競技最終日となる11日(日)に行われたのは、SS10〜SS16の計7SS、合計距離は25.479kmです。この日は安定した天候に恵まれ、ラリーの拠点となるパルコールつま恋ラリーパークには朝から多くのラリーファンが集まりました。注目はやはり、首位の新井と総合2番手につける奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションⅩ)の優勝争いです。初日を終えた段階で、ふたりの差は2.8秒とわずかなもの。この日のオープニングとなるSS10では新井がベストタイムを獲得したものの、SS11、SS12では奴田原が連続ベストタイムで新井の1.9秒差にまで迫ります。しかし新井は続くSS13でわずかながらその差を拡大することに成功。互いに一歩も譲らないシーソーゲームはしかし、突然の決着を迎えることとなります。SS14で奴田原はコースオフを喫して大幅にタイムロス。ふたりの差は23.6秒となり、これで大勢は決しました。新井は残る2SSを危なげなくまとめ、地元イベントで今シーズン初優勝を飾りました。

新井は「奴田原選手は粘り強いので、厳しい戦いでしたね。全日本ラリーでここまでギリギリの走りをしたのは久しぶりでした。今シーズン、極端に変更したセッティングがあまりいい方向ではなかったので、それを見直したのが勝因のひとつだと思います。次のグラベルは問題ないと思いますので、応援よろしくお願いします」と、笑顔でラリーを振り返りました。

勝田は「3位を守ることに徹しました。原因は自分にあったと思います。天候もありましたが、リズムに乗れていなかった。この後はグラベルが続きますが、全力で頑張ります」とコメント。鎌田は「トップの2台に届かなかったですね。帰って、しっかり分析しようと思います。次戦の洞爺も新井選手が速いので、負けないようなんとかしたいですね」と次戦への意気込みを語っています。

セレモニアルフィニッシュが行われたパルコールつま恋リゾートでは、晴れわたった青空のもと多くのファンが見守るなかで新井と勝田、2台のWRX STIがポディウムに並び、多くの観客から温かい拍手が送られました。ラリーフィニッシュ後にはSUBARUブースでのサイン会も実施され、ファンにとっては忘れられない1日となりました。

ディーラーメカニックコメント「慌てずに落ちついて、考え方を切り替える経験ができた」

担当車両：ラックSTI 名古屋スバル DL WRX
小椋　祐輝(おぐら　ゆうき)　31歳
スバル信州株式会社　松本村井店　メカニック歴11年

昨年、TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Raceにディーラーメカニックとして参加した経験をもつ小椋。全日本ラリー選手権のメカニックを経験してみたいと思い、今回志願したとのこと。 「モータースポーツに興味があったので、SUBARUのディーラーに就職しました。SUBARUはモータースポーツのイメージが強く、自分でもBRZに乗っています。たまにサーキットなども走ります」

今回のラリーでは雨の中のサービスや場所を移動するリモートサービスなど、メカニックにとっては大変な環境での作業となりました。 「やはり緊張しますね。普段と環境がまったく違いますし、競技車両なのでいつも以上に緊張感はあったと思います。作業は主にフロントの足まわりを担当しました。初日にスタビライザーの交換を行いましたが、前の日に一度同じ作業を経験しているので、自信をもって作業を実施できたと思います。今回、3位で無事に帰ってきてもらえてホッとしています」

今回のラリーに参加したことで、得られたことについては次のように語っています。 「慌てずに落ちついて、考え方を切り替えることの経験ができたと思います。会社に戻ったら、いい経験ができるので行っておいた方がいいよと後輩などには伝えたいですね。モータースポーツがお好きなお客様もいらっしゃるので、そういった方々へのアピールにもなりますし、もしできればもっとやってみたいなと思います。ゆくゆくはニュルブルクリンク24時間にも参加してみたいですね」

次戦は6月30日(金)〜7月1日(日)に開催される第6戦「2017 ARK ラリー洞爺 Supported by Sammy」(北海道洞爺湖町)です。ラリーの拠点は洞爺湖に面した洞爺湖文化センターに設けられ、サービスパークのほかセレモニアルスタート/フィニッシュなどのイベントも行われます。ここから歩いてアクセスできるスーパーSSは気軽に観戦できるSSとして人気です。そのほか林道観戦エリアや、隣接する蘭越町に設けられるラリーパークなど、様々な楽しみ方ができるのもこのラリーの特徴と言えるでしょう。シーズン初のグラベルラリーとなる北海道洞爺での、SUBARU勢の快走にご期待ください。

新井はセッティングの見直しが功を奏す

ラリーは8時30分、快晴のもと多くのラリーファンに見守られてスタートしました。全部で9つのスペシャルステージ(SS)が設定された競技初日、主導権を握ったのは新井でした。このラリーで2年連続優勝を飾っている新井は、今季ここまでの不振を断ち切るべく、マシンセッティングを見直しての参戦です。その甲斐あってSS1からSS4まで4連続でベストタイムを刻み、ラリー序盤をリードする快走を見せました。

