今回は井口卓人と山内英輝に、マニュアルミッション車についていくつかの質問をぶつけてみた。マニュアルミッション車に乗ることは大事なのだろうか?
山内は「以前のレーシングカーってほとんどがHパターンのシフトでした。僕が4輪のレースを始めたのはフォーミュラカーだったのですが、それもHパターンのギアシフト。それに慣れるためにマニュアル車には普段から乗っていました。それまではミッションのないカートでしたから、マニュアル操作に慣れるということで、周囲からもそう言われていましたし。ただフォーミュラのレースを始めてから自動車の免許を取ったので、実際にマニュアルシフトのクルマを運転するようになるまで2〜3年はかかりましたけれど、一番最初のマニュアルミッションはすごく違和感があるというか、難しかったですね」とフォーミュラレースでまずマニュアル車に慣れたという。
井口の場合は自動車免許を取る方が先だった。「まず18歳になって免許を取ってから4輪デビューでした。クラッチ操作はできていましたが、フォーミュラ(FT)はクラッチがすごく重くてなかなかクラッチミートやシフトチェンジができませんでした。免許を取ってからはマニュアル車に乗っていましたが、それに乗っていたから少しは良かったかもしれませんね。若い頃からマニュアルミッションに乗っていたから、今でもチューニングカーやスポーツカー試乗といった今の仕事にも対応できていると思います。86/BRZレースもHパターンですが、今の若い子はマニュアル車に乗れないのでしょうか」。
ということはマニュアル免許を取っていた方が良いのだろうか? 「損はしないと思いますよ」と井口。代わって山内が続ける。「初めてマニュアルシフトのフォーミュラに乗った時はまだ身長も低かったこともあって、クラッチミートの操作ができませんでした。コツがどうしてもつかめないというか、とても苦労しました。だから最初は押し掛けでエンジンを掛けてもらったりして、その日の午前中は大変だった記憶があります。午後には何とか慣れて走れるようになりましたが」
ふたりとも若い頃はマニュアル車を所有していた。「免許を取って2年ぐらいと短かったですけど、やはり信号でのスタートの瞬間の反応みたいなことをやっていました。信号が赤から青に変わるときにすぐにクラッチがミートできるかという練習ですね。それと強化クラッチを入れてのスタート練習もやっていました。熱を入れすぎて変な音がしちゃったこともあります」と山内。「ミートするタイミングというのは、フォーミュラであればメカさんと相談して自分の好みの位置に変えることができますが、普通のクルマはそれができないしクラッチ板が減ってくればその位置も変わってくるし。ですから免許を取ってから10年ぐらい、今でも(テストや試乗などで)マニュアル車にはずっと乗っていますが、運転時は繊細な感覚を研ぎ澄ますようにしています。それに日頃から信号反応をやっていると、レースでもミスなくやれるのでそのあたりは大事でしょうね」とは井口。そして「マニュアル車を運転することはとても楽しい」と口をそろえた。
ふたりとも現在メインで乗っているSUBARU車はCVTスポーツリニアトロニックだが、それを使用したスポーツ走行の練習はできないのだろうか? 「基本CVTスポーツリニアトロニックでは攻めた走りはしません」と井口はきっぱり。「大事に乗ってるクルマでガンガンに走ったりはしませんね。練習になるのはやはり安全なサーキットでの走りです」と山内が言えば、「一般道では攻めた走りは再現できないしやっぱりカートでも4輪でもサーキットを走らないとダメ。それに対向車が来なくて、飛び出したとしても安心なサーキットが一番」と井口が続ける。そして最後に山内が「公道ではルールを守り、やってはいけないことは決してやってはいけない」と強く念を押した。