SUPER GT

Editor's COLUMN

  • TEST
  • Rd1
  • Rd2
  • Rd3
  • Rd4
  • Rd5
  • Rd6
  • Rd7
  • Rd8
2016.05/03-04 第2戦 富士スピードウェイ2016.05.10

空力面での進化が、SUBARU BRZ GT300を加速させる

ゴールデンウイークただなか、富士スピードウェイで行われたSUPER GT第2戦で、SUBARU BRZ GT300は果敢な走りを見せたものの11位という結果に終わりました。しかし、比較的得意とは言えないサーキットにおいても、トップグループと遜色のないタイムを刻んだことで、車両のポテンシャル自体が大きく向上したことがうかがわれます。コーナリングマシンであるSUBARU BRZ GT300は、ライバルたるFIA GT3車両に“ストレートで抜かれにくい”クルマであることが求められます。特に約1.5kmのストレートをもつ富士スピードウェイでは、最高速も重要な要素のひとつとなってきます。

2016年型SUBARU BRZ GT300は空力的にも大きく進化を果たしており、全体的なドラッグの低減とダウンフォースの向上を実現しました。その結果としてコーナリングスピードだけでなく最高速も向上したのです。この進化のポイントについてSTI車体技術部の毛利豊彦に説明してもらいました。
大径化した前輪の“デメリット"を消す

毛利は1974年に富士重工業に入社、開発部、シャシー設計部などに所属しEPS(電動パワーステアリング)やADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)、VDC(ビークル・ダイナミクス・コントロール)など、電子制御分野のプロジェクトに携わりました。そののち商品企画部へと移り、WRX STI spec C(GVB型)やWRX STI tS、WRX STI A-Line tSといったカーボンルーフ装着車の主査を務めた経歴の持ち主です。現在はSTI車体技術部部長としてSTIコンプリートカーやスポーツパーツの開発を担当しています。

「2016年型SUBARU BRZ GT300の最も大きな変更点は、すでに伝えられているとおりフロントタイヤを大径・幅広化したことです。これはコーナリングパワーとコーナリングフォースの増加を狙ってのものですが、外径が680mmから710mmとなったことで、フェンダーも高くする必要があります。フェンダーが高くなると、CD値(抗力係数)も悪くなり抵抗が増えるので、一概にいいことばかりではありません。ですから、できる限りフェンダーの高さを抑え、空気をきれいに流してやりたい。そのためインナーフェンダーの形状を工夫し極限までスペースを詰めることで、CD値をごくわずかな増加にとどめています。工夫したのは高さだけではありません。マシン前端からフェンダーの頂点に至る空気の流れができる限りスムーズになるように、ヘッドランプの上あたりから形状を作り込んでいっています」。

「またマシンを上から見た時、車両の両端を少し前に出すことで正面からの風を両サイドに沿わせるようにしています。さらに外に向けてRをつけることで、流速を速めています。風を外側に膨らませることは気流を乱すことと同じですから、それは抵抗になってしまいます。その領域を少しでも狭めてやることがCd値の低減に効いてきます。空気の流れを外に広げず、いかにしてまとめるかを心がけました。加えて今シーズンから規定が変更になってミラーが小型化されたことに合わせ、その位置を見直したことの効果も出ています。おかげでフロントウインドウからサイドに抜ける部分の流れがスムーズになりました。バンパーおよびフロントフェンダー形状を見直しと相まってCd値を上げずにダウンフォースを15%ほど増加させることができました」。

2016年型SUBARU BRZ GT300のフロントタイヤ大径化に伴う空力的な影響がほとんど見られなかった背景には、開発陣営の知られざる取り組みが隠されていたのです。
気流の流れを可視化し、風を読む

空力パーツの開発は目には見えない空気の流れをとらえ、有効に利用しなければなりません。そのためには実戦で得られるデータだけでなく、風洞施設やCFD(数値流体力学)での解析と、これまでに積み重ねられたノウハウが必要になってきます。

「空力分野の開発は、実車風洞とCFDによる解析で行っています。シーズンオフには富士重工業にある実車風洞を借りて試験を行いました。CFDについては富士重工業との協業のもと、STI独自で解析できるような体制を組んでいます。風の流れは思ったようには動いてくれないもので気流の流れを可視化することができるCFDは大いに役立っています。わざわざパーツを作らずともそういった試行錯誤ができますからね。もちろん実車と条件は異なりますし、すべてが正しいわけではありませんが、そこから導き出される傾向は大きなヒントになります」。

「STIではSUPER GTもニュルブルクリンクも、アメリカのグローバルラリークロスも同じ設計チームが開発を担当しており、その根底に流れる考え方は一本スジが通っています。それがSTIの強みですね。同じメンバーが設計してモノを作って、レース現場にも出る。富士重工業の提唱する“走りを極めれば安全になる"という思想を実践しているということです。また、開発チームが同じであるがゆえに、データの共有が容易であることも強みのひとつと言えるでしょう。そこで得られたものが、STIコンプリートカーやSTIスポーツパーツに活かされているのです。今後もSUBARU BRZ GT300の活躍にご期待ください」。

TEAM PARTNER

  • Facebook
  • Twitter
  • YouTube
  • UStream
  • ニコニコチャンネル
Scroll to top