

4月13日(土)、ニュルブルクリンク24時間予選レース初日は、朝から爽やかな空気が流れ、やがて暑いくらいの陽気となりました。このレースは、本来は24時間レースに向けた予備予選的位置付けでしたが、参加台数が集まりにくいことから、今年はNLS(ニュルブルクリンク長距離シリーズ)の一戦として組み込まれることになったようです。そのため、今回のエントリー台数は128台で、自動車マニュファクチャラーの代理ファクトリーチームと思しき老舗チームやいかにも勢いのある若者ばかりを集めたジュニアチーム、もちろん常連の有力プライベーターも多数出場しています。おかげでパドックは人で溢れ、賑わいを見せています。毎年24時間レースには、ドイツ各所からSUBARUファンが多数集まりますが、今年も5名がこの予選レースの応援に駆けつけています。代表格のスヴェンさんは、「コロナの制限が解けたので、5月のSUPER GT富士戦にはまたツアーを組んで日本に応援に行くよ」、とご機嫌の様子です。

さて、この日朝10時から2時間の予定でスタートした予選1回目は、SUBARU/STIチームはマシンの各部動作確認とブレーキの焼き入れのためグランプリコースを数周したのち、フルコースを走る計画です。ドライバーはルーキーの久保凜太郎です。落ち着いてクルマの状態をピットに伝え、フルコースへと向かって行きました。このクルマでフルコースを走るのはこれが初めてです。富士では相当走り込んでいますが、縦Gが連続するノルドシュライフェ(北コース)は比べることのできない過酷な環境です。無線からは、「クルマは何の問題もないですが、このクルマ速えーっ」という言葉が飛び込んできました。その後ティム・シュリックに交代し、フルコースを2周。彼も特に問題点を指摘していません。その後再び久保に交代し、フルコース2周の予定でピットアウトして行きました。1周目を終えてバックストレートを通過した時点で、予選は赤旗中断。コースで大きなクラッシュがあったため、その処理のため20分間を残してセッションは中止となりました。シュリックのベストラップタイムは8分59秒288で総合43位、SP4Tクラス首位となりました。久保のベストラップは9分14秒台でした。

シュリックは、「今年のクルマはスムーズでとても良いフィーリングです。スローコーナーでややアンダーステアを感じるけど、全体的には問題ないと言えるでしょう。タイムはまだまだですが、2周しか走っていないからね。この気温(約20度)は、私たちのターボカーにとっては良いコンディションとは言えないが、もっと速く走れるようになるよ」、と語り、久保は、「このクルマの速さに驚きましたし、さらに速いGT3に迫られると正直怖いと感じました。それでも自分では落ち着いてセッションに入れたと思います。ベストラップの時は、ノルドシュライフェの奥でコード60(クラッシュ車処理などで60km/hに制限される区間)が出ていたので仕方ないです。最初の自己採点としては、70点でしょうか」、とやや謙遜気味に語っていました。

長いインターバルを経て、16時40分からスタート進行が始まりました。88号車SUBARU WRX NBR CHALLENGE 2024は、第3グループのポールポジションからスタートです。ニュルブルクリンクでは、100台を超えるレースカーがエントリーしている場合、3または4つのグループに分け、時間差でレースをスタートします。スタートを担当する久保が乗り込み、フォーメーションラップに向かって行きました。スタート時の気温は22度、路面温度は28度でした。久保の最初のスティントは8周。「グループの先頭からドライでスタートできたので、良いリズムが作れました。スティントの後半はタイヤが次第にグリップを失っていくのを感じられたことも収穫ですね」、と久保は語っています。

トラブルやミスもなく、約70分後にシュリックにバトンタッチしました。シュリックにとってニュルはホームコースです。彼も安定したラップタイムで周回し、再び久保にステアリングを預けました。最初のドライバー交代の際、ピットアウトが規定より5秒早かったためペナルティが科せられ、2度目に久保が乗り込んだ際、チームはピットでペナルティタイムを消化することにしました。その後久保は走り出しましたが、ペナルティの消化はピットレーンに設けられているペナルティストップゾーンで実行しなければならない、とマーシャルから指示があり、再びピットレーンへ。ここで32秒間ペナルティストップすることになりました。その後は再びペースを取り戻し、そのままチェッカーフラッグを受けました。レース1は4時間で24周を走り、総合51位クラス1位の結果を残しています。「無事初完走を果たすことができました。ありがとうございました」、と久保が無線でチームに語りかけていたのが印象的でした。パルクフェルメに戻った久保は、「2回目のスティントは気温が下がったせいか、クルマはとっても快調で楽しく周回できました。思いのほか早く周囲が暗くなって、補助灯をつけてのスティントになりましたが、ナイトセッションを経験できたのも良かったと思います。とっても楽しく走れていたのですが、調子に乗ってはいけないと思い、少しペースを落としました」、と初完走の感想を語りました。

チーム監督の沢田は、「無事完走できてホッとしました。クルマは全くパフォーマンスダウンすることなく、何かとコンタクトしたり他車からヒットされたり、ということもありませんでした。唯一のトラブルは、私の判断ミスでピットアウトが規定より早すぎてペナルティをもらってしまったこと、さらに勘違いしてピットで無駄な時間を過ごしてしまったことです。面目ない」、と話していました。
このレースウィーク最終日の14日は、朝8時15分から予選2が行われ、13時間から4時間のレース2がスタートします。