SUPER GT

BACKSTAGE COLUMN

  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
2023.08.04

緊密なコミュニケーションで最適ソリューションを生み出す

SUPER GTを戦う我らがSUBARU BRZ GT300のボディサイドに見えるDENSOロゴは、先進的な自動車技術、システム・製品を提供するグローバルな自動車部品メーカーである株式会社デンソーの会社マークです。BRZ GT300の心臓部であるEJ20エンジンの燃焼の要、スパークプラグをテーラーメイドで開発・提供していただいています。今回のバックステージコラムは、SUBARUモータースポーツマガジン記者(以下MSM)が、愛知県刈谷市にある同社本社にて開発ご担当のエンジン機器技術部担当係長阿部祐也さんにお話をうかがってきました。
MSM 阿部さん、こんにちは。早速ですが、STIとの協力関係について、お話を伺えますでしょうか。
阿部さん 「デンソーは、SUBARUが2004年にWRC(FIA World Rally Championship ;世界ラリー選手権)に参戦された時からパートナーとなり、翌2005年にはインプレッサWRCにイリジウムプラグを採用いただきました。そして第3戦のメキシコで早くも優勝された時はデンソー社内も大いに盛り上がったと聞いています。 その後、2009年よりSTIのSUPER GTプログラムのパートナーとして、スパークプラグを提供しています。以来、エンジンの仕様が変わる度に、スパークプラグも着火性と信頼性をより高めるべく開発しています。私は、担当となった2020年より、当時就任の小澤正弘総監督にお声掛け頂き、STIベンチでのテストに参加させて頂いています。レースは出力向上が求められますので、そのために実現すべき燃焼とそのきっかけとなる着火を追求するところを一緒に取り組んでいます。」
MSM  SUPER GT で14年前と今とではエンジン性能もだいぶ向上していますが、それに対応するための苦労や大切にしたことはなんでしょうか。
阿部さん 「スパークプラグから放電させて混合気に火種を作り燃え広がるきっかけが着火なのですが、レースという厳しい燃焼環境の中でいかに効率よく放電し着火させるかがより求められています。まずは環境が一定なベンチで最適な性能が引き出せているかを確認し製品を提供するのですが、実際にSTIがサーキットで性能確認した時に新たにスパークプラグに対する要求が発生することもあります。その場合はSTIからご連絡いただき、即座に対応するといったことはこれまでもありました。サーキットは厳しい環境なので、お互いにスパークプラグにかかる熱、振動、電圧などのストレスを常に正しく把握しておくことが肝心ですが苦労する点でもあります。STIとの協力関係で我々が大事にしているのは、そのようなことができる緊密なコミュニケーションです。」
MSM つまり緊密な関係が出来上がったことで開発スピードが上がったということでしょうか。
阿部さん 「モータースポーツは元々開発スピードが早く、チームの要求にサプライヤー側が追いつけないこともあったように思います。そこで、要求性能を伺ってそれにマッチする製品を提供することから、一緒に部品の性能を考え最適なスパークプラグを作り込むことで開発スピードを上げることを目指しました。今では必要であればベンチテストを実施しようとご提案頂くなど、逆にサポートして頂いているような関係です。それによって、こちらもチームの要求を正しく理解できるようになります。レースやテスト後に結果を議論する機会を設けていただくようになり、そこで小澤総監督から的確なアドバイスやヒントを頂くこともあります。STIとデンソーで同じ目標に向かいお互いの技術を融合させながら開発を進められるようになったこの関係が私にとっては非常にやりやすく、やり甲斐があります。」
MSM 現在BRZ GT300に使用されているスパークプラグはどんな特徴なのでしょうか。
阿部さん 「燃焼室内にスパークプラグが突き出してしまうと、熱源になってプレイグニッション(異常燃焼)を誘発し出力低下を招いてしまうことがあります。そうならないように電極が突き出さないような形状にしますが、それが過ぎると今度は放電する箇所が燃焼室中央から遠ざかってしまうので、着火効率の悪化を招きます。このトレードオフに対し、エンジン筒内の気流の特性を使って放電を引き出し、混合気に効率よくエネルギーを与えることを目指しています。そのためにSTI側には理想の混合気の流れと広がりを追求して頂きました。スパークプラグだけで最適燃焼を追求することはできず、エンジン全体で見ないと効率的な着火にはならないからです。お互いの協力関係があって初めて最適ソリューションを導くことができるのです。」
MSM 読者の皆さんやBRZオーナーの皆さんにお伝えすることはありますか。
阿部さん 「BRZ GT300のスパークプラグは専用形状と熱価となっていますが、中心電極はデンソーがいち早く開発し市場導入に成功したイリジウム合金を使っています。また、市販のSUBARUロードカーでは、唯一BRZがデンソープラグ指定採用となっており、BRZ GT300もみなさんのBRZも、デンソーの技術が入っているという点では共通、と言うことができると思います。」
MSM  大変興味深いお話をありがとうございました。
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
Scroll to top