今回のレースは、チームの今年の総合力の結果が現れました。厳しいレースでしたが、ドライバーは最後まで諦めずに戦ってくれました。SUBARU BRZ GT300は、すべてが限界ギリギリのところで走っているので、ひとつのミスも許されないのです。1000kmという長丁場で混戦のなか、かすり傷ひとつ負わずにマシンをフィニッシュまで運んでくれた点はドライバーふたりに感謝ですね。
走り込み不足の影響は大きい
これまでも再三言っていますが、今回のレースの結果は、やはり走り込みが足りていないことが影響しています。予選では前後ともタイヤが十分に温まっていなかったのです。それが8番手と苦労した原因でした。今年、練習走行で多く発生しているトラブルが、こういう結果を招いていると言えるでしょう。タイヤの温度については、予選終了後に気がつきました。セッティングと重量配分の変更でクルマ自体は曲がりやすくなっていたのです。これについてはドライバーを責めることはできません。なにしろ走れていないのですから。ともあれ原因が分かったので、決勝の前に行なわれたウォームアップ走行の手応えは良かったですね。決勝レースでも、クルマはバランスがとれていて、燃料を満タンにして重い状態でも問題はありませんでした。
ではなぜダメだったのか。今シーズンこれまでのレースを振り返ると、開幕戦の岡山ではリタイアしたものの、戦うことはできました。第2戦の富士は全然ダメ。第3戦のオートポリスは2位。第4戦SUGOはセーフティカー(SC)に翻弄されましたが、内容は悪くありませんでした。そして第5戦の富士は4位。ストレートの厳しい我々としては富士で4位というのは上出来です。そして今回の第6戦鈴鹿では、予選8番手、決勝7位。SUBARU BRZ GT300としては、あれだけ得意なサーキットで、あり得ないリザルトと言っていいでしょう。それこそ、第5戦富士の4位はなんだったのかと思うくらいです。
ストレートでクルマがあっさりと抜かれてしまったのは、第2戦と今回なんです。両方とも距離が長いので、エンジンを耐久性に振った仕様に変更しているんです。もちろんベンチではスプリント用と同じような数値が出ていますが、抜かれない領域にわずかに届いていないということなのでしょう。鈴鹿の短いストレートであれほど簡単に抜かれるというのは、これまでありませんでした。前戦の富士と比べてたった16kg増えただけであれほど遅くはならない。ウチが遅いのか、ライバルが速いのかは分かりませんが、あれでは勝負になりません。EJ20エンジンも性能調整の中で限界までパワーを絞り出していますから、微妙なところのサジ加減が結果を大きく左右するということです。
STIのエンジンエンジニアには原因の追求を指示しました。データ比較や机上の検討だけでは絶対に分からない部分があるはずなので、すべてのパーツを調べるつもりでやってくれと。実際のエンジンはそこにあるわけですから。クルマというのは人間が乗り、操るもの。そういう感覚で煮詰め直さないとなりません。レーシングドライバーが乗れるものを作るのが我々の仕事ですから、それがまだできていないということですね。
残りのシーズンも精いっぱい戦います
今回のレースでは、ライバルに前を塞がれるケースが多かったですね。人間の心理として、前にクルマがいるというだけで必ずブレーキングは手前になってしまう。見えているだけでダメなんです。だからラップタイムも伸びないのです。単独で走っていればもっとペースは上がっていたでしょうね。今回は5回のピットストップが義務づけられていましたが、SUBARU BRZ GT300はリヤタイヤ2本交換が2回、4本交換が2回ですから、計12本交換しています。4輪無交換で走ったスティントは厳しかったですが、それくらいのトライをしないと勝つことは不可能だと思っていましたし、ここが勝負だと思っていました。最終的には予選で今ひとつの成績にしてしまった私の責任です。
約6時間にもおよぶレースでしたが、ゴールした後にもSUBARUファンの方々がいっぱい来てくれました。わざわざサーキットまで観に来て、ブザマに負けていく姿を観て非常に悔しいはずなのに、です。握手したりサインしたり写真を撮ったりしながら、「こんなに負け続けてもまだ応援してくれているんだな」と、あらためて感動しました。それと同時に、我々も悔しいですが、もっと悔しいのはSUBARUファンの方々なのだということを、チームのメンバーやドライバーにも伝えなければならないと思ったのです。これからも真面目に、真剣に戦いに挑む姿勢であり続けることはもちろんですが、応援してくれる方々のためにも、残りのシーズンも精いっぱい戦って結果を出さなければならないと気持ちを新たにしました。