SUPER GTシリーズは、第4戦タイラウンドを終え、このあと富士500マイル、オートポリス、スポーツランドSUGOと真夏のレースが続きます。この4連戦を戦い抜くため、SUBARU BRZ GT300は、どのような熱対策をしているのでしょうか。また、レギュレーションではどこまで許容されているのでしょう。この疑問をSTI総監督の渋谷真に尋ねました。
「SUPER GTシリーズに私たちが投入しているSUBARU BRZ GT300は、WRC参戦時代から使用している2リッターターボのEJ20エンジンを目一杯にチューニングしています。それに比べてライバル勢は3.5リッターツインターボから6.2リッターNAといった大排気量のエンジンを搭載し、性能調整でディチューンして使用しています。やはりチューニングしたエンジンは熱を持ちますので、夏場はそれにどう対処するかということが非常に重要になります。
タイ、富士、オートポリス、SUGOの4連戦は暑いシーズンに行われるのですが、前回の鈴鹿も外気温が高温になると予想されたので、高さを増やしたラジエターに交換しています。これで冷却性能がアップしました。
今回GTアソシエイションからJAF GT車両に対し、夏場の熱対策として車体開口部のルーバーとリップに対する特別措置が出ました。つまり放熱を目的に開口部に高さ50mmまでのルーバーやリップを追加できるようになり、真上から見た時エンジンは見えてはいけないのですが、今回からSUGOまでは50%まで見えても良いということになりました。
そこで開口部の大きな新しいボンネットフードに交換し、高さのあるガーニー(STI/R&D SPORTではルーバーをこう呼んでいる)を装着しています。開口部を広くすることで、床面や前面から取り入れたエアでエンジンルーム内の熱のこもった空気を外に出し、エンジンの冷却性能を上げようというものです。今回はご覧のようなボンネットとルーバーですが、SUGO戦の時は微妙に形が異なっているかもしれません。細かく改良していかないといけないでしょうね。
ガーニーはエンジンルームのエアを引っ張り上げる役目を果たしています。規定では高さは50mmまでOKですが、今回は30mmにしました。ガーニーを装着するとエンジンルームのエアの抜けが良くなりますが、反面空気抵抗が大きくなってしまいます。どちらが大事かということですが、私たちはエンジンを守りつつ、安定した出力を得るためにも冷却性能を上げた方が良いという判断です。また、排気熱が上がると(燃料が沸騰して気泡ができ通常の燃料供給ができなくなる)パーコレーション等が起きやすくなりますので、燃料系の配管には熱を遮断するようなカバーをしています。ブレーキの冷却は多少余裕があるので、ブレーキダクトから配管を分岐させてインジェクターあたりに風を当てて冷やすこともしています。
ドライバーに関しては、鈴鹿からクールスーツを搭載して対処しています。氷とドライアイスで冷やした水が流れるジャケットをスーツの内側に着用していますが、十分冷えているようですから問題ないでしょう。
夏場は外気温が上昇し空気の密度が下がるために、どうしてもエンジンの出力は下がってしまいます。富士スピードウェイのレースでも5月と8月ではタイムの差が出ます(一昨年と昨年は、路面温度やウェイトハンディの違いもあるが、5月の方が予選タイムは約1.5秒速い)。空気の密度が下がるということは、空気抵抗が少なくなるということでもありますが、私たちにとっては圧倒的にエンジンがつらいので、細心の注意を払っています。スターティンググリッドでもボンネットを開けて傘などで日陰を作り、少しでもエンジンルームの温度が上がらないようにしているほどなのです」
以上を頭に入れて次の富士500マイルからSUGOラウンドまでのBRZ GT300の動向に注目してみましょう。特に、オートポリスとSUGOは、BRZ GT300にとって相性の良いコースです。好成績を期待したいですね。