SUPER GT

BACKSTAGE COLUMN

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2026.10.22

「EG33改エンジンは、EJ20型とは同系統なんです」

STIパワーユニット技術部 長田和富

今季より投入されたEG33改型六気筒水平対向エンジンを搭載したBRZ GT300のパフォーマンスは、期待されながらなかなか本領発揮できていない印象でした。しかし、第6戦SUGOで見せたパフォーマンスは、大いに希望が持てる内容でした。やはり、レースカーはパワーユニットとシャシーが高いレベルでバランスして初めてポテンシャルを発揮するものだと実感しますね。さて、デビューから半年が経過した9月某日、このエンジンの設計リーダーを務めたSTIパワーユニット技術部課長の長田和富(おさだ・かずとみ)に話を聞きました。
MSM ベースとなったエンジンの素性などを教えていただけますか。

長田 「現在、スバル量産エンジンのラインアップに六気筒エンジン搭載車はないのですが、元々北米向けレガシィ用に開発されたEZ30型が、国内向けBH系レガシィランカスター(2000年〜)に搭載されてから、後継のアウトバックBP系にも受け継がれました。その後、アウトバックBR系には輸出専売SUVのB9トライベッカ用にパワーアップされた3.6LのEZ36型が搭載され、2014年まで国内でも販売していました。これらの六気筒水平対向エンジンは、北米市場のニーズに応えるためにトルクは厚く、高速巡航性能が安定しているという素性を持っています。しかし、元々EJ20型四気筒エンジン車のボンネット内に収めるために全長を最小限に抑えて設計されたものであり、コンパクトに作られておりターボ過給するには体力的に厳しいんです。つまり、レース用のベースエンジンとするにはやや不向きだったと言えます。しかし、SUBARUには、もう一種類六気筒エンジンがありました。EZ30型よりさらに一世代前、1991〜1996年生産のスタイリッシュクーペであるアルシオーネSVXに専用搭載していたEG33型です。骨格的には、耐久性・信頼性の面でも心配ない。今回は、これを直噴3.0L化しツインターボ過給することでSUPER GTで戦えるレース用エンジンとして開発しています」
MSM 企画段階から、設計・実験を経て実戦投入までには相当な時間がかかっているんでしょうね。また重量的にはだいぶ重くなる六気筒エンジンをBRZシャシーに載せるとクルマの操縦性などキャラクターは大きく変わってしまいますよね。

長田 「開発期間について具体的にはお話しできないのですが、レース用エンジンとして完成してから実戦投入するまでの試験期間は、大体一年ぐらいしかありませんでした。ご存知の通り、2025年にBRZ GT300は車体を新しくしています。外観的には大きな変更はありませんでしたが、このH6エンジン(水平対向六気筒エンジン)を搭載することを前提に再設計したものでした。全長が長くなるので、重量配分的には少し厳しくなりますが、トルクや出力の余裕は換え難いものです。その重量配分の変化を抑える為に、EJ20型ではエンジンの前方に重量物であるターボチャージャーを置いていましたが、EG33改型ではエンジンの上に2個置いて、変化代を抑えています」
MSM このH6エンジンを開発するにあたり、特に留意した点、または小澤(正弘)総監督から指示された点はありましたか。

長田 「まずは勝てるエンジンを、と言われました(笑) もちろん当然のことですが、レースは走りきることが最低条件なので、信頼性の確保が大きなテーマでした。何せEJ20は余裕が全くなかったので、ギリギリのところで使っていたというのが実情でした。今度は3.0Lエンジンですから、パフォーマンスを上げることは可能です。物理的に考えても四気筒と同じパフォーマンスだとすると、六気筒であれば一気筒あたりの負担は減るわけです。そこを耐久性などに振り、信頼性を上げるというのが基本的な考え方ですね」
MSM デビューから半年経過して、初期に心配していた点は何かありますか。またレース燃費は、想定通りでしょうか。

長田 「何せ、ベンチ試験、実車評価も含めて一年程度しかなかったので、シーズン開幕前までに膿を出し切るつもりだったのですが、実戦を走ると色々と出てきます。特に冷却性能については、実車でしか把握できないことも多く、第3戦がスキップされた期間を活用し、性能向上に取り組みました。第4戦富士ラウンドからはラジエターとインタークーラーのマウント方法を変更して、フロントの開口部を拡大しました。これによって、富士と次の鈴鹿、SUGOでその効果は発揮されています。実は、燃費性能についてはあまり心配していないんですよ。元々EJ20では、過給遅れを防ぐためにアンチラグシステムを採用していたので、どうしても燃費的には不利でした。しかし、今回はその必要が無いので、排気量が増えた割に燃費は悪化していません」
MSM ところで長田さんは何年入社ですか。

長田 「1992年です。新卒で東京事業所内にあるスバルグループのエンジニアリング会社に入社し、長く富士重工業(現SUBARU)のエンジン設計部門で働いてきました。配属の時から、モータースポーツ用エンジンの設計に関わっています。ちょうどレガシィでWRCに挑戦をしていた頃です。翌年にはインプレッサの開発が進み、勝利を重ねて1995年から3年連続でマニュファクチャラーズタイトルを獲得しました。だから僕自身は、どっぷりEJ20のWRC用エンジン開発に携わっています。もちろんSTIと力を合わせてSUPER GT用エンジンの開発にも関わっています。つまり、30年以上EJ20しかやっていない感じでした。そもそもEG33というエンジンは、EJ20の北米仕様バリエーションのひとつであるEJ22に二気筒を追加した形なので、EJ20とは同系統。お兄さんのような関係です。だから、WRC時代から延々と続くEJ20系譜の延長上にあるとも言えるでしょうし、僕にとっても親近感があります。縁あって、BRZがGT300チャンピオンとなった2021年にSTIに異動し、この4月からモータースポーツエンジン設計課を預かることになったので、SUPER GT用エンジンに加えてニュル用FA24エンジンも守備範囲に入っています。いずれも高いパフォーマンスと信頼性をバランスさせながら、最大限の結果を目指して開発を進めていきます。ファンの皆さんのご期待に応えられるよう、精一杯頑張ります」
エンジン設計の方が表に出られる機会はあまりありません。しかし、今回長田さんの経歴と実績をお聞きし、とても頼もしいと感じました。今後もSUBARUモータースポーツエンジンを輝かせ続けてくれると思います。
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