2025.01.17
SUBARU STAR SQUAREに「SUBARU x MAZDA」レースカーを展示
SUBARUメーカーショールームにスーパー耐久のスバルとマツダのレースカーが登場
1月14日(火)、東京・恵比寿のSUBARUメーカーショールーム「SUBARU STAR SQUARE」にスーパー耐久レースで競い合うスバルとマツダのレースカーが登場。集まったメディア・報道陣を前に、Team SDA Engineeringチーム代表本井雅人とMAZDA SPIRIT RACINGの前田育男代表が、進行中の技術交流について語り合いました。このショールームにスバル社以外のクルマが展示されるのは、初めてのことです。
本井代表は、まず、2021年にトヨタから声掛けがあってスーパー耐久シリーズ(S耐)に出場することになったことを説明しました。「レースに参戦する目的は、カーボンニュートラル社会の実現を目指して、実用的なCNF(カーボンニュートラル燃料)を開発してやろうということを第一に挙げました。2点目は、人材育成です。スバルは、専門テストドライバーが存在せずエンジニアが運転評価をして開発しているのですが、メンバーのスキル育成をするスバルドライビングアカデミーという活動母体があり、S耐もそれを中心に動かそうということになりました。当然普段の仕事をしながらレースカー開発にあたるわけですが、レースですから想定以外の課題が出ます。それを短時間で確実に解決しなくてはならない。若いエンジニア達はレースに関わると、どんどん目つき顔つきが変わってきます。そういった人材育成は、すごく重要なことだと思います。3つ目は、新技術の開発です。一例を挙げるとレースで得た知見をもとに、まず昨年、当社のBRZ改良モデルDタイプにスポーツモードを入れることができました。また、AタイプからCタイプの方にも、ロープライスでお買い求めいただけるという商品化もやってきました」。
マツダの前田代表も、S耐に参戦する背景を語りました。マツダではガソリン代替CNFを使用する排気量2.0LのロードスターとHVOと呼ばれる植物油や廃食油などの脂質を水素化処理して作られる合成燃料を活用する2.2Lのディーゼルターボエンジンを搭載したMAZDA3でスバルと同じST-Qクラスにエントリーしています。2台のマツダ車は、昨シーズンシリーズ中盤からSUBARU High Performance X Future Concept(以後HiPerf-X)と予選でコンマ秒単位の競い合いをしており、本井代表は「最終戦の予選では0.058秒差で負けたことが本気で悔しいです」と語り、前田代表は、「私たちもようやくスバルさんと競えるようになってきました。先を争えるライバルがいる喜びを味わっています」、と語っていました。
さて、今回のトークイベントの本題です。スバルでは、前モデルのBRZ CNF conceptから社内の航空宇宙カンパニーの協力を得て、航空機用カーボンファイバーの端材を活用しています。HiPerf-Xでも同様の素材から成形したリアウィングなどを採用しています。その技術についてS耐レースウィークに開催しているスバル、マツダ、トヨタ、ホンダ、日産の担当者で構成している「S耐ワイガヤクラブ」の定例ミーティングで紹介したところ、マツダから素材提供のオファーがあり、昨年最終戦からMAZDA3に実装したカーボンボンネットフードとして実現しています。この話題からスバル航空宇宙カンパニーの関根尚之さんとマツダのファクトリーモータースボーツ推進部の上杉康範さんがステージに上がってトークに合流しました。関根さんは、複合材料が専門であり、ベルスバル412EXというヘリコプターの複合材部品や接着部品の製造開発が主担当で、リサイクルカーボンの研究開発を進めているとのこと。一方、上杉さんは、入社以来ディーゼルエンジンの開発を担当しており、その縁でMAZDA3の開発にも携わることになったエンジニアです。この話が持ち上がった際に前田代表と上杉さんは共にスバル宇都宮工場に赴き、カーボン素材の活用現場に多くの「お宝のような」カーボン端材があるのを見たそうです。
関根さんは、「航空機の主翼だけでなくフラップなどの可動部分には多くの炭素複合素材が使われています。しかし、加工の過程で端材が発生するので、それらを有効に再利用することを研究してきました。そこから、クルマの部品に転用することはもちろん可能なので、本井さんのリクエストにはすぐに対応することができました」、と語ります。「カーボン素材は2,000から3,000°の温度で焼くのですが、成形するための樹脂は低い温度で焼き飛ばすことができます。カーボン端材からその樹脂だけを焼き飛ばし、残った炭素繊維を安定させたのちに、形を整えて再成形加工していきます」、と続けています。「資源の有効活用と、炭素繊維を焼くときに発生するCO2の削減の両立が可能だと思っています」。
前田さんは、「MAZDA3はフロントヘビーなので、少しでもフロント部分の重量は下げたいので願ってもないお話でした」と語り、上杉さんは、「今回はそれまでに使っていたカーボンボンネットより1.4kg軽量化できました。スティール製からだと14kgの重量減です。今後さらにバンパーやフロントスポイラーなど大型パーツにも活用範囲を広げていけば効果的な軽量化ができると思います」、と続けました。
本井代表は、「マツダさんとは今シーズンも競い合いながら、良い関係を続けてまいりたいと思います。また、スバルとしては今年も変わらず井口卓人、山内英輝のプロドライバーふたりとTeam SDA Engineeringメンバーの伊藤和広、花沢雅史らでエントリーします。チーム代表は私が、チーム監督はチーフエンジニアの伊藤奨が引き続き担当します。HiPerf-Xも正常進化を続けてまいります。水平対向ターボエンジンを将来に残すこと、AWDをはじめとした将来商品に活きる技術開発を目指します」、と語りトークを締め括りました。
本年のS耐シリーズは3月2日・3日のもてぎ公式テストののち、同3月22日・23日のもてぎ戦で開幕し、11月15日・16日の最終戦富士まで計7戦がカレンダー登録されています。その中には、シリーズのハイライトである第3戦富士24時間レースも含まれます。
本井代表は、「マツダさんとは今シーズンも競い合いながら、良い関係を続けてまいりたいと思います。また、スバルとしては今年も変わらず井口卓人、山内英輝のプロドライバーふたりとTeam SDA Engineeringメンバーの伊藤和広、花沢雅史らでエントリーします。チーム代表は私が、チーム監督はチーフエンジニアの伊藤奨が引き続き担当します。HiPerf-Xも正常進化を続けてまいります。水平対向ターボエンジンを将来に残すこと、AWDをはじめとした将来商品に活きる技術開発を目指します」、と語りトークを締め括りました。
本年のS耐シリーズは3月2日・3日のもてぎ公式テストののち、同3月22日・23日のもてぎ戦で開幕し、11月15日・16日の最終戦富士まで計7戦がカレンダー登録されています。その中には、シリーズのハイライトである第3戦富士24時間レースも含まれます。