに上回っていると指摘を受け、念のために用意しておいたスペア消音器に付け替えました。それ以降指摘は受けていませんが、規制値ギリギリというデータもあるので、大事をとってサプライヤーさんにより消音性能の高いものを作ってもらう手配を済ませています。
一方、レギュレーション変更により、周回数に応じて義務ピットインタイムが変動する新しいルールにはまだ完全に慣れたとは言えず、今回体験したことをもとにシミュレーションを重ねて本番でミスしないようにしなければなりません。毎スティント9周で走れれば、問題は起きないでしょうが、突然ピットインしたり、不可抗力で入らざるを得ない時にちゃんと備えておかないとタイムロスに繋がってしまいます。
また、周りの様子もだいぶ変わっていました。BMW M4 GT3のような 本格的GTマシンが中心となっており、これまで見たこともなかった若手ドライバーがスバッと速いタイムで周回しています。それを動かすチームもよりプロフェッショナルであり、最新のBMW M4を使っているチームにはMスポーツのエンジニアが張り付いてコンピューターを睨んでいます。また、ピット前へのクルマの並べ方も、ローラースライダーを使って適正な向きにスパッと位置決めするなど、見た目もスマートになっていますね。ニュル長距離シリーズ(NLS)に出場しているチームも多く、サーキットでの過ごし方が洗練されていると感じました。
今回のQFレースでは、以上の課題を見つけましたが、大きな改修が必要なものはなく、セットアップの知恵などで解決したいと思います。明日以降、当地に残っているメンバーでエンジン、トランスミッションやデフなどを本番用に変更する作業を行います」。