レースからひと晩明けて、いい気分というか、ひと安心というところです。あらためて思うことは、やはりレースはひと筋縄では行かないなということです。相手もいる話ですし、運もあります。終わったから言えることですが、今回は色々なものがこっちに向いていたということですね。
リタイアも覚悟したラジエターのトラブル
運という意味では、序盤に山内(英輝)から井口(卓人)に代わった時に追突されてスピンしましたが、タイヤもマシンも壊れず、すぐにコース復帰できたことは大きかった。あれでダメージを受けていたらレースは終わっていたでしょう。クルマが速いことは分かっていましたから、とにかく壊れていなければ大丈夫というのはチームの皆が思っていました。山内は自分で無線を入れて「絶対諦めるな、まだ行けるから」というようなことを井口に伝えていましたね。走りに影響なく復帰できたことはラッキーとしか言いようがありません。
また、レース中盤にはラジエターに小さな穴が空いて冷却水が漏れるというトラブルもありました。前のクルマからはどうしてもゴミや石が飛んでくることもあります。運が悪いとそういうことは起きるものです。最初はピットに入れて修理することも検討したのですが、それをやっていてはどっちみち勝てません。行けるところまで行くしかない、という決断をしました。その時点で半分はリタイアすることも覚悟していましたね。幸い、気候が味方をしてくれて、エンジンの水温が上がらずに済んだのです。次のピットインで応急処置をしようとしたら水の流出は止まっていました。外気温が30度を下回って、タイヤには少し厳しい条件でしたが、ラジエターにはよかったということです。もう少し穴が大きかったら、もう少し気温が高かったら分かりません。天気が適度に崩れてくれたことで、クルマが長持ちしたということでしょう。本当に運ですね。
幸運を引き寄せるためには実力も必要
終わってみたら、実にラッキーなことが重なって勝てたということですね。ただし、幸運を引き寄せるためにはクルマのポテンシャルがないとダメなんだなということも分かります。いざとなったら戦えるぞ、というのを見せられる実力がないと、相手にもつけ入られてしまいます。簡単に抜かれるようではダメ。勝つためにはそれなりの運と実力が備わっていないといけない。実力+運があったから勝てたということでしょうね。
それを考えると、スタート直後に山内が2番手に上がってくれたことは大きかった。あそこで2番手に上がって、後ろから抜かれませんでした。あれで逃げることができマージンを稼げたのです。トップには追い付けませんでしたが、タイム的には同じようなものでしたからね。あとはタイヤ2本交換を2回行って、15秒から20秒ほど稼いでいます。
最後まで勝てるという確証はありませんでした。みんな速いですから、まったく気は抜けなかったですね。何があるか分かりませんし、ラジエターは壊れている。行ける、とはなかなか思えませんでした。いつレースが終わってしまうのかと、複雑な気持ちでしたね。最終コーナーを立ち上がってきてようやく、『もしかして勝ったかな』と思ったくらいです。本当は序盤からスタートダッシュを決めるつもりでしたが、ひとまずよしとせねばならないと思います。
タイでの目標は最低でも3位表彰台
次戦はタイですが、ハンデ94kgで臨みます。マシンが重くてエンジンは大変なのですが、コースとしてはSUBARU BRZ GT300に相当合っていると思っているんです。ストップ&ゴーのレイアウトではなく、高速コーナーが多いので、スピードを維持できる。これまでの戦績も悪くありませんしね。あとはウェイトをどうするかというところです。クルマのセットアップも含めて、ここ数日でしっかり考えたいと思います。タイヤも余裕がある思っています。今回のレースでも当初の想定より柔らかいタイヤを使っていて、それでも摩耗していない。かなりタイヤに優しいクルマということは実現できています。どういうセットアップが必要かを見極めて、目標は最低でも3位を獲りたいなと思います。きっといい走りができると思っていますので、ご期待ください。