SUPER GT

BACKSTAGE COLUMN

  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
2021.08.27

「まだまだEJ20には改善の余地があると思います」

SUPER GTのピットでは、セッションの最中にマシンがガレージに入るたびノートパソコンをケーブルで繋ぎ、データをダウンロードしている人物がSTIパワーユニット技術部の白倉寛之です。レースカーの心臓といえるパワーユニットを管理し、予選向け、決勝レース用のセットアップを使い分ける彼は、チームの中でも重責を担っていると言えるでしょう。8月21日土曜日の予選でポールポジションを獲得したのち、SUBARUモータースポーツマガジン(以後MSM)取材班が白倉に直接お話を聞きました。
MSM 白倉さん、予選のエンジンセットはバッチリでしたね。
白倉 予選ではもちろん目一杯攻めたセッティングにしています。BRZ GT300のパワーユニットは参加車両の中で最小排気量であり、いつでもパワーと燃費のバランスを考えながらレースウィークを過ごしています。アンチラグのセッティングひとつで燃費が変わってしまいますからね。特に予選ではドライバーがベストパフォーマンスを出せるよう、過去のデータなどから予選セットを決めています。夏の鈴鹿は、気温が高く湿度も高く、空気密度が低くなるのでパワー的には厳しい環境ですが、今回のようにドライバーたちが頑張ってくれて、ポールをとれたのはエンジン屋にとっても張り合いになります。また、頑張り甲斐のあるクルマにしてくれて感謝しています、というドライバーの言葉は何よりも嬉しい褒め言葉ですね。
MSM レースウィークにサーキットで実施していることはどんなことでしょうか。
白倉 まずは、GTAから発行されるブルテンなどを事前に確認し、それに合わせてエンジンのセッティングをどうするかを検討します。サーキット毎に燃料銘柄が異なるので、燃料密度なども良くチェックしています。サーキットに到着すると、当該地域のピンポイント天気予報をしっかりチェックします。それは結構重要で、気温を予測してラジエターにあてるエア量などを調整しています。我々のエンジンには、ロードカーのようにサーモスタットがついていないですから。フリープラクティス中には、水温・油温などを含めそれらの事前準備が実情にマッチしているかを確認し、予選のセッティングを自分の中で組み立てています。鈴鹿は、エンジンがコンパクトで低い位置にあるため回答性に優れたBRZにとって、相性の良いサーキットです。S字のような連続する切り返しやシケインのような箇所では、パッとエンジンが反応するレスポンスとそこに必要なパワーやトルクが出せることが重要です。ドライバーが扱いやすいと感じることが大切なんです。決勝レースでは、燃費が重要なファクターとなります。燃費とドライバビリティのバランスがとっても難しく、パワーばかりを意識すると燃費が厳しくなり、戦略的にも辛い状況となります。セッティングは、その攻めぎあいの中にあります。
MSM ドライバーからエンジンに関する厳しいリクエストはあるのでしょうか。
白倉 ドライバーは常にパワーを求めるものです。要求に限りはありません。しかもパワーを出してもピーキーで使いにくいものにセットすれば、フラストレーションになります。それよりも必要な時に適切なパワーとトルクを割り当て、しかも瞬時に反応するレスポンスのほうが重要です。かつては、ドライバーからあれこれリクエストがあり、こちらも必死にそれに応えようと努力しました。数年前は攻めすぎてエンジンを壊すこともあったのですが、最近ではそういったこともなく、ドライバーから不満を受け取ることが少なくなりました。というか、ほとんどエンジンに関する要求がないので、実はちょっと寂しいな、と思っているくらいです。たまにはエンジンについてももっと要求して欲しいな、と。
MSM 近年はセンサー類が発達して、エンジン側でもケアする項目が増えているのでは
白倉 その通りです。チェック項目は以前に比べてかなり増えています。それでもフリープラクティス時には、いくつかの重要項目だけ注目して短時間で確認しています。マシン全体のセッティングの中でエンジンにだけ時間を割くわけにはいかないので。トータルバランスの方向性が決まってきたら、他のデータもよくチェックして異常値がないかを確認しています。そうすることで、トラブルの未然回避やセッティングのアジャストに活かしています。
MSM エンジンに関する改善の余地はまだあるのでしょうか
白倉 SUPER GT用のEJ20エンジンは、インナーパーツや補機類、車載時のサービス性をも含め、時間をかけて少しずつ改善・改良を重ねています。エンジン設計担当者が過去のトラブルの解析や対策追求を進めてきた結果、現在では高い信頼性が確立されてきており、セッティングする僕たちにとっても安心して攻めることができています。また、補機類を含めたエンジン回りのサービス性の向上については、常に見直しを心がけています。燃費についても、まだ制御や組み立て精度、耐熱信頼性などを改善することで伸ばしていけると思います。EJ20は歴史あるパワーユニットですが、まだまだ改善の余地はあると思います。

山梨県出身の白倉は、大学で内燃機関を学び、水素エンジンを作った経験もあるとのこと。その後、輸送機器会社のパワーユニット設計を経て2016年にSTIに中途入社。以来、SUPER GT出場車のエンジンセッティングを担当している。
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
  • vol.
Scroll to top