SUPER GT

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2021.12.01

「お互いのリスペクトが好循環を生み出す」

皆さんすでにご存知の通り、SUBARU BRZ R&D SPORTチームは、2021年SUPER GTシリーズGT300クラスの年間総合チャンピオンとなりました。2009年にSUBARUレガシィB4 GT300でこのシリーズに参戦し、2012年からはSUBARU BRZ GT300を投入。そして、本年SUBARU BRZのフルモデルチェンジに従い、レースカーも新型SUBARU BRZ GT300となっています。 2009年から足掛け13年、そこには様々なドラマがありました。近年は、特に予選で速さを見せられるようになり、さらに今年はどんなコースでもどんな条件でも良い結果を掴める強さを身につけてきました。その結果、ようやく念願のシリーズチャンピオンの栄冠を手にすることができたのです。今回のコラムでは、SUBARUモータースポーツマガジン記者(以下MSM)が、チーム総監督の小澤正弘に今シーズンを締めくくる総括インタビューをお願いしました。
MSM 小澤さん、シリーズチャンピオン獲得、おめでとうございます。早速ですが、今シーズンを振り返り、総括をお願いできますか。
小澤 ありがとうございます。まずは、ファンの皆様とスポンサーの皆様に応援のお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。ドライバーだけでなく、私たちチームもみなさんのご声援を勇気に代えて、踏ん張ることができました。心から感謝しています。
さて、長年このクラスに参加してきたことで、マシンは徐々にパフォーマンスを蓄えてきました。その結果、昨年モデルはだいぶ速いクルマに仕上げることができていました。特別大きな技術的チャレンジをインストールしたわけではありません。あくまでも経験の蓄積を少しずつ性能向上に繋げ、弱点を潰してきた結果です。その良い感触をそのまま、2021年ニューモデルにも継承していたので、シーズンオフの開発テストの段階から「これはいけそうだな」という手応えを掴んでいました。まさに前モデルの正常進化版なのです。良いタイムも出るようになってきましたし。しかし、それは気温の低い条件下であり、実はレースパフォーマンスの点では、まだ不足している部分が残っていたのです。それによって、前半戦はセットアップに悩み、ドライバーたちも首を傾げることが多かったと記憶しています。
MSM 私自身、プレシーズンテストを見ていたら、ニューカーも相当速いという印象だったので、開幕岡山では正直、おやっと思いました。
小澤 そうですね。それがレースパフォーマンスの欠如だったということができます。次の富士ではポールも取れたし、決勝でも2位に入れましたが、まだ違和感は拭えていませんでした。次のもてぎでもタイヤがマッチせず、レース途中でグリップを失う事態となっています。さらに8月の鈴鹿では、得意とするコースにもかかわらずポールスタートから10位フィニッシュという不甲斐ない結果で終わっています。ここでちょっと待てよ、タイヤとマッチしないのは、気温・路温などの条件変化だけではないんじゃないか。クルマ側でもやれることをすべてやろうと考えました。そこで、シャシーを担当するR&D SPORTと共にサスペンションなどをしなやかに動かすセットアップを追求することにしました。タイヤに適正な荷重をかけるためです。ちょうどこの頃、オートポリスでテストを行いました。基本は10月のレースに備えたテストだったのですが、生憎の雨でした。しかし、この雨が実は恵みの雨だったのです。グリップの薄いウェットコンディションで適正荷重をかけるセットアップを見出すことができたからです。そこで掴んだセットアップをベースに次のSUGOで試してみると非常に良い感触でした。結果はご存知の通りです。
MSM その頃からですね。私たちも外から見ていて、チームの雰囲気がガラッと変わったと感じました。以前はレース日の天気や気温によって、ドライバーやチームの皆さんが練習走行前から厳しい表情をしていたこともありましたが、どんな条件で大丈夫、という雰囲気に変化しましたよね。
小澤 そこまで一気には変わりませんでしたが、希望は見えましたよね。 また、過去を振り返ってみると、以前はパワー追求ばかりに目が行き、シーズン前テストでもテスト中に不具合が発生してみんなに迷惑をかけていました。テストはその都度中断ですし、なんといってもマイレージが稼げないから適正なセットアップが見いだせないままレースウィークに突入する悪循環だったと思います。なので、私がSTIに戻ってきた時、まずエンジンは出力を少し落としてでもとにかく信頼性をあげることに集中しました。そうすることで、ロングランテストも計画通りに実行できるし、セットアップが決まってくればエンジンセットに関してもさらに熟成が進みます。まさに、良い循環が生まれます。また、STIが担当するパワーユニット、シャシーを担当するR&D SPORT、ダンロップさん、そしてドライバーを含めて、様々なアイディアや情報を共有することで、それぞれの技術を尊重する雰囲気になっていったことが大きかったのだと思います。そうすることで、それぞれの専門領域でライトディシジョンを下せるようになってきました。だから、コースや条件変化があろうとも適正パフォーマンスが発揮できるようになっていったのだと思います。いまでは、たとえばダンロップさんが提案してくるタイヤセレクトに異論を唱えるメンバーはいません。それぞれがライトディシジョンをしているという信頼感があるからです。
MSM そういえば以前エンジンが壊れて困っていた時に、小澤さんが”機械なんだから直せないトラブルなんて存在しない”と言っていたことを思い出しました。
小澤 ずいぶん昔の話ですね。2020年に信頼性確保に振ってからは、大きなエンジントラブルはありません。2020年のもてぎではウォームアップ走行前にエンジンがかからなくて焦ったこともありましたが、それも直せると確信していたので心配はしていなかったです。ちゃんとスタートできたでしょ(笑)。R&D SPORTも本当に良い仕事をしてくれています。今シーズン前半は、新車特有の現象に少し迷っているところはありましたが、車両としてはシーズンを通じてトラブルなく過ごせました。ドライバーたちのコンビネーションも良いですよね。本当は性格も異なるし、好みのドライビングスタイルも違うのですが、それぞれの良いところを尊重し、お互いが走りやすいセッティングを提案したり、井口も山内がタイムを出せるセットアップで安定したラップタイムで走れるようチャレンジしたりしています。プライベートでも仲が良いので、彼らの絆の強さもチームの強さにつながっています。
良い循環を生み出した2021年のSUBARU R&D SPORTチームは、本当に強いチームに成長しました。来シーズンは、他のライバルたちもSUBARU崩しの戦略を練ってくるはずです。小澤総監督は、「BoP(GTAによる性能調整)も厳しくなるかもしれませんが、それが各チームにとって公平なものなので心配していません。その上でどう戦うかは、また対処法を見つけるだけです。来シーズンもよろしくお願いします」。小澤総監督は、いつでも前向きである。
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