特にSS3/6/9とSS4は、ラリーの拠点となるパルコールつま恋リゾートから徒歩でアクセスできる観戦用ギャラリーSSです。好天にも恵まれ、多くのラリーファンが集まりSUBARU車の迫力ある走りを堪能しました。

また、午後に行われた『Minenohara(SS7/8)』は、このラリーで最長となるSSです。新井はSS7でベストタイム、SS8で2番手タイムを記録。折悪しく天候が崩れ、視界を妨げる濃い霧に苦戦するライバルたちを横目に、着々とタイムを伸ばしていきます。新井はこの日最後のSS9でも3番手タイムで首位の座を守り、シーズン初優勝を射程に捉えています。

今シーズンここまで2勝を挙げている勝田は、この日前半でウエット路面を想定したセッティングが期待した効果を発揮せず、苦戦を強いられます。途中総合7番手まで順位を落としたものの、後半となるにしたがって調子を上げ、SS9を終えた段階で総合3番手まで浮上してみせました。

一方、鎌田は午前中のセクションで総合3番手を走行するなど好調な走りを披露。ところが天候が崩れた午後のセクションからはリズムを見出せず、徐々に遅れをとってしまいます。最終的には総合4番手まで盛り返し、明日の順位アップを目指します。

パルコールつま恋リゾートのラリーパークに設けられたSUBARUブースでは、アライモータースポーツのラリーカー展示のほか、最新型のWRX STIやBRZ、XVなども展示し、多くのご来場者に興味を持っていただけました。そのほか“群馬県宣伝部長”のぐんまちゃんが応援に駆け付け、写真を撮るファンが鈴なりになる場面も。さらにイベントステージではWRX STIの開発主査を務める嶋村誠らのトークショーも開催され、多くのファンが集まり耳を傾けていました。

新井「最終日に向けても気が抜けない」

この日の9SSのうち6SSを制して総合首位に立つ新井は、競技初日の走りについて、「特に無理もせず冷静に走っていますが、いいタイムが出ています。セッティングが合っているんでしょうね。それでも、周囲がみんなプッシュしていますから、最終日に向けても気が抜けないですね」と振り返りました。

新井から39.7秒差の総合3番手につける勝田は、「(途中で霧と雨に見舞われたものの)無事にサービスに戻ってこられて良かったです。明日はなんとか表彰台を獲れるよう頑張ります」とコメント。また、勝田を9.2秒差で追う鎌田は「雨が降ってからはあまり良くないですね。上位2台とも離れてしまったので、リスクを負わず完走を目指しています」と今後のプランを語っています。

競技最終日となる11日(日)は、SS10〜SS16の計7SS、合計距離は25.479kmです。勝負どころと目されるのは、この日最も長い5.663kmの『Omae Suzaka Down(SS12/16)』。観戦用のギャラリーSSであり、申し分のない舞台と言えるでしょう。

今シーズン初優勝を狙う新井、そして勝田と鎌田らが操るSUBARU WRX STIがSUBARUの地元群馬で見せる奮闘にご注目ください。

SS数は全部で16。ほとんどが2〜5kmという短めのSSのためにタイム差がつきづらく、ひとつのミスが決定的な差となってしまう可能性を含んでいます。その一方、長野県須坂市に位置する「峰の原(SS7/8)」が10kmを超えるSSとなっており、このSSの良し悪しがラリーの行方を左右することも考えられます。このSSは2016年も走行する予定でしたが、雨で崩落箇所が発生したためラリー開催直前にルートから外されており、全日本ラリーで使用するのは路面修復を終えた今年が初めてとなります。距離が長く、中盤から後半にかけて九十九折りのコーナーが続くヒルクライムステージは、リモートサービスを挟んでの連続走行となるため、2回の走行ともミスなくまとめることが重要となってくるでしょう。

ラリーパークにはSUBARUブースを出展

ラリーの拠点となる「パルコールつま恋リゾート」には、サービスパークのほかラリーパークも設置されます。ラリーパークでは地元物産品や各企業のブース出展も行われます。SUBARUブースでは、6月24日から発売予定の新型WRX STIを筆頭とする車両展示、グッズ販売を実施。そのほか、イベントステージでのトークショーも予定していますので、ぜひラリーパークにお立ち寄りください。

また、10日(土)の8:30からはセレモニアルスタート、11日(日)の15時頃からはセレモニアルフィニッシュを行う予定となっています。観戦用のギャラリーステージはパルコールつま恋リゾートの「Sammy SSS(SS4/13)」と、「大前須坂(SS3/6/9/12/16)」の2箇所に設けられ、いずれもラリーパークから徒歩でアクセスすることが可能になっています。

詳しいイベント内容、観戦方法など最新情報は主催者の公式ウェブサイトでご確認ください。