SUPER GT

BACKSTAGE COLUMN

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2024.04.17

新たなフェーズで結果を出す挑戦

2024年シーズンのSUPER GTはレースフォーマットの変更があり、数多くのルール変更がありました。タイヤにもルール変更があり、その対応を施してシーズンに臨みました。その対応とは? SUBARU BRZ GT300にタイヤを供給する住友ゴム工業モータースポーツ部のエンジニア小川貴臣さんにお話を伺いました。
「一番大きいポイントは持ち込みセット数(本数)が削減されたことです」と小川エンジニアは言います。300kmレースは4セット、350kmレースが5セット、そして3時間レースは6セットに制限されています。これはレース距離は異なりますが前シーズンより減っています。レースをプロモートするGTアソシエーションは、環境課題や社会課題に対し自動車レースも対応する必要があるという「SUPER GT Green Project 2030」のもと、タイヤ消費量の削減を掲げ、ロングライフなタイヤ開発を各タイヤメーカーに求めました。その結果、持ち込みセット数削減というルール変更となりました。
小川エンジニアは「持ち込めるセット数が減るとタイヤの種類も限られます。そこを踏まえると対応レンジの広いタイヤが必要になり、また2回の予選を同じタイヤで、しかも決勝のスタートタイヤも予選で使ったタイヤというルールなので、グリップ力の低下が少ないタイヤが求められます」
そのためのポイントも伺いました。「タイヤの接地面をいかに綺麗に使うかということで、より接地面積を広く、その中で接地圧分布を綺麗に均等化する。操舵した時も均等に接地圧がかかることが必要です。接地圧に偏りができてしまうと、それがきっかけでオーバーヒートし、熱ダレを起こしますし、そこが起因して摩耗も始まります。そのため、接地面を綺麗に使うことに尽きます」
こうした対策は2023年のシーズン途中から新規開発が始まり、オフシーズンに本格的な開発が始まりました。「2月には理想とするタイヤをチームに提案し、テストしてもらったのですが、マシンとのマッチングができず、開発が振り出しに戻ったこともありました(笑)そのため、対応できるすべての領域で設計の見直しをすることになりました」と小川エンジニアは話します。そして生まれた新しいタイヤの手応えをチームは掴んでおり、小澤正弘総監督もドライバーの井口卓人、山内英輝の二人も「良くなっている」と口を揃えています。
こうして小川エンジニアは、新タイヤを開発しましたが、これまでの経歴もお聞きしました。 「出身の京都大学では工学部の機械系で学生フォーミュラをやっていました。その時にタイヤに興味を持ったので、タイヤメーカーに就職しました。2015年の入社で最初は研究本部でシミュレーションをやっていました。ローディングした時のトレッドパターンの摩耗予測などのモデル解析です。操安に関わるところをやっていたので、設計エンジニアとはよく話をしました。そのうち、私は理屈でタイヤを理解するという仕事ですが、タイヤ設計をやってみたいという希望を会社に伝え、2020年からモータースポーツのタイヤ設計に関わるようになりました。当時の役員からは『思いっきり自由にできるところでやってほしい』と言われ、今は苦労しています(笑)」
優秀な頭脳とモータースポーツへの強い興味は、良い製品開発に繋がるのは間違いないでしょう。SUPER GTはレースフォーマットの変更により、新たなフェーズに入りましたが、そうした変化の中で結果を出していける、これからのダンロップタイヤに、大きな期待が持てる良い話が伺えました。
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