SUPER GT

BACKSTAGE COLUMN

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2021.04.19

新型SUBARU BRZ GT300のデザイン開発

待ちに待った2021年のSUPER GTシリーズが、開幕。開幕戦の岡山国際サーキットでは、新型SUBARU BRZ GT300は公式練習でトップタイムを記録するなど前モデルの「速さ」を引き継いでいることが証明されましたが、公式予選でタイミングを逃したことから、後方スタートとなり望んだ結果を得ることはできませんでした。しかし、新型SUBARU BRZ GT300のスタイリングは、断然カッコいいと評判でした。今回のバックステージコラムは、SUBARU MOTORSPORT MAGAZINE編集者(以下MSM)がこのマシンのエクステリアデザインを担当したSUBARU商品企画本部デザイン部次長の河内敦(こうち・あつし)にデザイン開発の話を聞きました。
MSM ものすごくカッコいいレースカーになりました。GT300マシンを手がけるのは大変だったのでは。
河内 早い段階からチーム監督や開発スタッフの皆様とミーティングを持ち、車両レギュレーションや前モデルからのフィードバックについて把握しました。運動性能や空力の進化の過程などを聞いてからデザインを始めました。私たちにとっても新しいチャレンジでしたが、時間をかけて良いものになったと思っています。
MSM ルールおよび技術的な要件がある中で、デザインではどういう点に留意されましたか。
河内 このクルマの最も特徴的なのは、フロントフェンダーの形状ですね。ダウンフォースを如何に得るか、ということがテーマなので、フェンダー上部が丸くなくフラットな方がリフトを抑えられることがわかっており、また、SUBARU BRZはフロントのオーバーハングが短く、フェンダーのサイド面が少ないので、空気を跳ね飛ばしてしまう傾向があるので、なるべく側面を作るためフェンダーを少し前に伸ばしています。量産車の新型SUBARU BRZのシェイプがわりと柔らかくてマッスルな造形をしていますので、イメージの乖離がないように留意しています。フロントだけでなくリアフェンダーについても線質を考慮しながらデザインしました。何度かの打ち合わせを経て、1/4のクレイモデルを作りデータを起こしたのですが、空力解析をすると、理想と異なる部分があったので、それらをチビチビと修正する作業には時間がかかりました。面とか小さな角のアールなど、とても細かいことですがCFDデータに照らし合わせながら、地道に直していきました。それらには半年以上の時間がかかりました。
MSM リバリーが一新され、イメージはだいぶ変わりました。
河内 新しい造形に合わせて、カラーリングも考え方を少しモディファイしました。もちろんこれまで通りSUBARUブルーとチェリーレッドを使っているのですが、SUBARUの象徴であるブルーのボディの中心にSTIのチェリーレッドを通すことで、STIのスピリッツとか哲学が芯を貫いていることをテーマとして表現しています。芯を通したことで、シンメトリカルであることも合わせて表現したつもりです。このストライプがあることで、ブラインドコーナーを立ち上がってくるレースカーが一眼でBRZであることが認識できるということも意識しました。
MSM 新しくなったトランスポーターも河内さんたちのグループがデザインされているのでしょうか。
河内 はいそうです。トランポを新造するということで、これまでのブルー基調に加えて、ブラックを一部分に加えることで、ブルーを際立たせています。また、レース場の所定の位置に設置すると、可動式のアッパーパートが持ち上がる構造になっているので、そのスペースにBRZ GT300のシルエットとProud of Boxerのレタリングをレイアウトしてみました。サーキットに到着して初めて現れる、内に秘めたプラウドやみなぎる闘志を表現しています。
このほか、ノーズ先端の造形も前モデルでは、乱流に課題がありましたが、新型ではすっきりしています。また、ロードカーのシルエットを残したリアエンドもバンパーから下は大胆な造形になっており、カナードを装着してここでもダウンフォースが稼げるようになっていますし、リアフェンダー後端の処理もこれまでのデータ蓄積がデザインに生きていることが感じられます。小澤正弘総監督も「レギュレーションで基本形状は量産ロードカーのサーフェスをなるべく残すように決められているので、変更できる部分は限られているのですが、トランクフードのダックテール形状などはレースカーでも有効に機能しています」と語っています。ハンドリングマシンであるBRZ GT300の正常進化のキーのひとつがダウンフォースの獲得であり、それにはデザイナーの地道な努力が隠されていることがわかりました。
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