今回の富士500マイル用のエンジンは、タイまで使っていたものと全く同じ仕様のもので、以前に使用したエンジンをオーバーホールしたものです。タイでのエンジントラブルは、路面の凹凸で起きた振動などでクランクシャフトに負担がかかったのかもしれません。前半4戦のうち富士とタイでエンジントラブルのために2回のリタイアを喫したわけで、自分たちは膿を出し切ったつもりでいました。ですから今回はエンジンのトラブルが起きないよう長いレースに臨んだわけですが、予想だにしなかった電気系トラブルに見舞われ、早い時間帯にレースを終えなければなりませんでした。
今回の富士500マイルはハンディウェイトも22kgと軽量ですし、公式練習は4位、公式予選も6位と上位を狙える位置につくことができました。少し順位は落として9位を走っていましたが、レースは長いし巻き返しは十分できると意気込んでいたのですが、22周目の最後の上り区間でまさかのストップ。
ドライバーの話によると、突然アクセルを踏んでもエンジンが吹けない状況だったようです。BRZには航空機や軍事用にも使用されているキャノンコネクターという信頼性の高いコネクターを使用していますが、これの接触不良がトラブルの原因でした。このコネクターは接続のためのピンの信頼性を高めるためにSTI社内で組み付けをしています。以前は専門家に頼んでやってもらっていましたが、それでも失敗することがあり、STIでは何年も社内でこの作業を行ってきました。その作業は非常に繊細なもので、シャープペンシルの芯ほどのものを組み付けています。しかしこれが接触不良を起こしてしまいました。
キルスイッチを切ったり入れたりすることでエンジンはかかるのですが、パドックに戻ってきた車両をチェックしてもアイドリング状態からエンジンの回転数が上がらない状態でした。もう悔しさを通り越した状態でしたが、富士に応援に来てくださった大勢のファンの方々には申し訳ない気持ちでいっぱいです。しかし悩んでいても仕方がありません。前を向いて残りの3戦で万全なレースが展開できるよう準備をするだけです。次のSUGOはJAF GT勢には有利なコースですし、ウェイトも軽いのでファンの方々に笑顔で帰っていただけるような結果を目指して頑張りますので、応援をよろしくお願いいたします!(※8月10日にスポーツランドSUGOで行われたタイヤテストにおいて、SUBARU BRZ R&D SPORTはGT300クラス10台中、トップタイムをマークしている)。