
5月30日(金)〜6月1日(日)、富士スピードウェイにてENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE第3戦「富士24時間レース」が行われ、予選総合24位からスタートした61号車SUBARU High Performance X Future Concept(伊藤和広/山内英輝/井口卓人/花沢雅史/伊藤奨)(以後Hi-Perf)は、悪天候による波乱多き24時間レースをノートラブルで走り抜き、総合17位、ST-Qクラス2位でフィニッシュしました。

今回の富士24時間レースは、天候に翻弄される結果となりました。29日(木)に行われた練習走行は、ドライコンディションだったものの、金曜日の公式予選はウェットおよびドライという難しい条件でした。それでもAドライバー伊藤(和)とBドライバー山内の合算タイムはST-Qクラストップの位置につけ、目標にしていたST-2クラス8台の間に割って入るものとなりました。チーム監督兼チーフエンジニアの伊藤奨は、「軽量化(フロントドアとルーフパネルを再生カーボン化)とフロント部の剛性を上げたことでハンドリング性能が上がり、これまでより舵の効きが良くなりアンダーステアが改善していることがデータからも見えていますので、その影響と思います」、と説明しています。プロドライバーの井口や山内も、「これまでで最も進化が進み、良いクルマになった」、と評価しているとのことでした。しかし、一夜明けた土曜日は朝からぐずついた天候となり、スタート予定の午後2時近辺には相当量の強い雨が降るという予報が流れ、また雷鳴が轟くこととなり主催者はスタートを1時間ディレイさせる決定を下しました。新しい予定時刻の午後4時にはやや状況が好転したため、セーフティカー先導によるSCランがスタート。場所によっては水捌けが良くないため5周にわたってSCランは継続となり、6周目にようやくSCがコースを離れレースはスタートしました。

その後も雨は降り続けたものの次第に小降りとなり、路面はウェットからダンプへと変わっていきます。夕闇が訪れ、レースが安定し始めた頃、恒例の花火が打ち上げられました。雲の合間から覗く大輪の花は見事でしたが、水分を含んだ重い空気と相まって大量の煙がコース上空を覆います。これによってコース上は視界不良状態となり、SCが導入されることに。その後は滞留した煙に代わって霧が辺りに立ちこめるようになり、やがて濃霧へと発展します。その後、コースでは大きなクラッシュが発生し、コースサイドのバリヤにダメージが発生。その修復のため、赤旗が提示されて全車ホームストレートに停車することとなりました。レース再開後も夜の間は濃霧によるFCY(フルコースイエロー)またはSCが続き、なかなかレーシングコンディションに戻れません。ついには朝4時50分に二度目の赤旗レース中断となります。濃い霧はなかなか晴れず、最終的にリスタートとなったのは7時50分でした。その後は午後3時のフィニッシュまで天候が悪化することはなく、熱戦が繰り広げられました。

伊藤(和)が総合23位・クラス3位でレースを再開し、続いて井口、花沢、伊藤(奨)、山内へとバトンを繋ぎます。そして、残り1時間で再び伊藤(和)が乗り込むと、SUBARU Hi-Perf Xは、ノートラブル、ノーアクシデント、ノーペナルティで518周を走破し、総合17位、ST-Qクラス2位でレースを終えました。
今回ドライバーとしてレースに出場したチーム監督の伊藤奨は、「実は鈴鹿戦の前のプライベートテストでこのクルマに乗った時、正直とても乗りづらい印象だったんです。それが、鈴鹿レースウィークを経て、さらに富士公式テストとステップを踏んで今回に至るわけですが、劇的に進化していて印象も正反対に動きました。とても運転しやすく、ライバルとのバトルも楽しめるくらい。挙動の予測がしやすく、コントロールしやすいので、滑り出しても落ち着いて対応できるクルマに仕上げることができました。チームの皆がそれぞれの仕事を自発的に確認し、自信を持って臨めたことでプロの二人にもポジティブな印象を持ってもらえたのだと思います」、と語っています。

また、伊藤和広は、「私自身としては自分の持てる力は出しきり、ミスなくタスキを繋ぐことができたと思います。クルマ作りのところも、運動性能の取りまとめとして、今回の軽量化およびサスペンションと骨格の補剛など、自分が持っている知見を活かせたかなと。やっぱり量産車とは違う領域のタイヤのグリップ力を使っているので、それを受け止める力、しっかりと支えを作らないといけないんだろうなというのは、自分でもドライバーもやらせてもらって感じていたところなので。ただ、まだ足りないところや新たな課題も見えてきているので、引き続き検証し考えて取り組んでいきたいと思っています」、と笑顔を見せました。また、今回より導入したENEOS社製低炭素ガソリンの適合を担当したエンジンチームのとりまとめも担う花沢は、「新燃料の適合評価は、レース直前までかかりました。評価用の燃料総量と時間に限りがあって、信頼性をいかに担保するかが鍵となりました。それが完了したのはレースウィークの水曜日夜です。木曜日から走行が始まるのでギリギリでしたね。分解した結果を見て、大丈夫だと思ってはいるけど、やっぱり実験室と現場では環境も違いベンチでは壊れないが実車だと壊れる、そういう経験もしているので、心の片隅には心配はありました。ちゃんと走り切れたことで評価が実証され、僕らの自信にも繋がりました。今は、本当にスッキリしています」、と話してくれました。

チーム代表の本井雅人は、「今回は24時間ということで、Hi-Perf Xになって初めてのレースですけども、速さと信頼性の両方を突き詰めてできる限りの準備をしてきました。お陰様で及第点は取れたかなと。特に前回鈴鹿以降のアップデートが本当にみんなの力で効果を発揮し、ドライバーにもかなりポジティブな意見と感想をいただくことができて非常に良かったと思っています。基本的に大きなところは軽量化と剛性アップですけども、それによる効能はたくさんあるのですが、ネガティブ要素もあるので、そういった部分をきちんと次に向けて潰し、本当に些細なトラブルすら次はなくすようにしたいです。レース中には何もなかったのですが、メンテナンスタイムで少し想定外の作業があって、2分くらいロスしたのが悔やまれます。ただ、走行に関しては本当にノートラブルで、新しい燃料も使い切りましたし、今回はマインドも含めてすごく良い流れができたので、次のステップへの第一歩が踏み出せたかなという感じがしています」、と語っています。
次回スーパー耐久シリーズ第4戦は、スポーツランドSUGOにて7月5日(土)・6日(日)に開催されます。