2024.04.15 - ニュルブルクリンク24時間レース・事前レポート
NBRでの速さと信頼性は確認済みとなりました
4月14日(日)、ニュルブルクリンク24時間予選レースの最終日となりました。この日も朝から晴天に恵まれ、気温12度、路面温度12度と、タイムアタックには最適な条件の中、8時15分から90分間の公式予選2が行われました。前日の決勝レース終盤に久保凜太郎から、「突然ではなく徐々にですが、なんとなく排気音が大きくなってきたように感じた」、というコメントがあり、STIのエンジニアたちはパルクフェルメからレースカーが戻った夜遅くにピットガレージで点検を始めました。しかし、データ的にも物理的にも異常は発見されず、久保の思い過ごしの線が濃厚となってきました。前年エキゾーストパイプにクラックが入って、レース中に大工事となってしまった経験からチームは神経質になっていましたが、何も発見されず、辰己総監督も「何もなければそれでよし。皆で可能性のある箇所を総点検したのだから間違いない」、と語り、この一件を締め括りました。
さて、公式予選2は88号車WRX NBR CHALLENGE 2024にソフトタイヤを装着し、経験豊富なティム・シュリックがタイムアタックに出発しました。短い予選の間なので、3周しかフルコースを走れませんでしたが、総合45位につける8分52秒005のベストタイムを記録しました。これは、昨年のマシンで記録したベストタイムを3秒上回るタイムです。また、フルコースを2周した久保も8分56秒097をマーク。前年のマシンよりも速さに磨きをかけていることは間違いなさそうです。
この日は、13時からの決勝レース2に向けて、12時10分よりスタート進行が始まりました。88号車のスターティンググリッドは、前日と同じ第3グループのポールポジションです。今回は、シュリックがスタートを担当します。この頃になると日差しは強くなり、気温は17度まで上がっていました。12時50分には第3グループもフォーメーションラップに入って行きます。そして、13時00分にトップグループがスタートし、続いて第2グループ、第3グループもレーシングスピードに移行しました。すると、直後に第3グループの先頭を走っているシュリックから、「スタート後の第1コーナーで後ろから追突され、右リアにダメージを負った」、と無線連絡が入りました。チームは、すぐさまグランプリコースを回ってピットインするように指示。ピットガレージで点検すると、右ボディ下部を損傷しているほか、アライメントも狂ったようです。ボディの応急処置とアライメント調整を終えて車両をコースに送り出しますが、リヤに異常を残したままでした。再点検すると、サスペンションリンクの一部パーツが破損していることがわかり、パーツを交換して再度アライメント調整することに。ここまでで2時間を費やしました。それでも修復後にコースに送り出すと、シュリックからは「クルマは完璧に元通りになっています。みんな、ありがとう」とのコメントが戻ってきました。そのまま、通常の決勝レースモードに移行し、シュリックは8周して久保に交代。久保は残り約50分を走行してチェッカーフラッグを受けました。総合優勝車の周回数は27周で、88号車は14周だったので、なんとか完走扱いになっています。
ティム・シュリックは、「第一コーナーにターンインしたところで後方から減速せずに向かってきたマシンがありました。オーバースピードでアプローチに入ってしまったため、彼もなすすべなく当たってしまったんでしょう。のちにチームマネージャーが謝りに来ましたし、若いドライバー本人も謝りに来ました。確かにレーシングアクシデントではありますが、私たちが被った被害は小さくなかったですね」、と語っています。チーム監督の沢田拓也は、「アクシデントは避けようがなかったですが、修復後、パフォーマンスは元に戻ったようで、レース中のティム(シュリック)のベストラップも8分55秒まで出せています。レース後、24時間に向けて車体全体のリフレッシュを実施する予定だったので、ダメージを受けたボディも合わせてスペアパーツに置き換えます。まずは、この二日間を通じて、今年のクルマには、速さと信頼性があることを実証できたと思います。あとは24時間レースを待つばかりです」、語っています。
辰己英治総監督は、「レースだから予期せぬことが起きるのは当たり前。特にニュルは参加車両が多く速度差もあり、ドライバーのレベル差もあります。だからといって、当てられて困るのはこちらです。特にスタート直後はこういうことが起きやすい。どうやってそれを避けるかは課題ですね。とはいえ、レース中にクルマを治す経験ができたのはよかったかな。ここまではエンジンもミッションやデフもテストからずっと使い続けているものです。耐久テストとしては十分でしょう。ティムが示してくれたように速さも備わっています。実は燃費についても去年より若干ですが、今年の方が改善されています。(久保)凛太郎も落ち着いているし、ルーキーにも関わらずセクタータイムではベテランのティムと同等のタイムで通過する箇所もありました。材料は揃ったので、勝利を確実に手に入れるため気を引き締めて行こうと思います」、と話しています。