5月3日、SUPER GT第2戦富士ラウンドのパドックにて、本年よりSUBARU BRZ R&D SPORTのチーム監督となった澤田稔にSUBARU MOTORSPORT MAGAZINE記者(以下MSM)がインタビュー。自身のバックグラウンドや現在の心境などについて尋ねました。
MSM 澤田さんのお顔は、長い間拝見していますが、改めてご自身の背景などを伺えますか。
澤田 「はい、レーシングチームであるR&D SPORTには1997年から在籍していますから、キャリアとしてはだいぶ長いです。岡山県出身で、クルマに興味があったので、学校を卒業してから神戸の自動車関連の企業に就職しました。その後、いわゆる六甲の走り屋となり、それが高じてレーシングチームに移籍しました。速いクルマを追求するには、それしかないと。さらに、全日本選手権などのより高い次元を求めていた時に、R&Dに拾ってもらい上京することになりました」
MSM R&D SPORTでは一貫してオリジナルGT300車両の開発を続けていますね。
澤田 「私が移籍した頃は、F3000をやっていました。私もフォーミュラをやりたかったので、このチームに入りましたから。その後、ヴィーマックというクルマの育成をGT300で始めました。R&D SPORTという会社は代表者の本島(伸次)がそうなのですが、”ものづくり”にこだわりがあります。レースでは、ものづくりこそが技術を活かせる場であり、能力を磨く場なのです。そういう意味でも、STIと組んでSUBARU BRZ GT300を開発し、育成することに最高のやりがいを感じています。SUBARU/STIにも共通する風土があり、両者の思惑は合致しています。GTA-GT300のオリジナルマシンで戦うことができるのは、STIにとってもR&D SPORTにとっても大きなメリットなのです。工夫ができるカテゴリーなので、アイディアが活かせますし、アイディアは次から次に湧いてきます」
MSM 2020年モデルのBRZ GT300が大躍進し、昨年の新型モデルに引き継がれたというイメージですが、2019年に何が起きたのでしょうか。
澤田 「ともかくGTA-GT300は積み上げが肝心なのです。BRZ 2020年モデルも私たちは、あの年に特別な大改造を施したとは考えていません。それまで蓄積した経験をもとに、STIと議論を重ねてお互いに納得いくアイディアを入れていった結果であり、特別なマジックを使ったわけではないのです。確かに、小澤(正弘)さんが総監督となり、それまでのエンジン担当としての知見に加え、車両全体をケアしてもらえるようになったことはプラスに作用していると思います。担当者間の相互リスペクト感がぐっと高まり、チーム力が上がったのが2020年のことだったと言えるでしょう。ちょうどその時期にダンロップさんも、性能が上がったと言われていますが、それも蓄積の成果にほかなりません」
MSM STI、ダンロップ、R&D SPORTのケミストリー(化学反応)が最大化しだしたのがその頃だったわけですね。
MSM 開幕岡山は、ピットイン時のトラブルなどで結果はイマイチでしたが、そこまではうまく行っていましたね。
澤田 「さきほど申し上げた通り、私は岡山出身なので思い入れは強いのですが、毎年苦手な岡山攻略に苦慮していました。昨シーズンも、まさかのQ1落ちを味わいましたから。しかし、今年は岡山でみっちり事前テストを行なっていたし、前年の積み上げに自信を持っていたので、手応えをもってシーズンインしました。だから出力ダウンがあってもポールは取れたし、前半の井口もペースを落とすことなく走れました。ピットロスで後半の勝負権は落としてしまいましたが、クルマのセッティングに間違いはなかったとチーム全員でそう思っています」
MSM 今季からチーム監督に就かれましたが、心境の変化などはありますか。
澤田 「これまでもテクニカルコーディネーターとしてチーム運営に携わってきましたが、チーム代表となるとさらに重い責任があります。何かあればコントロールタワーにも呼び出されます。責任者となった以上は、これまでとは異なった見方や角度でチームを動かしていかなければならないと感じています。だからと言って実際に現場でやっていることはそう大きくは変わっていないです。ドライバーを含めて、チーム体制を固定して臨めている現在は、とても良い循環で仕事ができていると思います。また、良い時も悪い時も、いつも熱心にチームを励ましていただけるSUBARUファンの皆様にしっかりお応えしなければ、と気を引き締めているところです」