
3月11日(土)・12日(日)、岡山国際サーキットで2023年のSUPER GT公式テストが行われ、前部にカモフラージュシートが貼られたSUBARU BRZ GT300は、本年シリーズに参戦する他のGT車両と共に二日間・合計8時間の走行セッションを走り、精力的にマシンの仕上げおよび調整を進めました。
2023年SUPER GT車両規則の改定により、SUBRU BRZ GT300はノーズおよびフロントフェンダー先端部分が改修され、また、リヤディフューザーの出口形状にも変更が施されています。外からは見えませんが、ボディ下面の形状にも修正が加えられています。また、今年開幕戦からSUPER GT車両全車にカーボンニュートラル燃料(CNF)の使用が義務付けられており、オフシーズンの間にも進められてきた実車での適合確認などが継続してテストメニューに入っていました。このCNF燃料は、ドイツのハルターマンカーレス社が供給する「GTA R100」と呼ばれるバイオマス由来の100%非化石燃料で、成分はこれまで使われてきたガソリンとほぼ同等とのことですが、厳密には燃焼特性がガソリンと異なる点があり、各車ともピークパワーの設定や燃費計算のデータを取るため、さまざまな試験を実施しているようです。また、SUBARU BRZ GT300は、タイヤ・ホイールのユニット剛性を上げるため、BBSホイールのリム形状が変更され、ダンロップタイヤも構造が改良されています。

公式テスト一日目は、12年前のこの日に発生した東日本大震災の犠牲者を悼み、セッション開始前に全チーム全員で黙祷を捧げました。この日は快晴で、4月中旬並みと言われる20度超えの気温の下、走行セッションはスタートしました。SUBARU BRZ GT300は、ドライバーの山内英輝中心にセットアップを探って行きます。「リヤのダウンフォースは増えたと感じますが、フロントとのバランスはまだこれからですね。しかし、他の車両からの排気ガスが車内に侵入してきて、今までにない匂いに戸惑っています」と山内は、このテスト最初の印象を話していました。午後は、タイヤの摩耗度をチェックするロングランを井口が担当します。今年から450kmレースが昨年の3レースから5レースに増え、さらに環境への配慮から持ち込みタイヤ本数がこれまでのドライ6セット、ウェット7セットからそれぞれ5セット、6セットに削減されます。練習走行や予選を含めたタイヤマネジメントはこれまで以上に重要となり、そのためタイヤの摩耗度は抑えておきたいところです。しかし、午後のセッションが始まってしばらくすると、井口はピットに戻ってきました。「オイルの匂いがしたと思ったら、ガラガラと異音がしたのでクラッチを切って惰性で戻ってきました。大事でなければいいのですが」と話していました。

異音の原因はエンジンからでした。搭載されていたエンジンは冬の間のテストを通して使っていたもので、このテストが終了したのち元々交換する予定だったので、チームは計画より早めにエンジンを交換することになったようです。チーム総監督の小澤正弘は、「CNF燃料の適合については、冬の間のプライベートテストでもデータをとっていますが、特性としてダイリューション(エンジンオイルの希釈)が多いことがわかっています。そのため、今回ロングランを実施した2回目のセッションでは、揮発性を高める対策を施したところ、今度は潤滑に問題が発生しました。しかし、限界がわかったので、別の対策を考えます。エンジンを載せ替えて二日目を走ります」とコメントしています。

公式テスト二日目の3月12日は、薄曇りの朝を迎えました。気温は前日ほどではないにしろ、20度を超えるほど温暖です。日曜日のこの日、多くの観客がサーキットを訪れました。公式戦だとアクセスエリアも制限されますが、テストでは割に自由に行き来ができるため、ピット裏の通路でドライバーを待ち構えてサインをお願いしたりしています。ピットビューイングもレース時より長い時間が割り当てられていました。SUBARU BRZ GT300は、シャシーのセットアップを探りながら、午前のセッションを終了。全車参加でFCY(フルコースイエロー)やSC(セーフティカー)ラン、スタート練習を行い、午後のセッションを迎えました。多くのチームが、レースシミュレーションのため開幕戦で使うと想定するセットアップでロング(連続周回)を走ります。SUBARU BRZ R&D SPORTチームは、タイヤとホイールの組み合わせを何通りか試し、井口を中心にロングスティントを周回しました。

小澤正弘総監督は、「空力、燃料、タイヤとホイールなど、いろいろな要素が新しくなり、組み合わせやバランスを詰めているところですが、方向性は見えてきています。CNF燃料については、トラブルもありましたが、これの解決策も方向が見えています。開幕まであとわずかですが、しっかり準備してシーズンインを迎えようと思っています」とまとめました。
2週間後の3月25日・26日には、富士スピードウェイに舞台を移し、2回目のSUPER GT公式テストが行われます。その後、4月15日・16日には、いよいよ「OKAYAMA GT 300kmレース」で今季SUPER GTシリーズが開幕します。