2017年シーズンのSUBARU/STIチームは、新たなチーム体制の構築、トランスアクスル方式の導入など、様々な新機軸に取り組みましたが、思うような結果を得ることはできませんでした。マシントラブルに起因する走り込みの不足によって、車両セッティングに悩まされることも多く、表彰台は第3戦オートポリスの1回のみ。とはいえ、終盤戦では全方位的なパフォーマンスの向上がみられ、2戦連続リタイアという不名誉な結果に終わるもスピードを取り戻す兆しを見せました。厳しい状況のなかにあってもチームは着実に車両の進化に努め、毎戦ごとに改良に取り組みました。ドライバーを務める井口卓人/山内英輝のふたりも、常にひとつでも上の順位を目指す姿勢で果敢な走りを見せ、1年間を戦い抜いたと言えるでしょう。
SUBARU BRZ GT300の2017年シーズン予選成績は、開幕戦から順番に6番手、6番手、2番手、4番手、5番手、8番手、5番手、13番手。全戦でQ1セッションを突破し、ブレーキトラブルに見舞われた最終戦以外はすべてシングルグリッドからのスタートを達成しています。しかしそのスピードが結果につながったのは、予選2番手でスタートした第3戦の2位のみでした。シーズン中から言われているとおり、SUBARU BRZ GT300は単独では速くても、混戦の中でコーナリングスピードを100%活かし切れなかったということです。
その弱点が大きく出てしまったのが、これまでSUBARUが得意としてきた第6戦の鈴鹿1000kmでした。結果は予選8番手からの7位。辰己英治総監督はレース直後のコメントで、次のように語っています。
「作戦やタイヤは悪くなかったと思いますが、相手のペースで走らされてしまった部分も大きいと思います。現状のSUBARU BRZ GT300では、あれ以上は速く走れません」
圧倒的なコーナリングスピードを発揮すべく熟成されてきたSUBARU BRZ GT300にとっては、ライバルに行く手を遮られスピードを活かせないという、実に歯痒いレースが続きました。もちろん、チームはその後も“決勝に強い”SUBARU BRZ GT300を完成させるべく様々な取り組みを行ってきましたが、シーズン中にその弱点を克服することはかないませんでした。当然ライバルも、シーズンをとおして性能向上やセッティングの最適化を行ってきています。すべてのチームが上を目指す厳しい状況で、それらを上まわる強さを獲得するためには、開発スピードの一層の向上、チーム力の向上など、多くの課題を乗り越えていかなければならないことを、チームの誰もが感じた1年だったのではないでしょうか。
シーズン終了後、すでにテストも実施
ツインリンクもてぎ(栃木県)での最終戦を終えたのち、チームはブレーキトラブルの根本的解決を図るべく富士スピードウェイ(静岡県)でテストを実施しました。
「テストは順調に終わりました。ブレーキトラブルの原因は簡単に言えば、容量の問題です。フロントブレーキの熱が上がりすぎてしまう。2017年シーズン、シャシー性能が向上したことに、完全に対応し切れていなかったということでしょう」と、辰己は説明します。SUBARU BRZ GT300は、ブレーキングを武器としたクルマです。当然ブレーキには大きな負担がかかりますが、今年はスピードが向上したことでよりいっそう大きな負担がかかることとなってしまったのです。さらに最終戦の舞台であるツインリンクもてぎは短いストレートを小さなコーナーでつないだ『ストップ&ゴー』と呼ばれるサーキット。そのため、ほかのサーキットでは出なかったトラブルが発生したのではないかと辰己は分析します。もちろん、トラブルを解決しただけでは弱点を克服したことにはなりませんが、強さを取り戻すための第一歩と言えるでしょう。シーズンオフを経て、さらに強くなるSUBARU BRZ GT300にご期待ください。
12月10日(日)に富士スピードウェイで開催されるTOYOTA GAZOO Racing FESTIVALでは、辰己、井口、山内によるトークショーやSUBARU BRZ GT300のデモンストレーションランが実施される予定です。2017年の大きなイベントとしてはこれが最後になる予定です。またSUBARUブースでは車両展示のほか、この1年の戦いに華を添えてくれたSUBARU BRZ GT GALS BREEZEのフォトセッションも実施予定。ご来場予定の方は、ぜひSUBARUブースにいらしてください。