
今回の富士のレースは、予選でポールシッターとは僅差の2位を取れて、ファンの方々も喜んでくれましたし私たちの士気も上がりました。決勝では最初のピット作業まで順調に走っていましたが、井口から山内に代わってからエンジンに異常が出始めました。ただラップタイムも落ちていなかったのですが、突然白煙を噴いてパワーがなくなり折り返しを過ぎた55周目のダンロップコーナー先でクルマを停める結果になりました。応援してくださった大勢のファンの方々にも申し訳ない気持ちでいっぱいです。チームの雰囲気も非常に明るくなっていただけにですね。

BRZ GT300は非力な2リットルターボエンジンを搭載しており、SUPER GTではパワー的にストレートスピードには厳しいものがありました。それでレースで勝つために、それまで得意としていたコーナリングスピードを伸ばす方向でやってきました。しかしそれだけでは勝てないということが分かりました。クルマ自体は低重心なシンメトリカルボクサーエンジンを搭載していますから、コーナリングスピードに長けている。しかしストレートでライバル勢に簡単に抜かれるというのは、見ているファンの方々にも運転しているドライバーにも良くありませんしレースになりません。

ですから、コーナーはそのままでストレートを速くしようと、低ドラッグ仕様のエアロを作りました。エンジンの改良も”乾いたタオルを絞る”つもりでやってきました。それで今回の予選2位という結果が出ました。ストレートスピードはトップではなかったものの、それに近いものが出ました。ドライバーもストレートで簡単に抜かれなくなったことで、精神的に楽になったと思います。

BRZ GT300に搭載しているEJ20エンジンは、1990年代のWRC(世界ラリー選手権)からノウハウを重ねて既に改良し尽くしたエンジンです。重箱の隅をつついて、まだやり残した部分もあるのではないかとさらに詰めていった結果が、もしかしたら今回のトラブルの原因なのかもしれません。良かれと思ってやった結果が、レースで戦える品質になっていないのかもしれません。最近はテストを含めトラブルが起きることが多く、満足に走れていればもっと進化していると思うのですが、正直トラブルが多いですね。
次の鈴鹿ですが、コースはコーナーも多く元々得意とするサーキットです。前回のGT合同テストでもタイムは良かったですから、ドライバーもスタッフも好感触を持って臨みます。ここで力を発揮できれば表彰台も狙えると思っています。というか、今回逃したらいつやるんだという気持ちです。鈴鹿用のエンジンも準備していますが、きちんと対策を施して鈴鹿入りしたいと思っています。