
ドライバーが着用するレーシングスーツ。これはもしもの際にドライバーの身を守る大事な耐火服でもある。近年は動きやすいように素材も薄く軽く進化し、安全性と機能性を両立させたものになっている。そして同じものが2着準備されている。これは予選日用、決勝日用と分けることが通常だが、夏場の長時間レースなどでは、乗るたびに着替えられるようにしているという。「決勝日の朝に2着吊るしてあるとどっちが着たスーツなのか分からないので、洗剤のいい香りのする方を着ています」と笑う井口。スーツは今年、肩のカラーが変更されたARD製のものになった。

スーツの下に着るアンダーウェアも難燃性の決められた物を着なければならない。耐火シャツ、ひざ下まである耐火パンツ、マスク、そしてソックスまで、普段身につけるものとは別の物となる。当然夏場は暑いが、これらがドライバーを危険から守ってくれる。しかもDjac製の耐火シャツには、しっかりとスポンサーロゴが散りばめられていて、レーシングスーツ同様スポンサー対策も十分だ。
こんな”防具”に守られているドライバーだが、普段はリラックスできるようなgol.製のカジュアルなウェアを着ていることがほとんど。「先輩の(佐々木)孝太さんから受け継いだのですが、身体にピチッとフィット動きにくいこともありませんし素材の触感も良いですね。ジムに行ってヤマちゃんと会うと、全く同じファッションだってこともちょくちょくあります」と井口は山内とそろって笑う

レースシーンに話を戻そう。耐火服同様ドライバーを守る大事なアイテムがヘルメット。ふたりともArai製の軽量ヘルメットを愛用しているが、今年のカラーリングにはそれぞれの思いがある。「地元九州のカートチームに在籍していた時のものに戻しました。全日本クラスにならないとできないカラーなんですが、上を目指していたハングリーだった時代、初心に戻ろうと思って」と井口。「カート時代に父のお下がりを使っていたんですが、そのカラーです。父(元F3ドライバー)がアイルトン・セナを好きだったのでブラジル国旗の黄色がメインのものです。卓ちゃん(井口)と一緒で、初心に返ろうと思い戻しました」と山内。

次に紹介するのはレーシングシューズ。”GTカー”用のシューズは、フォーミュラ用の底の薄いタイプとは異なり、ブレーキペダルの熱が伝わりにくいようなスニーカータイプを使用するドライバーも多いが、やはり足裏の微妙な感覚は大事。井口と山内が履くAlpinestarのレーシングシューズは、SPK社を通してスペシャルな仕様になっている。生地から吟味されたシューズはスーツと同じカラーに合わせてあり、ドライバーの名前、SUBARUのロゴ、ゼッケンナンバーが入っている。履き違えることのないよう、ラインの色が違っている。井口はチェリーレッド、山内はお気に入りのイエローだ。他のカテゴリーでも使えるようゼッケンナンバーが入っていないシューズも数足あり、井口の場合86/BRZレースやS耐でも愛用している。

最後は夏場の必須アイテム、クールスーツ。FIA GT3にはエアコンが備わっているが、JAF GT車両にはその義務はない。助手席にセットされたクーラーボックスから冷水が流れて、レーシングスーツの内側に着たクールスーツ(上半身のみ)内を循環させている。以前はチューブがヘアピン状に配されていたが、現在は全体にくまなくいきわたるものだ。「去年オリジナルを作ってもらいましたが、お腹が痛くなるほど効きます。ただトラブルもあったので今年は改良してもらいました」と山内。「これがなかったら夏場のレースは無理!」らしい。
激しい運動をするドライバーを守るアイテム、快適にするアイテム、さまざまなウェア&グッズのこだわりはご理解いただけただろうか?