

3月7日(火)に静岡県の富士スピードウェイにて、本年5月のニュルブルクリンク24時間レースに出場するSUBARU WRX STIレースカーのシェイクダウン(初試走)が行われました。
取材陣を前に、スバルテクニカインターナショナル株式会社(STI)社長の平川良夫は、「私どもSTIは、パートナー企業様の多大なるご協力を賜りながら、本日ご覧いただいた新しいSUBARU WRX STIレースカーを開発しました。今年はスバルにとって、2008年以来10回目のニュルブルクリンク挑戦の年となります。これまでのノウハウと経験を生かし、3年連続・通算5回目のSP3Tクラス優勝を目指します」と挨拶しました。続いてチーム監督を務めるSTIの菅谷重雄は、以下に列記するマシンの改良点・改善点を説明。2016年車両からの課題を挙げた上で、いかにそれらを解決したかを解説していきました。
【パワーユニット】
昨年はエアリストリクター(空気吸入制限装置)の小径化によるパワー低下に苦しんだため、それを補うためエンジン内部部品の最適化や高圧縮比化による燃焼効率改善を施し、4-2-1エキゾーストマニホールド、シングルスクロールターボへの変更などが盛り込まれ、出力向上・トルクアップを図っています。さらに、ドライバーの負担軽減のためパドルシフトを採用し、追い抜き加速性能重視のためのトランスミッションギヤ比のクロスレシオ化、センターデフ制御見直しなど、パワートレイン全体を改良しています。
【エアロダイナミクス】
新しいWRX STIのフェイスを採用したボディワークも、フロントのダウンフォース増を目指して各所にモディファイを施しています。さらに、タイヤハウス内のエアを効率的に抜くことなどで、空気抵抗を減らしながらダウンフォースを増加させるセッティングとなっています。また、課題のひとつであったドライバー環境改善のため、コクピット内への導風経路も変更しています。
【シャシー】
定評のあるハンドリングをさらにリファインすべく、ロングホイールベース化、リヤトレッド拡幅、フロントサスペンションストローク増加などのメニューを盛り込んでいます。住友ゴム製ファルケンタイヤは、コーナリングフォースを改善しつつ、耐摩耗性を見直す改良が盛り込まれており、タイムロスの低減とラップタイムの安定化を狙っています。フロントサスペンションのバンプストローク増は上下左右の入力の多い区間に対応し、また効率的補剛、電気ハーネスの簡素化、外装部品の再設計による徹底した軽量化、重量配分の最適化などのメニューはくねくねと曲がりくねった中低速セクションで効果を発揮すると目論んでいます。

これらの課題を抽出し、STIパワーユニット技術部、車体技術部、車両実験部などの各セクションを戦略的に統括して効率的な車両開発を行うため、STIは新たにモータースポーツ技術統括部を設置し、開発体制を強化しています。また、昨年までNBRチームのSTI総監督を務めていた辰己英治は、テクニカルアドバイザーとしてプロジェクトに参加することになりました。また、シェイクダウンを終えたドライバーの山内英輝は、「マシンの挙動はさらにしなやかになり、全体のバランスはより進化したと感じました。今回もニュルブルクリンク24時間レースへチャレンジするチームの一員として僕を迎えていただき、大変光栄に思います。皆様のご期待に添えるよう、精一杯頑張ってきます」と抱負を語っていました。
WRX STI NBR 2017は、このあと国内での最終調整を経て、4月中旬までにドイツに輸送され、4月22日・23日に現地で行われる24時間レースのためのクォリファイレースに出場。5月25日〜28日の24時間レース本番に備えます。